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キングセイコーが鈴木亮平をグローバルアンバサダーに起用。就任直後に明かしたセイコーへの想い

日本が誇る俳優がキングセイコーの世界進出を共に歩む。タイで行われた発表の場に向かった。

去る7月18日、タイ・バンコクでキングセイコーのグローバルアンバサダーを発表するプレミアイベントが行われた。大歓声と共にステージに現れたのは、実力派として名高い鈴木亮平氏。記憶に新しい『シティハンター』で日本のみならずアジアでの人気を獲得し、今最も勢いのある俳優の一人と言って過言ではない。もともと時計愛好家でヴィンテージのキングセイコーも愛用するという彼と、長年に渡ってアジア、特にタイで高い人気を誇るセイコーが手を取り合うというのは必然のように思え、今後の勢いを占う期待を込めて、僕もタイへと飛んだ。

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鈴木亮平氏。1983年生まれ、兵庫県出身。2007年『椿三十郎』で映画デビュー、『エゴイスト』で第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞など数々の受賞歴を誇り、2024年には第7回アジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードで最優秀主演男優賞、最優秀コメディ部門主演男優賞を受賞するなど、世界へと活躍の場を広げている。


最新作のキングセイコー VANACを腕に登場

キングセイコーのグローバルアンバサダーに就任した鈴木亮平氏と、セイコーウオッチ(株)代表取締役社長の内藤昭男氏。内藤社長はお父上の手元で見たセイコーの時計が、現在社長を務める自社との初めての思い出。時計コレクターはヴィンテージウォッチに熱視線を注いでいる事実を認識しつつ、キングセイコーにはノスタルジーを表現した部分もあると語った。

 キングセイコーはVANACのお披露目と共に“The Newest Classic”というブランドフィロソフィーを改めて全世界に伝えた。これは、伝統的なものやそれを重んじる人々が常に変化を続け、挑戦する姿勢を表したものだが、内藤社長はそれに最適な人物として鈴木氏の起用を歓迎したという。「プロフェッショナルとして、国内外の様々な作品と真摯に向き合い、常にベストを尽くし続ける姿勢を持つ彼は、まさにキングセイコーの哲学である“The Newest Classic”を体現する存在だと確信しています」(内藤氏)

 そんな鈴木氏は、1960年代のキングセイコーを愛用してきたことを明かすと「長年、キングセイコーに深い敬意を抱いてきました。1961年から始まる歴史や、細部に宿るこだわり、そして時計づくりに対する一切の妥協を許さない姿勢に強く引かれています」と、まさに相思相愛の様相でイベントがスタート。今回、もうひとつの主役で7月11日に発売されたばかり新作VANACは、鈴木氏の手元で登場し、早速時計の話題へと展開していった。

 「今回、新生VANACの登場にはとても驚きました。この時計は大胆なデザインと、高精度なメカニカルムーブメントCal.8L45を搭載している新しいシリーズです。1972年に初登場したVANACは、それまでのクラシカルなデザインとは一線を画し、鮮やかなカラーリングや斬新な多面形のケースデザインなど、先鋭的なスタイルを打ち出したシリーズ。当時の時代背景には、未来を見据える前向きな精神と、来たるべき時代への強い憧れがありました。そして、50年以上の時を経て、キングセイコーの新たな可能性を切り開こうとする当時のVANACに込められた意志を継承する新生VANACが登場したのです」

 2022年、約60年ぶりのブランド復活以来、キングセイコーはKSK、KS1969とクラシカルな意匠を残しながら端正なコレクションを拡充してきた。今回の新生VANACはスポーティなデザインで、他の2コレクションとは明確に異なるプロフィールが与えられている。基本的にはクラシックな時計を好むという鈴木氏だが、VANACにはポジティブな印象を抱いているようだ。

画像は筆者の腕だが、鈴木氏も同じくパープルカラーのSDKV001を愛用していた。

会見の会場となったのは、バンコクでも屈指のラグジュアリーデパートである、サイアム・パラゴン。

地元タイのマスコミをはじめ、韓国、台湾、香港などアジア中からメディアが押し寄せた。日本からは4誌が参加。

 さらにキングセイコーというブランドについて話が及ぶと、「当時のクラシックさ、伝統を受け継ぎながらも、全く新しい、現代の腕時計として展開するキングセイコーはまさに、ブランドフィロソフィーであるThe Newest Classicを体現していると思います。そしてキングセイコー誕生の地である東京は、常に変化し続けている近未来的な都市でありつつ、実は昔からの神社やお寺が多く、 The Newest Classicそのままの街だと感じますし、その精神はキングセイコーに息づいていると思います」とコメント。そんなブランドのグローバルアンバサダーを務めるにあたり、俳優である自身とキングセイコーをどのように重ねるかという質問が続く。

 「俳優として、そしてひとりの人間として、私自身もこれまでの世界の俳優たちが積み上げてきたクラシックな演技をリスペクトし学んだ上で、自分ならではの新しいスタイルを作っていきたいと考えています」


キングセイコー VANAC ギャラリー

SDKV001 39万6000円(税込)

SDKV003 39万6000円(税込)

SDKV005 39万6000円(税込)

SDKV007 限定モデル 39万6000円(税込)

SDKV009 39万6000円(税込)


キングセイコーが体現するThe Newest Classicという哲学

 場面は、タイを代表する俳優であるアナンダ・エヴァリンガム氏との対談へと移る。彼は長年この地でセイコーのアンバサダーを務めており、鈴木氏とは同じ役割を持つ兄弟弟子のような存在。イベントを前に、アナンダ氏の作品を数本視聴したという鈴木氏は、既に彼の大ファンになったそう。今回見事対面を果たした彼らは、同じ哲学を共有する仲間として、すぐに意気投合。話題は、どんなシーンでVANACを着けたいかというテーマへ。

 「一体型ブレスレットを備えたスポーティなデザイン。ジーンズとTシャツのスタイルはもちろん、1つの時計であらゆるオケージョンに対応できるモデルだと思っていて、こういう時計を見つけるのは難しいと思います。今日のようなジャケットスタイルでも、スーツでもカジュアルでも着けたいですね」(アナンダ氏)

「より幅広いライフスタイルやシーンで活躍できる腕時計として選んでいただけることを目指したVANACは、本当に色々なシーンに合うものになっていると感じています。デザインは大胆ですが、今日の僕のようなスーツに合わせてみるのもカッコいいですし、特別なオケージョンという意味では、旅行に持っていきたいとすごく思います。The Newest Classicということで、バンコクのような大都会にも合うし、アユタヤなどの遺跡や昔の街を歩くときにも手元にあるシーンが浮かびます。日本であれば、東京はもちろん、奈良や京都などのクラシックな場所にも合うと思いますので、旅に合う時計だなと感じますね」(鈴木氏)

タイを代表する俳優であるアナンダ・エヴァリンガム氏。過去10年以上にわたり、タイでセイコーのアンバサダーを務めた。

 趣味についての話題をMCがふると、やはりここでも近しい趣向を持つ両者はクラフツマンシップを感じるものへ言及。アナンダ氏は、その中でもアナログカメラが子どもの頃から好きだと語り、時計と共に自分のクラシックであると話した。そんな話に深く共感しながらも、鈴木氏は遺跡めぐりなどの趣味を明かした上で、初めて訪れたタイの地で味わったグルメの話題で場内を沸かせた。

 「本場で初めていただいたタイ料理は格別でした。カニの入ったプーパッポンカレーがすごく美味しかったのと、デザートでいただいたカオニャオ・マムアンに驚きました。もち米とマンゴーが一緒に出てきて、日本では見たことがなかったものだったのですが、挑戦してみました。美味しかったですし、常に進化を忘れないようにしたいと思って(笑)」


日本がふたたび誇るべきは、職人技やクラフツマンシップ

VANACのデビューコレクションは、レギュラーモデル3種と限定モデル1種(ブラウン)、セイコーブティック専用モデル1種(ライトブルー)の計5本で構成。レギュラーモデル3種は、時間の移ろいによって変化する、現代の東京の景色をダイヤルで表現され、それぞれ「夕暮れ時」「真夜中」「日の出」を表わす、パープル、ネイビー、シルバーの3色のダイヤルが揃う。

 濃厚な会見が終わり、幸運にも鈴木氏に直接インタビューする時間を得た。まずは、どんな人にVANACを勧めたいか?と話を始めた。

 「人と違うことを恐れず、それを良しとする人にお勧めしたいですね。VANACの精神性というか、そこが共感してもらえると思うので。このモデルは、セカンドウォッチとしても遊び心を叶えてくれる時計で、遊びを加えたいときのひとつとして、着けるとテンション上がりそうです。ずっと着けることもできる対応力がある時計だけど、僕自身はそういう魅力を感じています。毎日着けるとなるとブルーが良いかもしれないですが、僕は今着けさせてもらっているパープルが特に好み。着ければ着けるほど愛着が湧いてくるのは、ほら、70年代の雰囲気を残しているじゃないですか。金と紫のレトロフューチャーな感じ、これがクセになるんです。今の若い人には新しく映るんじゃないでしょうか?」

VANAC専用ブレスレット。ヘッドが大ぶりなモデルだが、太く、7mm程とピッチの短いコマを採用したことで着用時の安定性を確保した。なお、コマは、個別に磨きを加えた別体のパーツを組み合わせている。

パープル文字盤に挿された、ゴールドのインデックスリングやデイト窓がレトロな雰囲気。VANAC全体のテーマである、ホリゾンタルパターンも配されている。

 続いて、時計愛好家の鈴木氏にぜひとも聞いてみたかったのが、“キングセイコーに潜む、オーバークオリティなディテール”はどこかということ。新作とヴィンテージの両面から話してくれた。

 「僕は、現行ではKS1969が本当に傑作だと思っています。自分でもSDKA017(シルバー文字盤)を着けていますが、特に多列のブレスレットはフィット感もありつつヴィンテージ感も残している。昔のヴィンテージのブレスレットを着けたことがある人なら分かる、このシャラシャラとした感じは絶妙で、感覚を頼りに再現しているなと感じます。あとは、薄さと腕に吸い付くような重心の低さ。個人的にはドーフィン針ファンなので、最初はKSKに付いている針が良いんじゃないかなと思ったんですが、着けているうちにやはりこのバトン針のバランスが良いんだと。さすが、考えられているなと唸らされました。このオーバル型のCラインケースは、これまで着けたことがなかったんですが、腕への吸い付きを助けている感じがしていいんですよねえ。ポリッシュとブラッシュドの細かい仕上げの組み合わせも見事で、磨きが本当にいいんです。ちなみに、ヴィンテージでは、44KS クロノメーターが長年の憧れです。秒針の先がアロー型になっている個体がわずかに存在していて、そのディテールが本当に大好きで。今ではあまり見られない、ラグの内側が面取りされているというのが技術的にも難しく、珍しいんですよね」

 時計の話となると止まらない鈴木氏で時間内にインタビューをまとめるのも苦労したが、なんとか結びの質問として、日本発のキングセイコーが“今”の時代に提供できる価値観とは何か?と投げかけることができた。

 「セイコーがクォーツを発明したのが1969年で、世界を席巻したのがちょうど70年代ですもんね。間違いなく世界に誇るメーカーですし、今考えるとすごくないですか、クォーツ革命って。全世界の時計産業を手中に収めかけた、そんなイノベーションってそうそうない。その意味で、真面目なものづくり、職人技、クラフツマンシップ。月並みですが、こういうものを改めて提供すべきだと考えています」

必ずしも手作業という意味だけではない、日本のものづくり。僕自身、自戒も込めて日本が狙っていくべき領域なのだろうと考えています

– 俳優・鈴木亮平

 クラフツマンシップとは、現代では手仕事、特に時計業界では職人がひとりで仕上げきるようなものを指すことが多い。しかし、鈴木氏の意図はそれとは異なり、これには僕も思わず膝を打った。

 「必ずしも手作業という意味だけではなくて、どんな機械を選んでどう使うか、どういう技術を組み合わせるか、という意味での日本のものづくりがクラフツマンシップだと考えています。スイスやドイツのものづくりももちろん素晴らしいですが、日本にしかない実直につくるっていうところが世界に誇る強みなんじゃないかと思っていて。それは時計づくりだけではなくて、僕らのような仕事とかアートとかもそうだと思うんですが、細部をものすごくこだわるというところが僕らにはありますよね。日本のアイデンティティを持ちながらも海外の最先端のレベルにまで、こだわりとか細部のクオリティを高めていくというのが、これからの日本に求められることだと思いますね。日本独自の、とはいえ“和”みたいなものを押し出すだけではなく、海外の良いものを取り入れて、変換して、上位互換することで日本オリジナルのクオリティを与えていくというのが、我々のアイデンティティだと思うんです。僕自身も、自戒を込めて、そう考えています」

 記者会見や対面取材を通して、改めてキングセイコーと鈴木亮平という俳優とのマッチングは素晴らしいと感じた。タイを去るために飛行機のチェックインの準備をしながら、会見を締めくくった鈴木氏の言葉を反芻していた。

 「キングセイコーのグローバルアンバサダーに選ばれたということは、ある種、今の日本を代表する俳優のひとりであると認めていただいた感覚で、本当に光栄なこと。本物であるという哲学、本物でありながらも挑戦するという哲学は同じものを自分も持っているつもりです。観ている方に、その共鳴を伝えられたらいいなと思っています」

 キングセイコーの今後の海外、特にアジア展開が楽しみになると共に、挑戦を忘れない本物という在り方は、時計業界で次のスターになるための絶対条件であるように感じられた。多少の混迷がある業界ながらも、僕らも次なる本物に目を向け続けていきたい。

その他、詳細はキングセイコー公式サイトへ。