ADVERTISEMENT
Photos by TanTan Wang
今春、ジュネーブで開催されたWatches & Wondersで、グランドセイコーは世界に向けて記録破りのスプリングドライブムーブメント、Cal.9RB2を発表した。これは(グランドセイコーによると)今日存在する主ゼンマイで駆動する腕時計ムーブメントのなかで最も高精度であり、公称精度は年差±20秒。ここでの言葉の使い方は意図的なものだ。スプリングドライブムーブメントは完全に機械的な構造から逸脱しており、従来型の主ゼンマイと輪列に加えて、独自のグライドホイールと水晶振動子を組み込んだICを並置している。これこそが、我々がスプリングドライブに期待し、愛してやまない真に滑らかなスイープ運針を生み出す。しかしどのような観点から見ても、その精度は圧倒的に素晴らしく、信州 時の匠工房におけるグランドセイコーのスプリングドライブの取り組みにおける大きな飛躍を意味している。
最近のグランドセイコーのU.F.A.シリーズにおいて3番目のモデルとなる、新作のSLGB005は、プラチナ製のSLBG001とブライトチタン製のSLGB003に続くものだ。遠目には、レギュラーモデルの37mmチタン製モデルのダイヤル違いだと勘違いするかもしれない。かなり近いのだが、このモデルを際立たせるいくつかの微妙な変更点がある。
今回、SLGB005はグランドセイコーのエバーブリリアントスチールで仕上げられた。これは従来のスティール合金に比べて腐食耐性が高く、特にポリッシュ仕上げにした場合にわずかに明るい色合いを誇る。エボリューション9 コレクションのデザイン言語では、それは主にヘアライン仕上げの表面に選択的に施されたザラツ研磨による広い面取りのアクセントとして用いられていることを意味する。37mmという小さめのケース径、11.4mmの厚さ、そして100mの防水性能を備えたこのモデルは、SLGB001のコンパクトなケースを少し軽すぎると感じていた人たちも、スティール(SS)がもたらす重みを間違いなく気に入るだろう。
多くのグランドセイコーのコレクターを困惑させるであろう動きとして、このSS製モデルには4月にSLGB003で(多くの注目を集めて)発表されたばかりの微調整が行える新型クラスプが搭載されていない点がある。SS製のクラスプを製造する準備がまだ整っていないということが理由だろうが、今後、新しいリリースにこのクラスプが常に搭載されることを期待していた多くの人々を確実に失望させるだろう。
限定モデルであることを視覚的に示すものとして、ソリッドな18Kローズゴールド製のグランドセイコーのメダリオンが、平坦な標準的なエボリューション9クラスプに取りつけられている。過去には、ダイヤル上の立体的な“GS”ロゴを、これに合わせてゴールド仕上げにしたデザインも見られたが、私は、このモデルのクラシックなシルバーの外観が好きだ。ダイヤルの色合いと格段によくマッチするからである。正直なところ、私はローズゴールドのアクセントを完全になくすか、ホワイトゴールドにして欲しかった。この時計のきわめてクールなカラーパレットのなかで、ひどく目立っているように見えるからだ。
話がそれてしまったが、本作の焦点はすべてダイヤルにある。信州 時の匠工房の近くにある諏訪・霧ヶ峰高原の樹氷にインスパイアされた、“型打”模様が最初の2モデルから引き継がれている。この、ほとんど抽象的なヘリンボーンモチーフは、中心に向かってより薄いバイオレットになるディープでインクのようなパープルカラーが施されている。グランドセイコーの多くのダークダイヤルと同様に、ベースダイヤル上のラッカーコーティングの深い色合いは、薄暗い照明の下ではソリッドで光沢のあるダイヤルに見え、明るい日光の下では鮮やかで起伏のあるダイヤルへと変化する。少し詩的なプレスリリースがなければ、新しいグランドセイコーのダイヤルとはいえない。今回については、ダイヤルの色を “夜明けの光のなかにゆっくりと姿を現す樹氷の森を想起させる”と表現している。
明るい光はパープルダイヤルにまったく異なる表情を与え、“型打”模様を強調する。
私たちがグランドセイコーの多くのダイヤルについていつも言うことだが、“バイオレットドーン(夜明け)”のカラーリングをまとった型打模様は特にゴージャスだ。Cal.9RB2はWatches & Wondersで見たもののなかでも最も印象的なもののひとつであった一方で、アイスブルーはダイヤルカラーとして私にはあまり響かなかった。そのため私はずっとエボリューション9 U.F.A.のデザインに、よりダークなダイヤルが登場することを熱望してきた。この新しいパープルダイヤルはまさに完璧で、外周にダイナミックな印象を与えるのに十分なグラデーションが、そして(文字どおりの)輝きを放つのに十分なラッカーが施されている。短時間だったが、“バイオレットドーン(夜明け)”ダイヤルを備える本作を着用してみて、私は室内と屋外の照明でダイヤルを比較するために、何度も時計を窓辺に持っていってしまった。それぞれの条件下でまったく異なる表情を見せる様子は、実に魅力的だ。
ありがたいことに、より控えめなフロステッド仕上げのグランドセイコーのロゴがエッチングされたシースルーバックからは、自動巻きスプリングドライブムーブメント、Cal.9RB2が垣間見える。パワーリザーブは72時間で、年差±20秒(月差に換算するとおよそ±3秒)というきわめて素晴らしい精度を誇る。グランドセイコーはこの性能向上について、水晶振動子の新しい製造・加工方法と、改良された温度補正付きのICによるものだとしている。さらに、あまり語られていない追加点のひとつはスプリングドライブムーブメントとしては初めて、サービス時の調整が時計師にとって格段に容易になる緩急スイッチが備わったことだ。
Cal.9RB2の全貌。
パワーリザーブインジケーターはケースバックへ。
1300本限定で、グランドセイコーブティックと一部の正規販売店にて11月から販売される新しいSLGB005は、とてつもないスプリングドライブムーブメントを搭載したとても美しい時計だ。しかしこのダイヤルがあまりにも素晴らしいため、個人的には欲張って限定ではなく、チタン製のSLGB003に加えて通常生産モデルにしてくれればよかったのにと思っている。しかし、いつかSS製の限定版ではないU.F.A.が登場することを期待している。その際は、微調整が行えるクラスプも搭載されるとよいのだが。
詳しくはグランドセイコー公式サイトから。
話題の記事
No Pause. Just Progress GMW-BZ5000で行われた継承と進化
Introducing ゼニス デファイ エクストリーム クロマに新たなふたつの限定モデルが登場
Introducing ヴァシュロン・コンスタンタンが36.5mmの新型トラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーを3本発表