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限定モデルのリリースには、時として強引な理由づけがなされることがある。セイコーがダットサン240Zを讃える限定モデルを発表するという話を最初に聞いたとき、私の頭に浮かんだのは“どちらも日本発祥”という共通点だけだった。しかし実はこの時計メーカーと、日本(そして北米)でカルト的人気を誇るこのクルマとのあいだには、はるかに深い繋がりがあったのだ。たとえばセイコーはラリーカーのスポンサーを務めており、そのなかには1971年のイーストアフリカン・サファリラリーで優勝したダットサン240Zも含まれる。このマシンを駆ったのは、ドライバーのエドガー・ハーマン(Edgar Herrmann)氏と、ナビゲーターのハンス・シュラー(Hans Schuller)氏である。1年以上前にあるInstagramアカウントが、レース後のシュラーの写真に注目し、彼の手首にセイコー Ref.6139 スピードタイマーが着けられていたこと(そして同時に見事なモミアゲも)を指摘していた。そう考えると、スピードタイマーとダットサン240Zの組み合わせで限定モデルが登場するのも納得がいく話である。ところが今回は、それが1本ではなく、3本(さらにおまけの新作も)登場することになった。
セイコーがスポンサーを務めたエドガー・ハーマン氏とハンス・シュラー氏のダットサン240Zは、1971年のイーストアフリカン・サファリラリーで優勝を果たした。
限定3モデルの1本目は、ほかの2本と同様にプロスペックス スピードタイマーに属しているものの、従来のスピードタイマーのイメージとは少々異なる仕様である。SBDC219(北米ではSPB517)は、部分的にダイバーズウォッチの意匠を取り入れたモデルだ。ステンレススティール製ケースは39.5mm径×12mm厚で、200mの防水性能を備える。ケースにはふたつ目のリューズ(編注;4時位置)が装備されており、カウントダウン式のインナーベゼルを操作できる仕様だ。ダイヤルの外周にはホワイトのミニッツトラック、その内側にはブラックのダイヤルが配置され、セイコー、スピードタイマー、そしてダットサンのロゴがあしらわれている。日付表示は4時30分位置に配置される。
針およびアプライドインデックスの先端にはルミブライトが施されており、ダイバーズウォッチとしての機能も十分に果たしうる。また、針とインナーベゼルにはアクセントとしてレッドがあしらわれ、ムーブメントには自動巻きのCal.6R55を搭載し、約72時間のパワーリザーブを実現。レーシング仕様のレザーストラップが付属し、裏蓋にはダットサンのロゴが刻まれている。SBDC219は世界限定2500本(3モデル中、2番目に多い数量だ)で、9月に正式リリース予定。価格は17万6000円(税込)だ。
セイコー プロスペックス SBDC219
もしダットサンのロゴがやりすぎだと感じたり、SS製ブレスレットを好む場合、そして万が一限定モデルを買い逃してしまった人にも朗報がある。セイコーはベージュグレー、またはダークグレーのダイヤルにオレンジのアクセントを配したレギュラーモデルを、2本発表している。SBDC215(北米ではSPB513)とSBDC217(北米ではSPB515)はいずれも9月発売予定で、価格は13万7500円(税込)と、やや手ごろである。
より本格的な計時機能(たとえばタキメーターなど)を求めるなら、自動巻きクロノグラフのオールブラック仕様であるSBEC029(北米ではSRQ057)がうってつけかもしれない。ダイヤルにはセイコー、スピードタイマー、プロスペックスのロゴに加え、筆記体のダットサンロゴが配されており、その他のディテールも満載だ。このモデルは、多くの点でSBEC021(北米ではSRQ047)からSBEC023(北米ではSRQ053)までの仕様に近いが、今回はブラックのタキメータースケール(レッドのアクセント付き)を備え、デザインの変更に伴いケースサイズは42mm径×14.6mm厚に拡大、防水性能は100mとなっている。
搭載するムーブメントはCal.8R48で、コラムホイールおよび垂直クラッチ機構を採用。日付表示に加え、9時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計を備え、パワーリザーブは45時間。SBEC029 ダットサン スピードタイマーは、三つ折れプッシュ式クラスプを備えたレザーストラップ仕様で、価格は47万3000円(税込)。9月発売予定で、世界限定500本である。
SBEC029
スタンダードなレギュラーモデルとして登場したSBEC027(北米ではSRQ055)はブランドロゴの主張を抑えた仕様で、ブラックダイヤルにブラックベゼルを組み合わせた堅牢なクロノグラフだ。SS製ブレスレットが装着され、その他のスペックはSBEC029と共通である。SBEC027 スピードタイマー クロノグラフは9月に発売予定で、価格は37万4000円(税込)だ。
SBEC027
セイコー スピードタイマー ソーラー クロノグラフ ダットサン240Z リミテッドエディション(SBDL121、北米ではSSC957)は、その名のとおり太陽光で駆動するCal.V192を搭載している。このムーブメントは、フルチャージ時で約6カ月の駆動が可能だ。主な機能として、24時間表示針、パワーリザーブインジケーター、日付表示、クロノグラフ機能を装備している。ブラックのプッシャーと、SS製ブレスレットの中央リンクにはブラックコーティングをオン。ケースサイズは41.4mm径×13mm厚。SBDL121は、3本の限定モデルのなかで最も多く生産されるモデルであり、総数は4000本。9月に発売され、価格は14万3000円(税込)と最も手ごろだ。ただし、このモデルには通常販売の対応モデルが用意されていない。
SBDL121
自動車をテーマにした今回のリリースは、なかなか堅実な仕上がりである。自動車史のなかでもおなじみのロゴやメーカーを繰り返し使い回すブランドが多いなかで、ダットサンにスポットライトが当たるのは新鮮でうれしい限りだ。とはいえ、ベンやジェームズのように“クルマ好き”にはなりきれない私としては、やはりもう少しシンプルなモデルが好みだ。そういう意味で言えば、SBDC215やSBDC217のような時計が、自分の“ギア”には合っている(その他トランスミッションに関する洒落はご自由に)。セイコーが一貫して貫いてきたモットーのようなものがあるとすれば、それは“選択肢があるのは、いいことだ”ということだろう。
詳細情報やスペックについては、ダットサン240Z リミテッドエディションのセイコー特設サイトを参照。
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