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In-Depth ロレックス ステンレス製のヴィンテージRef.6062

ジュネーブのフィリップスに、驚くべき時計が登場予定だ。これがいかに特別なリファレンスであるか掘り下げてみよう。


※本記事は2017年4月に執筆されたUS版の翻訳です。

 春の到来といえば、そう、オークションの季節だ。先週我々はジュネーブで5月13日から14日まで行われるフィリップス・オークションのハイライトを取り上げており、これも中々のラインナップだった。ロレックスのリファレンス6062『バオ・ダイ』、イエローゴールドのポール・ニューマンのデイトナ、Ref.6265、レアなブレゲ数字の(そして見たこともないような厚いケースに入った)パテック フィリップのRef.530、それからティファニーが販売していたパテック フィリップのRef.2499、しかもオリジナルブレスレット付き(気絶しそうだ)、などよだれものの時計が存分にあった。

 しかしわたしが最も惹かれた時計は、ステンレスのロレックスのRef.6062だった。お金のかかる趣味はわたしが背負う十字架で、言い訳はできない。この時計は複数の理由でわたしの注意を惹きつけたが、大きな理由はこのかっこいいリファレンスのことは聞いたことはあったが、あまりよく知らなかったことだ。6062とはどういうものなのだろうか。調べてみよう。

rolex 6062 phillips watches

ロレックスのRef.6062は、SS製で、控えめに言っても非常に着け心地がいい。


6062とは何か?

 Ref.6062、特にちょっと前のオークションに登場した(その1つは未使用品で95万ドルで売れた)2つのローズゴールドの「ステッリーネ」文字盤バージョン、そしてそれ以前にフィリップスに登場した2、3例については、以前にHODINKEEで取り上げたことがある。しかしながら、これらの時計はどれもステンレス製ではない。HODINKEEにそのような時計が登場したのは今までに一度だけで、それはジェイソン・シンガー(Jason Singer)が所有しており、彼のTalking Watchesの映像で見ることができる。

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 SSの6062はこのリファレンスの中で最も稀な例である。それはムーンフェイズをもつたった3つのロレックス、つまりヴィンテージのRef.6062とRef.8171、それから今年バーゼルワールドで発表された新作のチェリーニ ムーンフェイズの内の一つだ。1950年にバーゼルワールドでデビューした6062は、初の自動巻き、トリプルカレンダーとムーンフェイズ付きの時計で、防水仕様のオイスターケースを備えている(8171はオイスターケースではない)。デイトジャストが1945年に発表されたことを考えると、これは当時のロレックスとしてはかなり進んだ時計だった。6062は、普通ならより繊細な時計に搭載されるハイエンドな仕様を、スポーティなオイスターケースと融合させ、ロレックスに連想される日常的な着けやすさも維持することに成功している。

ローズゴールドの「ステッリーネ」6062。

イエローゴールドの「ステッリーネ」6062。

   6062は、18KYG、18KRGとSSで、シルバーのツートンカラーの文字盤、そしてまれに黒い文字盤のものが生産された。ゴールドのモデルには、(星が時間マーカーになっている)「ステッリーネ」、(15分ごとに三角のマーカーのある)「ピラミッド」、(鏃のようなマーカーを使った)ダーツ、そして(バオ・ダイのような)ダイヤモンドをマーカーに使ったもの、そして3と9のインデックス仕様など、一連の文字盤タイプがあった。  SSの6062は、シルバーのツートンカラーの文字盤と3と9のインデックスに、スティールあるいはイエローゴールドのアラビア数字と夜光付きのアルファ針があるだけだ。

比較してみよう。

 これはもう一つの典型的なSSの6062で、(本人がTalking Watchesのエピソードでも取り上げていた)ジェイソン・シンガーが所有しているモデルだ。出回っている中でも最高のSS製6062の一つなので、フィリップスで登場するものと比較してみるのにちょうど良い。 

 その仕様は、ムーンフェイズ付き、チャプターリングの外側に記載された日付は12時のところに曜日と月が二つの窓で表示されている。時計自体はクロノメーター認証があり、それがデイトと月表示の下に示されている。バオ・ダイのように、一部のケースでは、「chronometer certified」の文字は6時のサブダイヤルのところに配されている。ケースはスタンダードな36mmのオイスターケースで、スクリューケースバックで内部に自動巻きのロレックスCal.655を搭載する。

 SS製の6062は、1950〜1953年の間に200〜300個しか製造されていない。現在では毎年80万本以上の時計を作っているロレックスにしては段違いに少ない製造数である。そしてそれが多いと感じる人には、今市場に出ているスティールの6062は40個しかなく、その内コンディションがいいのはごくわずかだということを知っておいて欲しい。


収集性
steel ref. 6062 with gold hands and markers

ゴールドの針とマーカーを備えたSS製のRef.6062の一例。(写真:John Goldbergerの厚意による)

 スティール製の6062は、1980年代に日本の収集家が上物を買い漁り始めたことで注目を集めた。これらの時計はその後1990年代終盤にヨーロッパの販売業者や収集家に売られ、これがその後の過去10年オークションに登場した。コンディションとオリジナリティを両方維持している上物を見つけるのは本当に難しい(ヴィンテージロレックスにとっては、コンディションが最も重要だということを忘れずに)。

 そのためSSの6062は、過去10年で数回しかオークションに登場しておらず、落札価格は5万ドルから40万ドル(約517万5000円〜4140万円)だ。さて、これはかなり幅があるように思うだろうが、実際そうなのだ。わたしの意見では、値段が異なる理由は、繰り返しになるが、コンディションとオリジナリティ、そして販売時の市場の景気による。

 ヴィンテージロレックスの市場は、超レアなリファレンスやユニークな文字盤をもつモデルの値段が市場で噂になり、ここ5年間脅威的な好調さを見せている。これはスティール製の6062に関してもいえることだが、しかしわたしは個人的にこの時計の値段は、その品質と希少性によるものだと考える。昔ながらの「もう一個見つけて欲しい」という状況なのだ。つまりコンディションが良い時計が非常に少ないので、バイヤー同士で真剣な競争が起こり、その時計が欲しい場合はあまり他に選択肢がないのだ。

steel rolex 6062 oyster

リベット式のオイスターブレスレット仕様のスティール製6062。(写真:John Goldbergerの厚意による)

patina rolex 6062

イエローゴールドマーカー仕様で文字盤のパティーナがかなり進んだ6062。(写真:John Goldbergerの厚意による)

フィリップスでオークションに登場する6062は、60万から120万スイスフランになると推定されている。最後にオークションでSSの6062が売られたのは2013年のクリスティーズで、37万1156ドル(総額)で落札され、エスティメートは24万2千ドルから35万2千ドルだった。この時計の文字盤は、今回のものより魅力が低く経年変化による染みもあり、間違いなくわたしたちが今見ている時計ほど良い品物ではなかった。また、品質の良い6062がオークションに出てからもう4年も経っていることも、推定額を押し上げているだろう。フィリップスに登場する時計の落札価格が興味深い。

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フィリップスのSS製6062
rolex 6062 in steel

フィリップスに登場する貴重なスティール製6062。

 全てのロレックス時計同様、この時計は実用的にデザインされており、どこかの金庫にしまい込むことは想定されていない。だからこそ、この6062のように、触れられても磨かれてもおらず、装着されたこともない保存状態の良いヴィンテージロレックスを見つけるのは難しいことなのだ。フィリップスに登場するスティール製の6062は、長年の間でも最高級の上物といえる。

 全体としてこの時計は保存状態がよく、見て分かるような修正も加えられていない。ケースはおそらくかなり軽くだけ磨かれているが、形は元通りで、ほとんど摩耗は見られない。そして裏蓋の画像から分かる通り、エングレーブもまだ残っており、磨かれすぎていないことを示している。そしてSS製のジュビリーブレスレットも当時のものだ(最高!)。

rolex moon phase

ムーンフェイズと日付表示のクローズアップ。

 文字盤は格別で、説明できない柔らかな輝きを備えている(何のことを言っているか分かるってもらえますね)。プロットの夜光はもう無くなっているがこれは予想通りのことで、残った部分が色褪せて感じのいいバニラ色になっている。青い日付はまだ非常に鮮やかで、文字盤に活気を与えており、アラビア数字もそれほど老化したり摩滅したりしていない。

rolex 6062 caseback

フィリップスのスティール製6062の裏蓋。

rolex triple calendar

クロノメーター認証とロゴ、そして曜日と月表示。

 腕に着けると、それはまさに百万ドルのヴィンテージSSロレックスらしく、最高の着け心地である。他のほとんどの36mmのオイスターケースと同様、手首への収まりがよく、とてもクールな気分になる。陳腐かもしれないが、それ以外に言いようがない。これを手首にはめると、ともかく特別な人間になった気分がする。その勇気さえあれば(そしてそういう物にかけられる100万ドルを持っていれば)簡単に日常的使いの腕時計として機能する。

 結局のところ、SS製の6062はヴィンテージロレックスの偉大なところを全て体現している。バランスがよく、クリーンで、シンプルで、堅固でありながら、特別なディテールも備えている(日付リングが8と23の間で逆向きになることに気づいた?)。そしてこの時計は100万ドルを超えるだろうが、それでも全く派手すぎない時計で、ほとんどどんなヴィンテージ時計愛好家でも欲しがることだろう。

フィリップス ジュネーブ時計オークション5は、5月13日と14日に開催される。SS製のロレックスRef.6062のロット番号は172だ。フィリップス公式サイトにて、このロットについてそしてオークションに出る他の時計についてもより詳しく読むことができる。