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我々が知っていること
ここ数年、フェリペ・ピクリク(Felipe Pikullik)氏はきわめて魅力的で印象的な独立時計師として、静かにその評価を確立してきた。彼が新たに自社開発したシュテルネンヒンメル FPA1はその最新作だが、彼の魅力はそれだけにとどまらない。まず数年前に我々が記事にしたように、ピクリク氏と彼のチームは、スイスやグラスヒュッテといった伝統的なウォッチメイキングのインフラから遠く離れたベルリンを拠点としている。それにより、ピクリク氏が達成する自社生産のレベルはより一層注目に値し、より複雑なものとなっている。彼は時計師としての訓練を受け、ステファン・クドケ(Stefan Kudoke)氏やロルフ・ラング(Rolf Lang)氏のもとで経験を積んだ。しかし彼の仕上げに対するアプローチの多くは、正規の教育の枠を超えて、書物を探し求め、学校では習得できない技術を独学で身に着けたことによるものだ。そして何よりも驚くべきは、膨大な手作業が施されているにもかかわらず、彼の時計が約2万ユーロ(日本円で約370万円)という価格帯を維持していることだろう。
フェリペ・ピクリクのモントファーゼ 1。
新作のフェリペ・ピクリク シュテルネンヒンメル FPA1は、ETAやユニタスの輪列(ピクリク氏が自社で再現したものではあったが)に依拠していたこれまでのモデルから、さらに一歩踏み込んだものとなっている。彼は自身の名を冠した自社製ムーブメント、Felipe Pikullik Architektur Eins(FPA1)を開発したのだ。まずはダイヤルから見ていこう。直径39mm、厚さ10.5mmで50m防水のステンレススティール製ケースに収められたこの時計は、グリーンまたはブルーのアベンチュリンダイヤルが浮かんでいるかのようなデザインが特徴で、9時と3時位置にはふたつのダイヤモンドがセットされている。アプライド仕様でエングレービングが施されたネームプレート、テンプが見える“オープンハート”スタイル、そして10時から2時位置にかけてのレトログラード式のデイト表示が配されている。
ムーブメント側からは、熟練の時計師でさえ挑戦的と感じるようなディテールとともに、高いレベルの手作業と技術的な野心が見て取れる。リューズと巻き上げの歯車には、よりスムーズなエネルギー伝達と摩擦の低減を目的とした“ウルフティース(狼歯)”と呼ばれる歯車の形状が採用されており、ラチェット機構には隠れたクリック機構が組み込まれている。ピクリク氏が指摘するように、どのムーブメントのラチェット機構も、時間とともに摩擦や微細な金属粉を発生させる。この問題に対処するため、彼はクリック機構を(可能な限り)独自の構造内に収めることで、金属粉をシステム内に留め、のちのメンテナンスで取り除けるようにした。
一部の部品はCNCマシンで荒削りされているが、仕上げはすべて手作業で行われており、それはひと目見ればわかる。多くのスイスブランドがムーブメントの95%を機械で仕上げられるのに対し、このブランドが同じ手法をとっていないことは明らかである。ジャーマンシルバー製のブリッジには手作業によるトレンブラージュ(Tremblage)仕上げ、ほかのブリッジには手彫りのエングレービング、そして中央のフィンガーブリッジにはブラックポリッシュ仕上げが施されている。また、アングラージュ(面取り)が手作業であることも明白だ。さらにケースも、これまでのデザインと比べて仕上げのレベルが一段階上がっている。ケースには、ラグとケースが接する部分に日付調整用のプッシャーがさりげなく組み込まれている。しかしケースのバランスを崩さないように、フェリペ・ピクリクはほかのラグにもダミーのプッシャーを追加した。将来、より複雑な時計が作られるようになった場合、これらのプッシャーは実際に機能するようになる可能性がある。
フェリペ・ピクリクのシュテルネンヒンメル(星空を意味する) FPA1は、1万7500ユーロ(日本円で約320万円)というきわめてリーズナブルな価格で販売される。ブランドから直接購入が可能だ。
我々の考え
これはピクリク氏と彼のチームによる素晴らしいリリースだ。スイスやグラスヒュッテといった、ウォッチメイキングのインフラが整っていない場所でブランドを築くことがどれほど困難なことか、人々はあまり理解していないだろう。もちろん、遠方のサプライヤーに連絡を取ることはできるが、特に少量注文の小規模なインディペンデントブランドにとっては、必ずしも手頃な価格で実現できるとは限らない。さらに、ピクリク氏がウォッチメイキングとデザインを手がけながら、チームに仕上げの技術を教えているという事実は賞賛に値する。知識を分かち合うことが、彼の信条の中心にあるのだ。
確かに、その仕上げはレジェップ・レジェピやフィリップ・デュフォー、あるいはショパールのL.U.C 1860には及ばないものの、2万ドル(日本円で約320万円)前後という価格を考えればそれは十分に理解できる。いくつか改善の余地はある。例えばアングラージュ(面取り)の均一性や、エングレービングが施されたブリッジとの接合部などが挙げられる。全体的に不均一で部分的に凸状になっており、歯車の研磨がやや粗い。個人的には、ダイヤルはオープンハートではないほうが、より見栄えがすると思う。とはいえ、これらはすべて重箱の隅をつつくような指摘であり、木を見て森を見ずということわざが当てはまるだろう。なぜなら、この価格帯でこれほどの時計は本当に素晴らしいと思うからだ。ケースはよく考えられているし、トレンブラージュ仕上げは素晴らしく、ウルフティースの採用は“時計好き”の心をくすぐるディテールだ。今後、彼らの時計がさらに進化していくことは間違いないだろう。
基本情報
ブランド: フェリペ・ピクリク(Felipe Pikullik)
モデル名: シュテルネンヒンメル FPA1(Sternenhimmel FPA1)
直径: 39mm
ラグ・トゥ・ラグ: 47.5mm
厚さ: 10.5mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ブルーまたはグリーンのアベンチュリン
インデックス: エングレービングされた日付、3時と9時位置にセットされたダイヤモンドインデックス
夜光: なし
防水性能: 5om
ストラップ/ブレスレット: ラバーコーティングされたレザーストラップとラバーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: FPA1
機能: 時・分表示、レトログラード式のデイト表示
パワーリザーブ: 46時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時
石数: 20
クロノメーター認定: なし
追加情報: 手作業によるトレンブラージュ仕上げが施されたジャーマンシルバー製ブリッジ
価格&発売時期
価格: 1万7500ユーロ(日本円で約320万円)
発売時期: 販売中
限定: なし
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