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ジャン-クリストフ・ババン氏は、LVMHのポートフォリオのなかで最も多様なラグジュアリーブランドのひとつであるブルガリを、2013年から率いている。その前は、タグ・ホイヤーの指揮を執っていた62歳のCEOだ。ローマの有名な宝飾品会社を率いるあいだ、ブルガリはホテルをオープンし、世界のどの企業よりも野心的な時計製造を行ってきた。ジュネーブ・ウォッチ・デイズの会期中、我々は彼に話を伺うことができた。
HODINKEE: かつてブルガリは、ジュエラーが時計を少し作っているというイメージがありましたが、そのような時代は終わったようですね。ブルガリは、ダニエル・ロートとジェラルド・ジェンタという小規模な歴史的独立ブランドを、どのようにして今日のような時計製造にまで成長させたのでしょうか?
ババン: ジェラルド・ジェンタとダニエル・ロートをを買収したのは、ブランド自体が目的ではなく、当時一部の愛好家のあいだで有名だったからです。しかし、氷山の一角に隠された知識や卓越した技術は、非常に優れたものでした。ブランドではなく、我々はノウハウを手に入れたのです。
このノウハウにより、ブルガリは徐々に独自の洗練されたムーブメントを学び、形にすることができました。すなわち、2014年に発表した初のフィニッシモムーブメントは、ロート社やジェンタ社の機構のコンポーネントや影響を一切受けていない、100%ブルガリ製のムーブメントです。しかし、これが可能になったのは、2社のノウハウを獲得したからであり、また、それらの会社の優秀な時計師やウォッチマスターを組織に残したからです。オクト フィニッシモ サーガの一部を説明すると、時計製造の知識と正統性を加速させたことになります。
HODINKEEをご覧になっている方には、ブルガリの時計のなかでもオクト フィニッシモが最もよく知られているのではないかと思います。様々な分野で事業を展開しているブルガリにとって、この時計はどのような意味を持つのでしょうか? このオクト フィニッシモは愛好家のためなのか、それともブルガリ全体のスター商品なのでしょうか?
腕時計では、セルペンティと並んでスター商品であることは間違いありません。男性にとってのアイコンです。セルペンティは女性のためのアイコンなのです。そして、この2つはおそらく、時計製造において、ブルガリだけでなく、時計業界を代表する最も差別化されたユニークなアイコンです。レディスでもメンズでも、この2つのアイコンに似た時計はありませんからね。セルペンティとオクトは、ローマとローマの歴史から生まれたイタリアンデザインと、スイスのエンジニアリングとのユニークな融合という、ブランドの特徴を再定義するものであり、私たちにとって非常に重要なものです。
ブルガリは、さまざまなカテゴリーで商品を展開していますよね。時計はそのうちのひとつに過ぎません。ブルガリにとって最も重要な戦略的カテゴリーは何で、それぞれにどの程度の重点を置いていますか?
明らかにジュエリーはブルガリのなかでキングであり、クイーンであり、ときには独裁者でさえあります。セルペンティを考えてみてください。時計もあり、バッグもあります。ディーバを考えてみてください、あれも時計です。ジュエリーは、ブルガリで最も有名なカテゴリーであるため、他のカテゴリーのコードやスタイルを決定しているのです。ジュエリーのコードを他のカテゴリーに用いることで、ブランドやジュエリー以外のカテゴリーの正当性を高めることができます。そういう意味では、ウォッチの開発がジュエリーの開発とは独立して行われている主要な競合他社(カルティエ)とは大きく異なります。ジュエリーのアイコンはジュエリーであり、ウォッチのアイコンはウォッチなのです。
ブルガリでは、ブランドの理解やブランドの読みとり方が、主にローマの物語になるように、カテゴリーを超えた取り組みをしています。実際、私たちのすべてのスタイルは、芸術性や建築性など、ローマの影響を受けているのです。そして、あるコードが強い場合、私たちはそれを時計として、またバッグや財布として、できる限り表現しようとしています。
オクトのライバルは?
オーデマ ピゲ、ウブロや、IWC、ロレックスなどがあります。メンズウォッチでは、ジュエリーほど明確な競合はありません。ジュエリーでは、カルティエという競合他社がいます。エントリージュエリー、ミディアムジュエリー、ハイジュエリーの3つです。そして、私たちのスタイルは少し違います。しかし、カルティエのラブと我々のブルガリ・ブルガリを見ると、顕著な違いはありません。
時計の場合は、市場に出回っているブランドの数が圧倒的に多いので、より難しいですね。世界的なジュエラーは数が少ない。世界的時計メーカーはたくさん存在しています。フィニッシモには本当の意味での競争相手はいません。ピアジェが競合だと言う人もいますが、ピアジェはよりクラシカルなブランドだと思われています。誤解の原因は、ピアジェも極薄の時計を販売していたことに関係していると思いますが、ピアジェに惹かれる人とオクト フィニッシモに惹かれる人は、通常、まったく異なるのではないでしょうか。
オクト フィニッシモについては、過去10年間で最も成功したブルガリ製品だと思いますか?
時計では、率直に言って、最も開発に成功したのはセルペンティでした。2番めに成功したのはオクトですが、オクトは販売数でも金額でもセルペンティのようなレベルには達していません。それもそのはず、私たちはジュエラーとして女性をターゲットにしているので、メンズウォッチよりもレディスウォッチの方が売れる確率が高いのです。
これこそ、我々がマルチブランド店の販売網を開拓する理由です。なぜなら、マルチブランドの小売店は女性よりも男性に人気があり、オクトやブルガリ アルミニウムは、当社のメインブティックよりも男性とのタッチポイントが多いからです。確かにオクトは大きな成功を収めましたが、ランキングでいえば、セルペンティの方がオクトよりも大きいのです。
あなたはジェラルド・ジェンタを何度も復活させていますが、一度に1モデルだけという限定的なものでした。その点では、もっと大きなことを期待してもいいのでしょうか?
数年前、ブルガリとしてオクト フィニッシモの成功を確信した私たちは、そろそろジェラルド・ジェンタをブランドとして復活させる時期だと感じました。そこで非常に鋭く、ニッチなアプローチでそれを行うことにしました。
その目的は、第二のブルガリを作ることではなく、ジェンタのシグネチャーに情熱を傾ける少数の愛好家に評価される、小さくて収益性の高いニッチな領域を作ること。そして、ジェンタのシグネチャーは、2つの要素で構成されていると考えました。1つはアリーナ スポーツのケースです。私たちは、時計製造において、このケースはこれまでにデザインされたなかで最も興味深いもののひとつだと考えています。これは、ラウンド型の時計としては非常に強い血統をもっています。もうひとつは、ジェンタの特徴であるレトログラード。このフレームの中でブランドを再スタートさせることにしました。まず、アニバーサリーの50周年記念プラチナモデルを発表。そして昨年、チタン製のアリーナ バイ レトロ スポーツを発表しました。そして今年は、レジェンドであるミッキーマウスのカムバックです。
ウォルト・ディズニーとの契約は、一回限りの契約ではなく、今後もウォルト・ディズニーのキャラクターを使用していくための契約なので、これが最初の展開となります。ウォルト・ディズニーのキャラクターをもっと使っていこうという契約なのです。コロナウィルス後の最初の作品は、楽しいものにしたいと思いました。昨年のチタンに代表されるより時計的なコレクションと、ウォルト・ディズニーのキャラクターを使った遊び心のある楽しいコレクションです。
ここ数年、パピヨンをはじめとするダニエル・ロートのエレガントな作品が見直されていますね。ジェンタと同じように、ロートでも何かやってみたいと思いませんか?
ちょっと違うかもしれません。むしろ、ロートのアイコンをブルガリで使いたいと思っています。オクト ローマ セントラル トゥールビヨン パピヨンは、明らかにロートへのオマージュでありますが、ブルガリのものです。1つのブランドを成功させるのは難しく、2つのブランドを管理するのはさらに難しく、今はジェンタがあります。3つのブランドを管理するのは、ブルガリには荷が重いと思います。ですから、今はロートの権利を守っていますが、ジェンタを復活させるように、ロートを復活させる短期的なプロジェクトはありません。
もしブルガリが存在しなかったら、どのような時計をつけますか?
すごく正直に言ってもいいですか? 私はウブロのフュージョンを買うと思います。ビッグ・バンは私には大きすぎますが、クラシック・フュージョンは私の好みですね。
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ブルガリはLVMHグループの一員です。最近、LVMHラグジュアリー・ベンチャーズがHODINKEEの少数株主となりましたが、HODINKEEは完全に編集の独立性を保っています。
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