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Hands-On ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.126518LN “アルカラス” 、ターコイズラッカーダイヤルを備えた“自分には似合わないけど憧れる”時計をハンズオン

今年のロレックス デイトナを実機で紹介するシリーズの最後は、カラフルなダイヤルと優れたニックネームの条件について考察していく。

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Photos by Mark Kauzlarich

Watches & Wondersの時期になると毎年楽しみにしていることがある。それはリーク情報の真偽や新作予想ではなく、毎年恒例となっている、新作ロレックスにニックネームをつけようと奮闘する人たちの姿を観察することだ。なかには思わず笑ってしまうようなニックネームもある。たぶん彼らは、あとで友達に“おいおい! それ俺が考えたんだよ”と言いたいがために一生懸命にひねり出しているのだろう。誰にも信じてもらえないとわかっていても、だ。

Rolex Daytona 126518LN

 今年はデイトナにとってまさに大豊作の年であった。以下に紹介する6モデルに加え、ここ数年のあいだにカタログ未掲載のクールなモデルがいくつか登場している。たとえばややふざけた印象はあっても妙にしっくりくる“バービー” デイトナや、サファイアをあしらったオブシディアンダイヤルの美しいモデルなどだ。今回で3カ月連続のデイトナ実機レビューとなるため、スペックや歴史的背景については深く掘り下げないことにする。その代わりに優れたニックネームとは何かについて少し考えてみたい。

Daytonas

 私にとってよいニックネームというのはひねり出された感がないものだ。ポール・ニューマンジョン・メイヤージャン=クロード・キリー。いずれもロレックスの腕時計にとって素晴らしいニックネームとして定着したが、それは誰かが既存の炭酸飲料の名前に無理に寄せようと考え出したわけではないし、すでに別の時計のニックネームとして使われている架空のスーパーヒーローの別名を引っ張ってきたわけでもない。よいニックネームとは自然にそう思えるものであり、なおかつ心からのものであるべきなのだ。

 カルロス・アルカラス(Carlos Alcaraz)がローラン・ギャロス(正式名称にこだわらない方のために補足しておくと全仏オープンことだ)で優勝した試合を観た直後、私は彼の手首に新作ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.126518LNの鮮やかなダイヤルをすぐに見つけた。それは大胆で明るく、夏らしい1本であり、ボールキッズと勝利の喜びを分かち合おうとする、スペインの若きチャンピオンの快活な姿に見事なまでにマッチしていた。“ターコイズ”や“ティファニー”といったニックネームもすでに提案されていたが、2週間前のウィンブルドン決勝のころには私にとってこの時計はもう“アルカラス”であった。

Getty

6月のローラン・ギャロス優勝後のカルロス・アルカラス。 Photo by Getty Images

 この新バリエーションの構造は、オイスターフレックスブレスレットを備えたほかの貴金属製デイトナと基本的に同じだ。自社製の自動巻きムーブメントCal.4131を搭載し、セラクロムベゼルを備えた現行のデイトナと同様、この新たなる“アルカラス”も金属製の外周リングがベゼルの周囲にあしらわれている。このモデルの場合、外周リングはイエローゴールド製で、同じくイエローゴールドカラー(YG)でPVD(物理蒸着)加工された数字が配されている。しかしこのリングは装飾的な要素にとどまらず、セラクロムベゼルのモノブロック構造の一部として設計されており、サファイアクリスタルを固定し防水性を確保する役割も果たしているのだ。

 違いは一目瞭然で、まずラッカー仕上げのターコイズブルーダイヤルだ。ブラックのインダイヤルは外周(目盛りがプリントされた部分)にスネイル仕上げが、内側部分はサンバースト仕上げが施されている。その縁取りにはYGが用いられており、新たに採用されたやや太めのクロマライトを充填したインデックスも同じくYG製だ。このブラックのインダイヤルと鮮やかなカラーの組み合わせはチューダーのクロノ “ピンク”をどこか思い起こさせるものであり、もしかするとこれがグループ全体における新たなデザイン言語なのかもしれない。

Rolex Daytona 126518LN

 この時計には前例がないわけではない。2002年にロレックスは“デイトナビーチ”と呼ばれる、鮮やかなカラーリングを特徴とするシリーズを発表している。私にとってこのシリーズは罪深くも楽しい存在であり、私が着けるには向いていないと思いながらも“デイトナビーチの男”になった自分を想像するのは楽しいものだ。Ref.126518LNが実際にはターコイズをダイヤルに使用していないのと同様に、ホワイトゴールド(WG)製ケースを採用したRef.116519もターコイズではなくターコイズカラーのクリソプレーズダイヤルにアプライドのWG製インデックスを組み合わせている。

Daytona Beach

ロレックス コスモグラフ デイトナ “ビーチ” Ref.116519、ターコイズカラーのクリソプレーズダイヤル仕様。Photo courtesy Christie's

 カルロス・アルカラスが証言するように、従来のロレックスで(最近まで)ほぼすべてに採用されてきたソリッドケースバックにはそれなりの利点がある。3週間ほど前にInstagramに投稿されたリール動画のなかで、アルカラスは『GQ Sports』に対し、2024年のローラン・ギャロス優勝を記念してこの時計が贈られたと語っている。裏蓋にはその旨の刻印が施されているそうだ。彼は「昨年手に入れた」とも話していたが、これが事実であればきわめて珍しいケースである。というのも、ロレックスがテスティモニーに新作モデルを事前に提供することはほとんど例のないことだからだ。最近の例ではロジャー・フェデラー(Roger Federer)氏が新作“ランドドゥエラー”を着用して登場したのは発表直前のことだった。アルカラスがこのデイトナを着用しているのが初めて目撃されたのは、今年のローラン・ギャロスである。仮に彼がこの時計を昨年のうちに入手していたとすれば、そのことを見事に秘匿していたということになる。

 シースルーバック仕様には、それを採用するのにふさわしい時と場合があると思う。価格や複雑さの両極端に位置する時計にこそ最も効果的に機能するのではないだろうか。たとえば、手ごろな価格帯の時計に見られるシースルーバック(たとえば“オープンハート”のような)仕様は、機械式時計に初めて触れるコレクターにとってその魅力を感じるきっかけとなる。ただし、そういったモデルでは仕上げの美しさや構造の複雑さをアピールするには限界がある。一方、ハイエンドウォッチでは手仕上げや精緻な作り込みを見せる場としてシースルーバック仕様はとても有効だ。だがロレックスの場合は話が別である。ロレックスは世界最高峰の工業製品のひとつであり、特別に証明する必要などないため、ランドドゥエラーのようなごくまれな例を除けばシースルーバック仕様を採用する理由は見当たらないのだ。私としては刻印できる裏蓋があればそれで十分だ。話を進めよう。

Rolex Daytona 126518LN

 ケース直径は40mm、厚さは11.4mm、ラグ・トゥ・ラグは47.5mmと、全体のプロポーションは非常にバランスよく設計されている。パワーリザーブは72時間で、日差±2秒という高精度を誇る。ブレスレットは内部に金属構造を備え、カットしてサイズ調整する設計ではない代わりに片側ごとに6サイズの長さ展開があり、さらに5mmのグライドロックによる微調整も可能だ。ラバーブレスレットの内側にはフィンが設けられており、通気性を高めるとともに汗をかいた手首に張りつくのを防いでくれる。アルカラス(およびヤニック・シナー[Jannik Sinner])が試合後に着用するのもうなずける話だ。

Daytona
Daytona
Glidelock adjustment system for 5mm of extension

 ブラックのインダイヤルのデザインは少し不思議な印象を受ける。強く目を引く大胆さで、まさにそれが意図なのだろう。また“ターコイズ”カラーのダイヤルのおかげで、“Daytona”のロゴが常に赤色であり、多くのダイヤルではその色が背景と(良くも悪くも)同化してしまいがちだという事実を思い出させてくれる。

Rolex Daytona 126518LN

 全体として見たとき、このモデルは近年登場したカタログ掲載モデルのなかでも、最も視覚的インパクトのあるデイトナかもしれない。このような派手さを追求したともいえる仕上げはロレックスがためらうようなものではなく、その姿勢には感謝したいが、これほど大胆なデザインがカタログモデルとして登場するのは珍しいうえにジェムセッティングなしならなおさらである。価格は549万1200円(税込)と強気ではあるが、これほどまでに大胆で異例のカタログモデルであればむしろ納得の価格だと感じる人も多いだろう。また見逃せないのは、オイスターフレックス仕様のデイトナにおいてYGは最も手ごろな素材であり、ホワイトゴールドやエバーローズゴールドより27万9400円安く設定されていることだ。関係者によれば、このモデルは標準ダイヤルより入手難易度は高いものの、メテオライト仕様の割り当てに比べればはるかに現実的な範囲で手に入るとのことだ。

Daytona

 オーデマ ピゲは天然のターコイズダイヤルを備えたロイヤル オークを展開している。となれば当然こう思うはずだ。それならロレックスは、いっそターコイズストーンのダイヤルを採用してしまえばよかったのではないか? なにしろ2010年代半ばには、ジェムセッティングを施したモデルや、ソーダライトや美しいグロッシュラーガーネット、ルベライトといった天然石ダイヤルを採用した、突き抜けた個性を持つデイトナが数多く存在していたからだ。その点は心配ご無用。ロレックスはそのニーズにも応えてくれている。

Rolex Rubellite

 2015年製 ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.116589SALV、グロッシュラーガーネット ルベライト ダイヤルにダイヤモンドインデックスを備えたモデル。Photo courtesy Christie's

 数週間前、ロンドン滞在中の当編集部ティム・ジェフリーズが、新作オイスターフレックスブレスレットを備えたデイトナのカタログ未掲載バージョンを実際に目にする機会を得た。そのRef.126538TBRは、天然ターコイズのストーンダイヤルにバゲットカットのダイヤモンドインデックスを備え、ケースにもバゲットカットのダイヤモンドをセッティング。さらにラグ部分にはダイヤモンドコーティングが施されている。こうしたレアピースを実際に目にできるのはこの仕事の醍醐味のひとつだ。もしカタログ掲載モデルと未掲載モデル、この2本を実際に見比べることができたなら、それはきわめて興味深い体験になったであろう。

London Off-Catalog

最近ロンドンで目撃された2025年に発表されたカタログ未掲載モデル、天然ターコイズのストーンダイヤルにダイヤモンドインデックス、ベゼル、ラグを備えたRef.126538TBR。 Photo by James Malone

 カタログ掲載モデルのRef.126518LNですら自分に似合うか自信がないのだから、カタログ未掲載モデルとなればなおさら自分向きではない。だが、それゆえに、こういう時計こそ眺めたり文章にしたりするのが好きなのかもしれない。本モデルがどこかを思い出させるのはブラックのインダイヤルだけが理由ではなく、デイトナ“ビーチ”シリーズへの軽やかなオマージュにも通じるものがあり、密かに、いや、もはや隠しきれずに私は楽しんでしまっている。こうしたモデルを好きな理由のひとつは、それが自分のコレクションに本気で加えようとは思わないタイプの時計だからだ。ただただ遠くから眺めたり、ほんのひととき手に取ったり、あるいはテニス界の若きスターの手首に輝いている姿を眺めるだけで充分に満たされるのである。

Rolex Daytona 126518LN

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