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LVMH Watches & Jewelry ウォッチメイキング アカデミー: 時計技術を学び、世界に羽ばたく2年間の育成プログラム

LVMH Watches & Jewelry ウォッチメイキング アカデミーがスイス、アメリカに続いて、世界で3つめの都市として東京にて始動。ここは会社のなかで学び、働きながら時計修理のプロを目指す、ちょっとユニークな学校だ。

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LVMHがスタートさせたLVMH Watches & Jewelry ウォッチメイキング アカデミーは、日本では初の取り組みとなる社内型の育成プログラム。目指すのは、次世代の“時計のプロ”を育てることで、第1期生として選ばれたのは、18歳と19歳のふたり。まだ実務経験はないが、時計に対する情熱とポテンシャルを見込まれ、すでにLVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン株式会社の正社員として働きながら国家資格である時計修理技能士資格の取得に向けて学んでいる。

 アカデミーと聞くと一般的な専門学校のようなものを思い浮かべるが、このプログラムはちょっと違う。教室があるわけでも黒板が並ぶわけでもなく、拠点になっているのは、LVMHが2016年に開設したカスタマーサービスセンター。ここでは年間約7万本の時計修理が行われ、ウブロやタグ・ホイヤー、ゼニス、ブルガリといったメゾンを支える職人たちが日々腕を磨いている。


サービスセンター内に設置されたアカデミー

LVMH カスタマーサービスセンター内に設けられたトレーニングルーム。生徒のデスクが4台に講師のデスクが1台、それと少しの教材があるのみで、シンプルだけれど集中しやすい空間だ。

 開校の舞台となったのは、東京・東陽町にあるLVMHカスタマーサービスセンター。2016年開設の同施設には、自然光が差し込む開放的なワークスペースが広がり、60名を超える技術スタッフが働いている。ここにあるのは“会社のなかにある学校”。働く現場のすぐ隣で、学びの時間が流れている。開校から半年間は座学と実習を行いながら、その後はクォーツからシンプルな自動巻きムーブメント、そして最終的には複雑なクロノグラフに至るまで段階的に構造を理解し、手を動かして覚えていく。目の前のムーブメントと格闘するうちに、彼らは少しずつ職人になっていくのだ。

 さらに興味深いのは、語学の授業までカリキュラムに組み込まれていることだ。英語を学ぶ理由は明確で、LVMHグループのネットワークを使えば将来的にスイスやアメリカのワークショップで経験を積む道もあるからである。つまりここは、国家資格を取るための学校でありながら、世界に出るための準備もできる場所でもあるのだ。

 彼らを迎えるのはただの講師ではない。講師による指導に加えて、アカデミーのすぐ隣にはLVMH各メゾンの時計を手がける工房が併設されている。現場には経験豊富な技術者たちが常駐しており、わからないことがあれば、講師だけでなく、同じフロアにいる先輩たちにも気軽に質問できる。日々の業務の空気を感じながら、その場で実践的な学びを得られる。これほど恵まれた環境はそう多くないだろう。

LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン株式会社 取締役COO ジュリー・ブルジョワ氏。

LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン合同会社 職務執行者社長 ノルベール・ルレ氏。

 「情熱をもった未経験者を採用しました。このアカデミーは、技術を教えるだけじゃなく、夢を託す場所にしたいんです」と語ってくれたのは、LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン株式会社の取締役COO、ジュリー・ブルジョワ氏だ。その表情は真剣で、単に人を育てるのではなく“未来を託す”ための場所として、このアカデミーは立ち上がったと話す。

 LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン合同会社 職務執行者社長のノルベール・ルレ氏も、アカデミーへの期待を隠さない。「昔、時計を分解して、また組み立てようとしたことがあります。たった一度の挑戦でしたが、2時間以上かけても結局うまくいきませんでした」と、笑い交じりに語った。「時計のなかには、目に見えないほどの技術が詰まっています。それを守り、つないでいくこと。それがこのアカデミーの役割なのです」


イノベーションの芽を育てるということ

 このアカデミーには、もうひとつ特筆すべき特徴がある。それは単なる職業訓練にとどまらず、未来をつくる学びが含まれていることだ。2年間のプログラムのなかには、語学や技術だけでなく、“イノベーション”の時間も用意されている。たとえば、LVMHグループに属する複数のブランドを横断し、それぞれの独自機構や開発背景に触れる機会がある。既存の枠を超えて時計を新たな視点から考える姿勢を育てることも、このプログラムの重要な要素のひとつだ。つまりここは、新しい時計の芽を育てる場所でもあるのだ。

 「若い人たちのひらめきから、これまでになかった時計が生まれるかもしれません」と、ルレ氏は期待を語った。古くからの技術や知識が、次世代の創造力を支える土台になっていることがわかる。

 LVMH Watches & Jewelry ウォッチメイキング アカデミーは、時計づくりの技術と姿勢を次世代へと継承する場として、今後も体制の強化を図っていく計画だ。設立初年度の取り組みは始まったばかりだが、2年間のプログラムを通じて、時計産業に携わる人材を継続的に育成していく方針である。

 4月21日(月)に行われた開校式と合わせて施設内も公開され、トレーニングルームや工具、機械設備などが紹介された。以下では、その様子を写真で紹介したい。

LVMH Watches & Jewelry ウォッチメイキング アカデミーの開校を記念して行われたテープカットセレモニー。グループ傘下メゾンのトップが一堂に会し、新たなスタートを祝った。

ムーブメントの細かなパーツが、品番ごとにラベリングされて並ぶ保管棚。

外装部品のサテン仕上げを行うサンドブラスター。

歯車が並ぶ輪列とそれが作用する仕組みを目で見て学べる実習用教材。時計の基本構造がひと目でわかる。

Photographs by Masaharu Wada, Yusuke Mutagami