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Introducing 大塚ローテック 9号、5つの機能を搭載した初のコンプリケーションウォッチを発表

新開発された自社製ムーブメントを搭載する9号は、ジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、そしてパワーリザーブインジケーターを搭載した自社製コンプリケーションウォッチだ。

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クイック解説

大塚ローテック5作目(機構における分類として。生産終了となったモデルも含めると、正確には8作目となる)となる9号が発表された。2025年1月に発表された5号改(発売は3月)に続く新作で、本作はブランド初のスクエアケース(縦48mm、横30mm)にジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーターなど、複数の機構を納めたコンプリケーションウォッチとなっている。なかでも注目すべきはこれまでのようにモジュール部分のみを作り上げただけでなく、本作ではベースから含めて片山次朗氏が手がけた言わば自社製ムーブメントを搭載しているということである。製作開始は9年前。多くの機能を載せるというコンセプト上、これまでのようにベースムーブメントにモジュールを載せるという構成では実現できなかったため、ベースも含めてゼロから開発することになったという。

 時刻表示はダイヤル右半分にレイアウトされており、右上のディスクが時を、その下(中央部)のディスクが分を表示。暗所での視認性も考慮し、時、分の数字を照らすように透明なディスクの下に蓄光ブロックが組み込まれた。正時になるとジャンピングアワー、独自のリワインディングミニッツ、そしてアワーストライキングが作動。左下のボタンがアワーストライキングのON/OFF切り替えボタンになっており、ダイヤル左側のパイプライン形状のゴングをハンマーがたたき、音を鳴らす(動画で一瞬音色を確認することができるが、“キィン”という短い金属音が聞こえる)。

 中央に位置するリワインディングミニッツは、レトログラード機構を応用したもので、アナログ体重計のような動き(ディスク中央のひげゼンマイがバネの役割を果たし、1時間に1度、分ディスクを巻き戻す)を特徴とする。動力ゼンマイの残量は、ダイヤル中央右下にある“POWER”と書かれた棒状のパワーリザーブインジケーターにより表示。動力ゼンマイを巻くと棒が下に飛び出る仕様で、動力残量が短くなるほど棒も短くなっていく独特の表示方法を採用する。そしてケースバックはステンレススティールの塊をくりぬいたソリッドバックで、手首にフィットするようにアーチ状のフォルムに加工成形している。

 9号が搭載するCal.SSGTは、新開発のムーブメントだ。手巻き式で、サイズは41.3mm×26.4mm、厚みは10.35mm、部品点数は278点。香箱など一部にETAのCal.6498の部品を転用しているものの、片山氏がモジュールだけでなくベースから手がけたという自社製ムーブメントである。機能はジャンピングアワー(右上ディスク)、リワインディングミニッツ(中央ディスク)、トゥールビヨン(中央下)、アワーストライキング(左下)、パワーリザーブインジケーター(右下)の5つ。

 トゥールビヨンは、そのダイナミックな動きを見せるためにテンワをオフセット配置。正時になるとジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、アワーストライキングが作動する。アワーディスクの中心軸、アワーストライキングのハンマー可動軸には、ミネベアミツミによる特注のルビーボール・ボールベアリングを採用している。

 なお、Cal.SSGTの名称は、メインプレート(地板)の上にさまざまな機能を載せていく様子が、寿司下駄の上にネタを並べるようだったことから“SuShiGeTa”をもじって付けられたものだ。

 本機の製作に寄せて、片山次朗氏はその経緯について、以下のようにコメントする。

 「電力メーター(誘導形電力量計)のように、ガラスケースのなかにさまざまな機械部品が並び、その動きを眺められるような腕時計をデザインしたいと思い立ち、ムーブメントをゼロから設計しました。載せられたさまざまな機能部品があらわになっている構造は、真空管、カメラの軍艦部、工業地帯の景色などと通じるものがあるかも知れません。サファイアクリスタルのなかで動作している部品のひとつひとつから、工業機械の質感、振動や動作音が伝わってくるような腕時計を目指しました」

 価格は1760万円(税込)。とはいえ、今回は1本のみようやく完成したという状況で、発売時期も販売方法についても現時点では未定である。

画像がアワーストライクのゴング。素材はリン青銅。


ファースト・インプレッション

9号においても重要な役割を担っているのは、ミネベアミツミ製のボールベアリングである。採用されたのは世界最小のボールベアリング(DDL-004:外径1.5mm、内径0.5mm、厚さ0.65mm)と、本作のために開発された特注のルビーボール・ボールベアリング(DEL-008:外径2.5mm、内径1mm、厚さ0.7mm)。

左から順に7.5号、6号、5号改、そして新作の9号。

 本作においては、トゥールビヨン(DEL-004を使用)とアワーストライキング(DEL-008を使用)というふたつの複雑機構の心臓部で、精密で滑らかな動きを支えるために用いられた。アワーストライキングに用いられる特注のルビーボール・ボールベアリングは、サイズこそ前作の5号改と同じだが、転動体(ボール)に金属ではなく極小のルビーボールを採用しており、重要なパーツとなっている。

 個人的に本作で心を引かれたのは、下に蓄光ブロックが組み込まれた、時・分表示の透明なディスク部だ。蓄光ブロックの色と相まって、暗所で光る様子は、まるでクルマの計器盤や、デジタルウォッチの液晶ディスプレイのような見え方となる。9号のユニークなスタイルをさらに強調しているようだった。

 2012年に発表されたブランド初の市販モデルとなった時・分をディスク表示としたレギュレーターモデル(+センター秒針と日付表示)の5号、ダブルレトログラード時・分表示(+秒ディスク表示と日付表示)の6号、ジャンピングアワーと分・秒ディスク表示を組み合わせた7号(7.5号は表示レイアウトバリエーション)、そして5号の進化形として日本初のサテライトアワー機構を載せた5号改と、いずれも負けず劣らずのユニークなモデルを次々に発表してきた大塚ローテック。

 新作の9号も相変わらず個性的だが、これまでとは打って変わって角形ケース、しかも複数の機構を載せたコンプリケーションウォッチで1000万円を超える価格になるという情報を目にした時は、率直に言って意外だった。というのも、これまでの大塚ローテックのコレクションは、それぞれ奇抜で独創的な見た目と機能を持った時計ではあったものの、どれも100万円を切る価格設定で、片山次朗氏の斬新なクリエイティビティを比較的身近に楽しむことができた。だが、9号の価格は1760万円(税込)と大幅にジャンプアップしているのだ。

 搭載している機構の複雑さを考えれば、その価格設定も納得であるし、熱心なファンにとって金額はあまり関係ないのかもしれない。だが、多くの人にとって新作が手にしやすい価格でないのは間違いないだろう。この価格設定は9号に限ったものなのか、それとも今後はブランドとしてハイプライス戦略に転換するための第1歩となるのか、そのあたりの考えについては気になるところだ。その答えによっては、もはや大塚ローテックが身近な存在ではなくなる可能性もあるのだから。

 気付いている方もいるかと思うが、8号がまだ発表されていない。片山氏によると、この8号もなかなか独創的な時計であるようだ。2026年の発表を予定しているとのことだったが、この8号の発表によって、ブランドの目指すポジション、取る戦略が見えてくるだろう。

 奇抜な機構やスタイルに目を奪われがちだが、その設計においてしっかりと使い勝手が考慮されている点も実は見逃せない。時刻表示をダイヤル右半分に寄せてレイアウトされているのは、その最たる例だ。このおかげで袖口からわずかにダイヤルを覗くだけで時刻の確認ができる。もちろん機構による制限もあるが、これは5号改から続く流れで、大塚ローテックではこれまでにも使い勝手や製品としての信頼性を高める改良を行なってきた。しかも本作のケースは手首にフィットするようにアーチ状のフォルムに加工成形されていることを考えると、こうしたユーザビリティへの配慮は、その価格戦略とともに、今後も注目しておくべき傾向と言えるかもしれない。

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基本情報

ブランド: 大塚ローテック(Ōtsuka Lōtec)
モデル名: 9号(No.9)

直径: 縦48mm、横30mm
厚さ: 13mm(最大値)
ケース素材: ステンレススティール(316L)+サファイアクリスタル
文字盤色: スケルトン
インデックス: リワインディングミニッツ
夜光: アワー、およびミニッツ(一部)表示にスーパールミノバ
防水性能: 日常生活防水
ストラップ/ブレスレット:カーフレザーストラップ(ラグ幅26mm)
追加情報: アワー、およびミニッツディスクの素材はサファイアクリスタル(0.3mm厚)


ムーブメント情報

キャリバー: SSGT
機能: ジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーター
直径: 41.3mm×26.4mm
厚さ: 10.35mm
パワーリザーブ: 約40時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時
石数: 30石+5ボールベアリング
追加情報:フリースプラングテンプ、ミネベアミツミ製ルビーボール・ボールベアリング:2.5mm(特注品)、1.5mm(世界最小)搭載


価格&発売時期

価格: 1760万円(税込)
発売時期: 未定。
限定:なし、ただし今のところは年数本の予定。販売についても未定。

詳細は、大塚ローテックの公式ウェブサイトをクリック。