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昨夜、ジュネーブで開催されたフィリップス(Bacs & Russoと共同)の“Decade One”オークションにおいて、ステンレススティール製パテック フィリップ Ref. 1518(ケース番号508'473、ムーブメント番号863'193で、最初に製造されたSS製Ref.1518だと広く信じられている)が、1200万スイスフラン(日本円で約22億8900万円、手数料込みで1420万スイスフラン/日本円で約27億1100万円)で落札された。これにより、オークションで販売されたヴィンテージパテック フィリップの腕時計として史上最高額を記録した。この落札結果はパテック収集だけでなく、より広範な時計市場にとっても重要な瞬間となる。ただしこの結果は、2017年に1780万ドル(当時のレートで約20億円)で落札されたロレックス デイトナ “ポール・ニューマン” Ref. 6239が保持するヴィンテージ腕時計の記録を(編注;ドル円に換算すると1760万円であるため)上回ることはなかった。
会場の様子-1420万スイスフラン/日本円で約27億円への道のり
ロット23の競売が始まるずっと前から会場は期待に満ちあふれ、緊迫していた。異例の展開として、ロット23、すなわちSS製Ref.1518についてはオンライン入札が行われないことが発表された。電話入札者と会場にいる人々だけが競争できることになった。オークションマスターのオーレル・バックス(Aurel Bacs)氏が時計の紹介を終える前でさえ、会場に座っていた入札者が“800万スイスフラン(日本円で約15億2600万円)”の叫びで入札を開始した! 全部で5人の入札者がこの“トロフィー”を競い、3人が会場でパドルを上げ、2人が電話で参加した。勝者である1200万スイスフラン(日本円で約22億8900万円)を入札した電話入札者がトロフィーを獲得するまでに、丸10分が費やされた。
会場にはディーラー、コレクター、愛好家、時計師の著名な面々がそろっていた。彼らのなかにはジュネーブを拠点とする時計師 F.P.ジュルヌ(F.P.Journe)、ディーラーでコレクターのダヴィデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)氏(彼は以前、知られている4つのSS製の個体それぞれを扱い、販売した唯一の人物だ)、時計学者でコレクター、そしてこのリファレンスの元所有者であるヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)が含まれた。この個体は以前にも2016年に同じオークションハウスで販売されており、時計の歴史のなかで最も望まれ、収集価値の高い時計の一例である。言うまでもなく、会場のほとんどの人々(そしてライブストリームで視聴している人々)はこの熱狂的な雰囲気を味わうために集まっていたのだ。
要点-パテック フィリップ SS製 Ref.1518
新しい記録が樹立されるまでオークションを追っていなかった人のために説明しよう。Ref.1518は、パテック フィリップがこれまでに製造した最も重要なリファレンスのひとつである。1941年に発表されたこの時計は世界で初めて量産された永久カレンダー・クロノグラフウォッチであり、何十年にもわたるブランドの高度な複雑機構を支える技術テンプレートとなった。ほとんどのRef.1518はイエローまたはピンク ゴールドでつくられた。当時、SS製の個体はほとんど聞いたこともなく、今日ではわずか4本しか公に知られていない。このリファレンス、508'473のケース番号、そしてケースバックの内側に小さな“1”を備えるこの個体は、4本のうち最初に製造されたものとして広く受け入れられている。アーカイブ記録によるとこれは1943年に製造され、1944年2月22日にハンガリーのブダペストで販売された。1940年代初頭のパテック フィリップのSS製永久カレンダー・クロノグラフは矛盾の産物である。ブランドの最も崇高な複雑機構が、最も実用的なケース素材で実現されたのだ。それは本来存在すべきではない時計であり、まさにそれが裕福なコレクターにとってきわめて特別な理由である。
マークのフィリップスのオークションプレビューから、SS製Ref.1518の写真。
これはすでに記録を樹立している時計であったが、2016年の時計市場は今日とは大きく異なっており、過去10年間でこの種の時計にさらに注目が集まっている。今回の結果は、武力紛争や米国の貿易・経済政策の変化による地政学的な混乱にもかかわらず、最も希少なヴィンテージウォッチ市場が堅調に推移していることを示唆している。また、パテック フィリップ ヘンリー・グレーブス・ジュニア スーパーコンプリケーション懐中時計(Henry Graves Jr. Supercomplication pocket watch)が2014年11月11日にジュネーブのオークションで2323万スイスフラン(当時のレートで約24億円)で落札されたことも重要だ。
以下はミッドセンチュリー期に製造されたSS製で、確かな来歴を持つ時計の継続的な魅力を示唆する、以前のトップ5の腕時計のオークション結果の内訳である。また、もしこのリストだけを見てほかに何も読まなかった方へ補足すると、今回の記録を樹立したRef.1518は以前、2016年のオークションで第4位であったことも事実である。ご参考までに。
- 1.パテック フィリップ グランドマスター・チャイム Ref.6300A-010: クリスティーズ(ジュネーブ)― 2019年11月9日―3100万スイスフラン(当時のレートで約34億円)
- 2.ロレックス デイトナ “ポール・ニューマン” Ref. 6239: フィリップス(ニューヨーク)―2017年10月26日―1775万ドル(当時のレートで約20億円)
- 3.パテック フィリップ Ref.6301A Only Watch―2024年5月10日―1570万スイスフラン(当時のレートで約26億9800万円)
- 4.パテック フィリップ Ref.1518(SS製): フィリップス(ジュネーブ)―2016年11月12日―1100万スイスフラン(当時のレートで12億2000万円)
- 5.パテック フィリップ Ref.1518 (PG製、モハメド・テューフィック王子): サザビーズ(ニューヨーク)―2021年12月9日―957万ドル(当時のレートで約11億5000万円)
補足: チャリティ目的のOnly Watchで販売された
SS製Ref.1518をさらに深く掘り下げたいだろうか? 我らがベン・クライマーによる2016年のIn-Depth記事では既知の4つの個体すべてを網羅し、このリファレンス(特にSS製)がコレクターにとって魅力的な理由を説明している。
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