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Four + One ブラック・プーマズの共同創設者は、ギターをロレックスのように大切に扱う

エイドリアン・ケサダ氏は、バラエティ豊かな時計コレクションと希少なギブソンを携えて撮影にやって来た。

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本稿は2022年6月に執筆された本国版の翻訳です。

Photos by Jasmine Archie

エイドリアン・ケサダ(Adrian Quesada)氏は、ソウルフルなサイケデリックロックグループ、ブラック・プーマズのメンバーである。音楽には本物のアナログエネルギーが注ぎ込まれ、ケサダ氏自身の強力なプロデュースによってひとつにまとまっている。彼はソロ名義でも、また別のバンドであるグルーポ・ファンタズマを通じても、20年近くにわたり音楽界の中心的な存在として活躍してきた。これまでにグラミー賞に8回ノミネートされ、1回の受賞を果たしている。彼の音楽には懐古的な感性が織り交ぜられており、それは彼が古いもの、すなわちヴィンテージギターやヴィンテージレコーディング機器、ヴィンテージウォッチを愛していることに由来する。

 「時計に関してはまだ新参者ですが、時計にはこだわっていますね」と、ケサダ氏はテキサス州オースティンのレコーディングスタジオから語る。しかし彼にとって何かに夢中になるのは珍しいことではない。「私は物事に執着するんです」と彼は言う。「あるアーティストのあまり知られていないレコードをひとつ聴いたら、それを全部探し出すまでひと晩中起きているほどです」

Adrian Quesada

 彼は友人たちの言葉をきっかけに、時計が自分の趣味だと気づいた。「大学時代の友人に“君は本当にアクセサリー好きだね”と言われて、“どういう意味?”と思いました」

 よく考えてみると、その言葉は本当のことだと思ったという。「私はいつも時計を、ちょっとした自己表現のひとつとして愛していました」とケサダ氏は言う。「コレクションしようと思ったのはつい最近のことです」。彼の最初のお気に入りはクラシックなタイメックス ウィークエンダーで、いつも身につけており、毎年新しいものを購入していた。

 「今は時計についてさらに学んでいます」と彼は言う。「ロレックスとカルティエ以外はあまり知りませんでしたが、今はもっと学びたいんです」

Group of watches

 彼はコレクターとしての初期段階に、より深く踏み込んでいるようだ。「こんなに小さなアクセサリーで自己表現できるそのパワーが気に入っています」とケサダ氏は言う。「音楽的にもそれは通じると思います。やりすぎることなく、人々が自分のところにやって来て、そのことに気づいてくれるようなアプローチが好きなんです」

 ケサダ氏の時計は多様で、ほとんどがヴィンテージのものであり、そこにモダンな時計がひとつ加わっている。もちろん、彼のFour + Oneは彼にとって特別な存在となったある楽器がなければ完成しない。エイドリアン・ケサダ氏のコレクションを堪能あれ。


彼の4本
ロレックス デイトジャスト
Datejust

 家宝の持つ力は否定できない。この場合、家族の時計がケサダ氏の将来の収集の旅の出発点となった。

 「本当に私を夢中にさせた発端は、父がくれたこの時計だと思います」と、ケサダ氏はデイトジャストについて語る。「パーティで母方の父が手首からロレックスを外して私の父に渡したという話をいつもしていたのを覚えています。父はいつも私にそのロレックスを見せてくれました」

 ケサダ氏は、子どものころにその時計を愛おしそうに見ていたことを覚えており、父親がそれを身につけていた姿を鮮明に記憶している。「何年も前、父はそれを私にくれて“おまえに持っていてもらいたい”と言ったんです」と彼は言う。「そして今、私は思うのです。ロレックスを持っていると。これはすごいことでしょう?」

Datejust

 しかし、彼がロレックスを所有しているという事実を受け入れるには時間がかかった。「この時計を長いあいだ着用していました」と彼は言う。「私にとってとても大切なものだったので、毎日は着用したくなかったのです。だから小さなタイメックス ウィークエンダーに戻り、特別なときだけこれをつけていました。でも今では、これこそが定番だと思います。年を重ねるにつれて、これが毎日使える時計だと感じるようになりました」

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 もちろん、すべては状況次第である。そして彼は毎日使いたいと思っているが、生活がそれを許さない。「ツアーで頻繁に移動するため、これを持ち歩くのはちょっと危険な気がします」と彼は憂鬱そうに言う。「ホテルに忘れ物をしたこともあるし、これをなくしたらどうしたらいいか分かりません。高価なものをなくすのと、2世代にわたって受け継がれてきたものをなくすのはまったく別の問題です。だから、この時計はツアーには向かないんです」

シャイノラ ランウェル クロノグラフ
Shinola

 ロレックスからシャイノラへ移るのは極端な対照と言えるかもしれないが、それは収集がいかに主観的であるかを物語っている。そしてこのシャイノラは、ケサダ氏がコレクションのなかで最も頻繁につけている時計だ。「これはどちらかというと、私が毎日つけているものです。よくできているだけでなくて本当につけ心地がよく、頑丈なんです」と彼は話す。「ただ失くしたとしても心臓発作を起こすことはないでしょう。なぜなら交換できるからです」

 シャイノラは熱心な愛好家のあいだでは賛否が分かれているが、ケサダ氏は集団意識に流されることなく、単に自分が好きな時計を選んでいる。それは我々全員への教訓でもある。

グリュエン プレシジョン
Gruen

 「この1年で私がいちばん最近やったことは、ジェームズ・ボンドの時計について読むことです」とケサダ氏は子どものような笑顔で言う。「これはグリュエンという時計で、ショーン・コネリー(Sean Connery)が初めてつけた時計、プレシジョンです。これがまさにそのモデルだとほぼ確信しているし、ジェームズ・ボンドの映画に登場した最初の時計だったと思います。その映画には2~3本の時計が登場しますが、これがそのうちのひとつだと思います」

 この時計が映画的な真正性を持っているかどうかにかかわらず、ケサダ氏はその時計自体の価値を気に入っており、小振りな時計の魅力を理解するのにも役立っている。「これは小型です。でも、小型の時計が再び流行していると知りました」と語る。確かにそうだ。

 「これは私が最近購入したものです」と彼は話す。「映画の影響力がこれほど大きいとは信じられないことです。そして、私が見たすべてのボンドウォッチのなかでもとくにこの時計に心を奪われました」

タグ・ホイヤー アクアレーサー クロノグラフ
TAG Heuer

 ヴィンテージの定義にはさまざまな方法がある。一般的なヴィンテージ、つまり50年代から80年代の時計や、個人的なヴィンテージアイテムなど自身の人生の瞬間を思い起こさせるものもある。このタグ・ホイヤーは、ケサダ氏にとって後者に該当する。「高校生のときに祖父からもらった、90年代の曲線的なリンクが付いたタグ・ホイヤーを今でも持っています。4本の内の1本はそれを選ぶつもりでしたが、実際によくつけているのはこれなんです」と彼は言う。

 これは彼が、我々と同じようにインターネットで見つけた最近の購入品だ。「この時計は数年前に買いました」と彼は思い出すように言った。「時計を探し始めたときにこのブレスレットを見つけて、すごくユニークで少し大胆だと感じました」

 この興味深いターコイズがついたフレックスブレスレットは、彼が時計を買ったときに付いていた。そしてそれに注目したのは彼だけではないようだ。「私がつけていると、いちばん注目されるのはこの時計なんです」と彼は話す。

 しかしすべての始まりは、祖父が彼に買った最初のタグ・ホイヤーにさかのぼる。それが彼の心にこのブランドを根付かせた。「高校生のとき、タグ・ホイヤーは世界で一番の時計だと思っていました」と彼は言う。


もうひとつ
ギブソン ES446
Gibson

 ミュージシャンが楽器を選ぶことは想定できるだろう。ケサダ氏の場合は、偶然彼のもとに舞い降りたヴィンテージギターだ。「これは本当に短命なモデルで、偶然見つけたんです」と彼は言う。「ギブソンからいくつかギターをもらったのですが、私のギターは盗まれてしまったため、当面のあいだはショールームに来て貸し出し用を借りるように言われました」

 ショールームに足を運んだとき、壁に掛かっていたこのギターを見つけて、それを持ち帰った。しかしES446は希少なため、本来貸し出し用ではなかったことが後日ギブソンからの電話で伝えられた。「その時点で、私はこのギターに惚れ込んでいたので、購入できないか尋ねました」と彼は話す。「最初は少し抵抗されましたが、1、2年が経って再び購入できるか尋ねたんです。返すなんて考えられなかったけれど、最終的に自分の物にしていいと言われました」

 時が経つにつれて、このギターとの強い絆が生まれた。「ギターを弾いて30年になるけれど、こんな感覚になったのは初めてです」と彼は言う。「このギターは、私にとってロレックスのような存在なんです。ツアーではもう使っていないけれど、レコーディングでは大切に使っています」