ADVERTISEMENT
去る7月20日、岩手県雫石町に所在する盛岡セイコー工業内において、グランドセイコーの機械式時計を製造する「グランドセイコースタジオ 雫石」の操業がスタートした。同施設は、既存の雫石高級時計工房内に新設されたスタジオで、生産能力と商品展開の拡大を目指す一方、匠によるものづくりを次世代に伝える役割も担うという。
グランドセイコースタジオ 雫石は、建築家の隈 研吾氏が設計を手掛けており、「THE NATURE OF TIME」というグランドセイコーのブランド哲学を反映したつくりとなっている。具体的には、最新の時計製造を行う工房としては昨今あまり見られなくなっている木造建築でありながら、究極の精度をもつ機械式時計を組み立てるクリーンルームの環境の両立を実現した。
スタジオ内にはブランドの歴史や機械式時計の仕組みなどが学べるショールームや、組み立ての体験などができるスペースがあり、来訪者が時計という文化に触れられるようにもなっている。現在、一般公開は見合わされているが、世界でも指折りの時計製造技術を目の当たりにできる貴重な施設である(このレベルの時計製造となると、一般公開している例は世界でもゼニスくらいしか思い浮かばない)。
本スタジオでは、当初ブランド創設60周年を記念したグランドセイコー メカニカルハイビート36000 80 Hoursの製造が行われるという。ブランドの最新技術を投入した本キャリバーは、本サイトでも繰り返しその魅力を伝えているSLGH002に搭載されているが、このモデルは100本の限定生産品。新しい製造拠点でこのムーブメントが作られるということは、生産体制が増強されるということであり、今後新たな通常ラインのモデルにも早々に採用されてくることを期待せずいはいられない。
また、グランドセイコースタジオ 雫石オリジナルモデルも同時に発表。このSBGH283には、スタジオ周辺の森の新緑をイメージしたグリーンダイヤルが採用され、内部には3万6000振動/時で駆動するハイビートキャリバー9S85を搭載している。SS製のケースは40mm径で、伝統的なセイコースタイルを踏襲したデザインを採用する。
本機は、この工房でしか購入できない希少性の高いモデルとなっているが、厳密に限定数が設定されているわけではない。
今年でちょうど50年の節目を迎えた盛岡セイコー工業は、冬は雪部深く、機械式時計の故郷であるスイスの景色を思わせる。彼の地の先進の時計メーカーが次々に取り組むように、グランドセイコースタジオ 雫石も環境への配慮が深くなされた施設である。生産で生じた排水は一部再利用、CO2の排出量はモニタリングされ継続的に削減、独自開発のセンサーにより温湿度、照度などを監視して製造現場での省エネルギー化および最適化を図っているという。
持続可能性も追求された新時代の機械式時計生産設備として、国産時計、ひいては世界の時計製造をもリードする可能性を秘めた時計工房の誕生である。
<グランドセイコースタジオ 雫石 概要>
住所 : 岩手県岩手郡雫石町板橋 61 番地 1
面積 : 1,858.45 ㎡
延床面積 : 2,095.01 ㎡
階数 : 木造地上 2 階
※現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一般公開は見合わせ中。予約受け付けについてはこちらの専用サイトからご確認を。
話題の記事
Breaking News パテック フィリップ Ref.5711 ノーチラスがチャリティのための1点ものとして復活
日本の時計収集を支えた機械式時計ブームと、市場を牽引した時計ディーラーたち
Four + One カントリー歌手の時計コレクションが描く音楽キャリアの軌跡