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イタリアのピエモンテ州にあるトリノ(英語で発音すれば、Turin)は、自動車と王室の両方の歴史に彩られた街だ。トリノはフィアットの発祥の地であり、サヴォイア家の支配地でもあった。そのため、ビショーニ・トリノを構成する70年代スタイルのキャラクターたちにとっては、自然な出会いの場となっている。エールという名の紳士は、ひょろっとしたスタイルでスーツを着ており、髭を生やし、ずっとタバコを吸っている。ジョバンニはプレスしたデニムにこだわり、彼のトップギアは上3つのボタンが使われていないのと同じくらい着古されている。そしてニック。ニューヨーク訛りのある彼は、クルマと文化を愛するあまり、最近トリノにやってきた。毎週のように地元のカフェで集まり、月に一度は田舎道を走るが、彼らが揃うとクルマ、ファッション、時計などで華やかな騒動が巻き起こる。ビショーニはカークラブと呼ばれることを拒否しているが、彼らの目的はトリノとフィアットにおける自動車の栄光の時代を生き生きと再現することにあるのだ。これはコンコース・デレガンスではない。彼らはギアを詰め込み、メタルフレームを石畳の上で滑らせ、バランタインやオステリア・クーペラティバ・ディ・リヴォドーラの長テーブルで、エスプレッソ、アペリティフ、プリミ、セコンド、ヴィノを延々と飲みながら、いつも煙の下でくつろいでいる。
ときには煙がエンジンにまで及ぶこともある。ビショーニとの2日めの夜は、トリノ南東に位置する丘陵地帯、アル・モンテ・デイ・カプチーニからの急な坂道で突然終わりを告げた。イタリア製の上質な仕立ての袖をまくり上げ、メイスンのライトを手に、フィアット・130 クーペの広々としたエンジンルームにビショーニたちが集まってきた。
メンテナンスには時間がかかる。ビショーニの多くは、数台のクルマをローテーションすることでこれを補っている(少ないときで3台、多いときで26台)。メカニックを愛し、クラシカルな趣味を持つ彼らにとって、ホイールと同様に手首も興味深いものとなっているのは当然のことだろう。