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これほどの連帯を生み出せる物は、そう多くはない。ステンレススティール(SS)製パテック フィリップ Ref.1518はまさにそのひとつだ。世界でわずか4本しか確認されていない、史上初の量産型永久カレンダー・クロノグラフのスティールモデルの1本がフィリップスとバックス&ルッソの共催によるオークションに出品される前夜、同オークションハウスは時計収集の世界で名を馳せる人物たちを招き、約1時間にわたるディスカッションを開催した。
フィリップスは、時計部門の開設から10年を記念し、“Decade One”と題されたオークションの準備期間に設けられたこの集まりを記録したビデオを公開した。テーブルには、長年このリファレンスを所有するためにしばしば競い合ってきたパテックの専門家、研究者、そして愛好家の錚々たる顔ぶれが揃っていた。彼らのなかには、SS製Ref.1518の希少な個体を発見し、市場にもたらした初期のトレジャーハンターのひとりであるパテック収集家、ディーラー、著者、そして元オークショニアのヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)が含まれる。クロット氏にとってこのリファレンスは、より広範な市場を測るための優良株あるいはベンチマークとなったと彼は円卓会議のあとにHODINKEEに語った。「私にとってそれは資産となりました。株式市場のように、相場を体得できる場所です」とクロット氏は述べる。
また、テーブルにはモナコ・レジェンド・グループのダヴィデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)氏も出席している。彼は、SS製Ref.1518の知られている4本のすべてを扱い販売した唯一のコレクター兼ディーラーだ。「私は、これらの時計が収集市場でいかに重要であるかをコミュニティが理解するのを手助けしています。なぜならばこれらの時計の価値は過去20年間で大きく変化し、今日これらは真に象徴的な資産であり、きわめて重要な金融資産だからです」とパルメジャーニ氏は述べる。掛け金の高いドラマに加えて、パルメジャーニ氏は、現在知られているほかの3本のSS製Ref.1518のうちのひとつを、彼のオークションハウスを通じたプライベートオークションで販売している。「あなたは、この時計が起業家にとって次の20年間でどのような投資になるかを考慮しなければなりませんし、この時計がそれを所有する余裕のある誰かに与える喜びを考慮しなければなりません」と彼は付け加える。
今週末のDecade Oneオークションのロット23としてフィリップスが出品しているSS製のパテック フィリップ Ref.1518。
ジョン・リアドン(John Reardon)氏はヴィンテージパテックに関するすべてのことの専門家であり、著名な研究者、ディーラー、そしてコレクタビリティ(The Collectability)の創設者である。彼はクロット氏、パルメジャーニ氏、オーレル・バックス(Aurel Bacs)氏、そしてモデレーターのニック・フォークス(Nick Foulkes)氏との議論に参加する機会を得られ、夢が叶ったと述べる。「私たちはSS製Ref.1518を囲んで座り、それに値するピースに敬意を表しています」と彼は言う。「そして確かに、それは時計界の王族の神殿にあるのです」。リアドン氏がSS製Ref.1518を実際に手にしたのは初めてであり、彼は自身が売買したイエローゴールドの個体とは異なるケース構造に特に衝撃を受けたと述べる。「それははるかに厚みがありました。工業的という言葉を使いたくありませんが、これら2本を注文したハンガリーの人にとってこれはツールウォッチであったことが想像できます」と彼は言う。これは1944年にブダペストの宝石商に納品されたとされる、SS製Ref.1518の最初の2本を指している。
最初の個体はフィリップスで出品される時計で、タイムピースを販売するオークショニアであるバックス氏が永久カレンダー・クロノグラフにとっての“アダムとイヴ”の瞬間と呼ぶものだ。50分間の円卓会議のあいだ、参加者は知られている本数が300本未満で、SS製はわずか4本しかない1518というリファレンスを研究、探求、売買してきた数十年の歴史を共有し、それについて議論する。また、彼らが“生きたオブジェ”と呼ぶものの管理に関わることや、収集品のコンディションを維持するためにエナメルダイヤルを“洗う”ような方法と実践についても意見を交換する。それは、最高レベルの収集の現状についてのきわめて詳しい議論だ。
有識者が招集される。Photo credit Phillips / Jess Hoffman
この特定のSS製Ref.1518が最後にフィリップスのオークションに出品されたのは2016年で、当時の腕時計の売却価格として記録となる1100万スイスフラン(当時のレートで約12億1000万円)だった。今回のオークションでは800万スイスフラン(日本円で約15億2000万)を超える推定落札価格が設定されており、この重要なイベントの結果は今後数年間のオークション市場のトーンを決める可能性が高い。
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