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Three On Three ベストサマーウォッチ特集(動画付き)

グローブを脱ぎ、袖をまくって最高のサマーウォッチについて議論しよう。

前回の公開から1年半を経て、再びHODINKEEの人気動画シリーズ『Three On Three』が意気揚々と帰ってきた。まるでマクドナルドのマックリブのように帰ってきた今回、“ベストなサマーウォッチとは?” というシンプルな問いをきっかけに、3人のエディターがそれぞれの主張をぶつけ合う。

 腕時計の神々が仕掛けた最大の悪戯(いたずら)は、太陽を楽しむ季節である夏が、最愛の腕時計をつけるには最悪の季節だと世界に信じ込ませたことだ。多くの人にとって夏は、汗染みが目立つコードバンストラップ、マイクロアジャスト付きクラスプが必要なほどむくんだ手首、そしてシャツ袖がないことで妙に浮かび上がる、肉の筒と化したリストショットを連想させる季節だ。気温が上がるにつれ、現実は厳しくなる。だが聞いて欲しい、それだけがすべてではないのだ。 

 時計への情熱は、ラグジュアリーなセーターやモノグラムの入ったカフス、温かいコーヒーカップを必要としないのだ! そこで登場するのが3本の理想のサマーウォッチであり、選定と論評はマライカ、タンタン、リッチの面々。今回は暗黙の価格上限が設けられており、編集長のジェームズはF.P.ジュルヌ エレガントやリシャール・ミル RM67-01の類を選ぶことを禁止した。そのため希望小売価格は80ドルから1850ドル(日本円で1万1800円から27万3000円)までで、いずれも比較的手ごろな予算で楽しめる、夏にふさわしい1本となっている。

 3人のエディターは、それぞれ異なる視点から3本の異なる時計を選んだ。ノスタルジアを感じさせながらも決して古びないスウォッチ、オメガとスウォッチのコラボレーションによって伝統を再解釈した1本、そしてタグ・ホイヤーによる、時代を超えて再考されたクラシックなモデル。これら3本の時計は、スペックよりも思い出に訴えかけることで、スイスブランドが“夏の楽しさ”というコンセプトにどのように取り組んでいるかを示す。

 私たちは陽光あふれるニューヨークのアパートメントで心地よい午後を過ごしながら、おのおの意見を交わし、ときにさりげない批判やあからさまな皮肉を交えつつも、少なくともいくつかの点では合意に至った。最初に掲げた問いへの決定的な答えは得られなかったが、私たちは互いの選択に対して多少なりともリスペクトの気持ちを抱いて帰途についた。動画はこちらから視聴できるので、ぜひご覧いただきたい。そして、親愛なるHodinkeeの読者であるあなたがどのモデルを選ぶか、またはなぜ私たち全員が期待はずれだったのか、あるいはジェームズは私たちにより高価な時計を選ばせるべきだったのか、自由にコメントを寄せていただきたい!


スウォッチ クリアリー・ジェント(選者:マライカ・クロフォード)

 クリアリー・ジェントは、1983年にスウォッチが初めてクリア素材を採用したGK100 “ジェリーフィッシュ”のほぼ完全復刻モデルだ。このモデルは、ブランドが常に目指してきた理念、民主的で革新的、そしてコレクダブルであることを最も純粋に体現している作品といえるだろう。わずか51個のパーツで構成されたこの初代モデルは12本のスウォッチデビュー作のうちのひとつであり、日本のクォーツウォッチを価格面で下回るように設定され、1980年代初頭の工業デザインにおける徹底的な楽観主義を体現している。

 コレクターたちは、変色やひび割れ、動作不良のないジェリーフィッシュを見つけるのがいかに困難かを熟知している。そのためケース、ダイヤル、そして精神性までほぼ同一の“クリアリー・ジェント”は、ミントコンディションのオリジナルモデルをインターネットで血眼になって探す手間をかけずに、歴史の一片を身に着ける最良の方法ともいえる。クォーツムーブメントは機械式とは異なるが当時のままのオリジナルであり、中身が透けて見え、当時を象徴している。スケルトン仕様とは、技術を見せることが魅力的だとされた時代の遺物のようなものだ。これは“ヴィンテージ風”ではなく、本当の意味でのレトロテックだが、発売当時はモダンだと感じられていたデザイン哲学のタイムカプセルである。透けて見えるクォーツムーブメントの独特の奇抜さはある種のパンク的な雰囲気すら醸し出している。

 スウォッチは常に、メンフィスにインスパイアされたマキシマリズムから、アルフレッド・ホフクンスト(Alfred Hofkunst)やヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)とのコラボレーションに至るまでポップカルチャー、アート、プロダクトデザインが交わる点に存在してきた。そして今日、それはクリアリー・ジェントでも健在だ。単体で着用すればデザイン史へのオマージュとなり、(初期のスウォッチ広告のように)複数を重ねづけしたり、休暇用のジュエリーとレイヤードしたりすれば自己表現の気軽なアクセントとなり、時計が楽しく奇抜で、スマートな存在であることを思い出させてくれるだろう。

 もしこれがサマーウォッチコンテストなら、私はビーチバッグの底に砂や日焼け止め、ヨーロッパの休暇中でしか吸わないたばこの残りと一緒に気軽に放り込めるものを探すだろう。私は軽やかなものが欲しいのだ。傷ついたり日焼けしたりしても嘆かずに済むもの。75ドルで手に入り、デザインの工芸品のような存在感を放ちながらプールサイドの定番ウォッチの多くをさりげなく凌駕するもの、そんな時計が欲しいのである。


スウォッチ ムーンスウォッチ(選者:リッチ・フォードン)

 批評家たちの声に怯まず、断言しよう。この数十年間でもっとも素晴らしいサマーウォッチはオメガ×スウォッチ ムーンスウォッチである、と。2025年7月にこの記事を執筆している今、時計業界にこの視点を受け入れるだけの準備が整ったと感じている。スウォッチの店舗で世界中の街角に行列ができた最初の狂乱から3年が経ち、ムーンスウォッチをありのままの姿で評価する余裕がそろそろ醸成できたのではないだろうか?

 ムーンスウォッチへの反応は、2014年9月9日にティム・クックが“We have one more thing…(最後にもうひとつニュースがあります)”と述べ、最初のApple Watchを発表した時の反応と驚くほど似ている。時計愛好家は固唾を飲んで見守り、すぐにこう判断した。この新しく興味深い製品は正直言ってひどいものになるかもしれない、と。同様に、スピードマスター プロフェッショナルはもっともよく知られた腕時計のデザインのひとつであり、時計史上“完璧”なスポーツクロノグラフのひとつとすらいわれる。なぜそれが“プラスチック製”クォーツウォッチへと凝縮されるのか? だが考えてみて欲しい。そもそもムーンスウォッチは愛好家向けではなく、初心者向けである。Apple Watchは、多くの人が最終的に煩わしい通知をオフにしたように、数百万人に腕時計の利便性を教えた。そしてムーンスウォッチは、液晶画面のない腕時計の素晴らしさを数百万人(さらに増加中)に伝えているのだ。

 一方、私は筋金入りの時計愛好家であり、1969年製スピードマスター プロフェッショナルのオーナーとしてあえて言わせてもらおう。心を解き放ち、高尚な態度を捨てられれば、ムーンスウォッチはそんな人にも応えてくれるだろう。この時計のデザインを悪いと切り捨てることは、スピーディのデザインそのものを否定することに等しい。確かに素材は安価でムーブメントはクォーツだが、270ドル(日本国内定価は4万1800円)という価格を考えると、時計に知識と情熱を持っていることを示す最高の方法のひとつだ。ムーンスウォッチは会話のきっかけにもなる。私だったら公共の場でこの時計をつけている人を見かけたら、その人が自宅に“本格的な”時計を何本も持っていると推測するかもしれない。お互いにそれを打ち明けて会話を素直に楽しもう。それが時計をつける唯一の理由ではないが、同じ趣味を持つ人々と出会えることは少なくとも素晴らしい副産物ではないか!

 では、なぜムーンスウォッチが最高のサマーウォッチなのか? それは“肩の力が抜けている”からだ。私が数えたところ、明るい配色からニュートラルな配色まで、計31種類の異なるムーンスウォッチが発売されている。茹だるような湿気の多いなかで、ロレックスやカルティエ、レジェップ・レジェピなど普段より着けるのが少し心配になるに日には、好みの色のムーンスウォッチを手に取り、飽きるまで、または故障するまで誇りを持って着用しよう。そして故障したら、修理して知り合いに渡そう。例えば甥や娘、または“時計のよさがわからない”という友人でもいい。大切な人に、あなたが愛するものを紹介してみないか。


タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ(選者:タンタン・ワン)

 ときに、夏を声高に主張するような時計に出合うことがある。タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフはまさにそのひとつだ。80年代に同ブランドが手がけたもっともクリエイティブなプロジェクトの復活は、今年のWatches & Wondersで発表され、LVMHが2024年10月にフォーミュラ1との10年間のパートナーシップを発表したタイミングとちょうど重なった。タグ・ホイヤーが今年の新作としてレーシングクロックを発表し、特徴的なベゼルデザインを披露した瞬間、何かが動き始めていると誰もが感じたのだ。

 夏は気温が高く、半袖が活躍する季節。快適でカジュアルな装いが合う時期だ。そのような季節にぴったりなのが、9つのモデルが展開されたこのフォーミュラ1であり、この鮮やかなカラーの対照的なコンビネーションはまさに色彩の饗宴ともいえる。これは極めて快適な装着感で、オリジナルの35mmから現代的な38mmにサイズアップしながらも、手首にコンパクトにフィットする。カバー付きのラグがストラップやブレスレットへの美しいつながりを生み出している。しかし私のように夏の定番がブラックのTシャツとショートパンツなら、フォーミュラ1はノスタルジアを感じさせるデザインの大胆なアクセントとして、手首に楽しさを添えるのに最適だ。細部までこだわったデザインが魅力で、特に気に入っているのは極上の快適さを誇るラバーストラップに埋め込まれたタグ・ホイヤーの盾ロゴである。

 タグ・ホイヤー フォーミュラ1を完璧なサマーウォッチとして推す最大の理由は、その“ソーラーグラフ”銘そのものにある。これはソーラーパワーで駆動するクォーツムーブメントの採用を指し、オリジナルデザインから最も大きく変更された点だ。考えてみて欲しい。つまりもっとも多くの時間を明るい日差しのなかで過ごす季節に、ソーラーパワー駆動の時計ほどこれ以上適したものはあるだろうか? さらにこのソーラーグラフのCal.TH50-00は光に当たらない状態でも10カ月のパワーリザーブを保持するため、もしも着用しない場合でも、来年の夏まで安心して持ち越すことができる。これをスーツと合わせる自分を想像できるだろうか? 絶対にないと断言できる。だが、カジュアルな服装と合わせるなら完璧な組み合わせだ。

 1850ドル(日本円で26万9500円)の時計を400ドル(日本円で約5万8000円)未満の2本のモデルと比べるのは、スペック面で言えば、スポンジ製の剣で遊んでいるところに強力水鉄砲を持っていくようなものだ。以前、Watches & Wondersでのフォーミュラ1のハンズオン記事で述べたように、フォーミュラ1をムーンスウォッチと同じ文脈で“プラスチックウォッチ”と呼ぶのは誤りだ。特定の配色にカラフルな“バイオ”由来の外装があっても、すべての新しいフォーミュラ1は内部にスティールケースを採用しており、一部にはメタルブレスレットも展開されている。素材そのものの構成から本質的な造り込みの質を重視するコレクターなら、この点で議論は決着するだろう。これらの時計は確かにカジュアルな外観だが、手にした時の質感は極めて堅牢だ。

 最高のサマーウォッチを選ぶことは、最高のダイバーズウォッチを論じることとはまったく別の話である。これは技術的な優越性よりも、表現の自由度を重視するテーマなのだ。そして私は自分の言葉に責任を持ち、グリーンカラーのモデルを購入した。ただし、リッチがこのモデルを“クリスマス仕様”と呼んだが、私の選んだモデルは、はるかに控えめだと自負している。この夏、蒸し暑い都市部でこの時計を着けて過ごすのが、これまで以上に楽しみで仕方ない。


舞台裏