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Introducing ザ・シチズン30周年記念モデルに、日本の秋・冬を表した新作が登場(編集部撮り下ろし)

土佐和紙ダイヤル上に四季の風景を表現した30周年記念限定モデルに、情緒豊かな秋冬モデルが加わった。

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クイック解説

ザ・シチズンは1995年以来、シチズンにおける最上級ブランドのひとつとして存在感を示してきた。その根底には「正確な時刻を刻み続けること。時刻を見やすく伝えること。その使命を長く維持すること」という至上命題があり、これを実現するためにエコ・ドライブやスーパーチタニウム™といった同社を代表するテクノロジーを積極的に取り入れた時計製造を続けてきたのだ。そんなザ・シチズンにとって30周年の大きな節目となるアニバーサリーイヤーを祝うべく、今年のはじめからいくつかの記念モデルを発表。今年の3月に先んじて2本が発表されたアイコニックネイチャー コレクション(Iconic Nature Collection)の新作もそれにあたり、この9月3日(水)にも新たに2本が追加された。

9月3日(水)リリースとなった、ザ・シチズン30周年記念モデルの秋冬バージョン。

 アイコニックネイチャーコレクション自体は2022年にスタートしたもので、古く日本の詩歌にうたわれている情景を文字盤で切り取ったモデルをリリースし続けている。第3弾となる今回のコレクションでは、日本の古典に描かれる“をかし”の精神を和紙文字盤の上に表現。無常を感じさせる切なさや儚さを示す“あはれ”とは異なり、日常のなかに潜む喜びや心が華やぐ瞬間を捉え、それをデザインに昇華している。

 今年3月に発表された30周年記念モデルの春夏バージョンも、まさにその“をかし”を映し出していた。デザインのインスピレーション源とされたのは、平安時代中期に成立した日本最古の随筆である「枕草子」。春はあけぼの、から始まる、著者の鋭い感性が切り抜く日本古来の四季が情緒豊かに記された古典の傑作である。ザ・シチズンではそれぞれの季節描写に応じ、土佐和紙の文字盤を土台にしてそれらの風景を38.3mm径の小振りな時計に落とし込んだ。たとえばAQ4106-00Aは、土佐和紙のなかでも長い繊維を漉き込んだ“雲龍紙”を用い、春の明け方に空を漂う柔らかな雲や霞を表現。これに対し、AQ4100-22Lは藍染和紙に重ねたグラデーションによって、夜の川面に揺らめく月明かりを描き出している。さらに、水面を渡る蛍の軌跡をゴールド針で示すといったディテールに込められたさりげない遊び心も、“をかし”を感じさせる要素となっている。

左から春の明け方の情景を表現したAQ4106-00Aと、夏の夜の情景を表したAQ4100-22L。

 この度発表された2本の新作についても、順に見ていきたい。まずAQ4103-16Wは、秋の夕暮れが見せる一瞬の風景、沈む夕日で山の端がきらめく様子を黒和紙に散らした金粉で描いている。さらにその上から12時方向に向かってブラウンに色づく上板を乗せることで、移ろいゆく自然の美しさを金箔による“かすれ”と“グラデーションによる“にじみ”で表現しているのだ。なお、ケースにはメンズモデルとして初めて、2025年上旬に登場したばかりの「デュラテクトアンバーイエロー」を採用した。アンティーク調の落ち着いたゴールド色を目指して開発されたというだけあり、深まりゆく秋の趣に見事に調和している。

 一方のAQ4100-22Aは、少しずつ夜が明けていく冬の朝、その足元に広がる雪景の輝きを、白和紙と“砂子蒔き”によって散りばめられたプラチナ箔で映し出した。砂子蒔きとは、細かく砕いた箔を振りまいて装飾する伝統技法であり、本作でも職人の手作業によって仕上げられている。加えてこのモデルにもAQ4103-16W同様、上板のグラデーションによる“にじみ”が重ねられており、写真で確認すると6時方向に向かってわずかにグレーを帯びていく様子が見て取れる。まるで朝の光に照らされた夜明けの境目を垣間見るような、繊細で神秘的な表情だ。秒針には、厳寒の朝に熾す木炭の灰色がイメージされている。

秋の夕暮れ、山際に光が差す一瞬を捉えたAQ4103-16W。

冬、早朝の雪景色を文字盤に映したAQ4100-22A。

 リューズとケースバックには、ザ・シチズンのシンボルであるイーグルマークを刻印。そしてそのケースバックのなかには、年差±5秒の高精度を誇る光発電エコ・ドライブ搭載のCal.A060が内蔵されている。同ムーブメントはパーペチュアルカレンダー機能も備えており、わずかな光で半永久的に動き続けるエコ・ドライブと組み合わせることで、手間を要さず長く時をともにすることができる1本へと仕上がっている。そこにはまさに、イーグルマークが象徴する「身に着ける人に永く寄り添う」という理念が息づいている。

 発売日は両者ともに2025年10月9日(木)。価格はAQ4103-16Wが47万3000円で、AQ4100-22Aが45万1000円(ともに税込)、世界限定各400本となっている。


ファースト・インプレッション

2022年に発売された、アイコニックネイチャーコレクションの第1弾。左が春をイメージした“息吹”で、右が夏をイメージした“紺碧”。

シチズンがアイコニックネイチャーコレクションで描き続けてきた日本の風景は、3年の歳月を経てより独自の道を歩み始めているように感じられる。2022年のコレクション始動直後には、ザ・シチズンは座敷の借景窓(庭や山水を窓枠に映し、四季の趣を絵画のように楽しむ日本独自の趣向)をモチーフに、和紙ダイヤルを通して四季の情景を切り取ったモデルを発表していた。当時はモチーフがやや抽象的であったが(たとえば春をイメージした“息吹”AQ4100-06Wは萌え出る新緑を、夏の“紺碧”AQ4100-14Lは窓から望む夏空と海、そして雲の溶け合う様子を映していた)、アイコニックネイチャーコレクションの第3弾となる今回は「枕草子」という日本人にとって馴染み深い古典を媒介にすることで、“人”そのものや人々が営む“生活”の気配が漂う、温かみのある情景を描きだしている。雄大さや厳しさといった自然の圧倒的な姿や、特定の場所でしか目にできない絶景ではなく、借景窓に見立てた文字盤から日常の外に広がる風景を静かに切り取るような手法は、僕が知る限りほかで見ることがない。日々の暮らしのなかで、四季とともに移ろう景色に喜びを見いだし、心を揺さぶられる繊細な感覚。それは平安の時代から1000年のあいだ、日本人が変わらず大切にしてきた宝である。

AQ4103-16W

 今年リリースされた4本のアイコニックネイチャー コレクションのなかでも、僕は今回の新作2本にとりわけ心引かれた。AQ4103-16Wの黒和紙文字盤に散らされた金箔は、一見して何を示すものなのか即答することができなかった。しかし本作に関する説明を聞いたうえであらためて向き合ってみると、少しずつその姿が浮き上がってくる。遠目にはごく控えめであり、近づいても“かすれ”の妙により過度に主張することはない。手首の上ではデュラテクトアンバーイエローと黒和紙が織りなすシックなコントラストが際立ち、上品な佇まいを演出してくれる。なお、文字盤に描かれた山々は特定の場所を示すものではなく、おそらく「枕草子」が綴られた時代に窓辺から望まれていたであろう京の里山を想像したものだという。見慣れた風景であっても、時の移ろいのなかで思いがけず美しく色づき、心を奪われる瞬間がある。本作は、そうした日常に潜む稀有なひとときへと目を開かせてくれる、情趣豊かな1本だ。

 そしてAQ4100-22Aは、体の芯まで冷える冬の早朝とそこに差し込む柔らかな陽光との対比を、プラチナ箔と淡いグラデーションで鮮やかに映し出している。さらに、白和紙の文字盤とシルバーに輝くデュラテクトプラチナの組み合わせは、アイコニックネイチャー コレクションの4本のなかでもとりわけ手に取りやすい。そのうえで、冬の朝の静けさと光の温もりというデザインコンセプトを調和させているところに、この時計ならではの魅力がある。この時計を手首に巻き、じっと見つめていると、以前里山の古宿で迎えた冬の朝を思い出す。木戸を開けた先で広がっていた、朝日を受けて照り返す雪明かりが、目の奥によみがえってくるようだった。

 この2本に関してはどちらが好みかと聞かれると、少し困ってしまう。シックな風合いやチタニウムの分野におけるシチズンのテクノロジーをよしとするならAQ4103-16Wに軍配が上がるし、デイリーユースや見た目の洗練を求めるならAQ4100-22Aを選びたい。季節感の表現という点ではそれぞれで十分情緒的だ。もし今後手に入れる人がいるなら、どちらを選んだのか理由をつけて僕に教えて欲しい。

AQ4100-22A

 最後に、時計としての汎用性についても伝えておきたい、今年のアイコニックネイチャーコレクションも従来モデル同様に、直径38.3mmと大きすぎも小さすぎもしない“ちょうどいい”サイズ感となっている。ケースにはザラツ研磨により磨かれたエッジの立ったラグを除いて目立つ主張はなく、文字盤を引き立てる借景窓の縁に徹しているような印象を受ける。総じて、日々身にまとう1本として飽きの来ない洗練されたフォルムを描いている。

 先にも触れたように、「枕草子」を題材とした今回のコレクションによって、ザ・シチズンが示す“日本観”は一層独自性を増したように思える。グローバルを意識し、象徴的な日本らしさを前面に打ち出すのも、ひとつの日本観だ。だがシチズンは、むしろ近年失われつつある四季の美や、そのなかで培われてきた感性に寄り添い、呼び覚ますような手法をとった。日本人が古来より育んできた心の機微を見事に汲み取った今回のアプローチについて、僕は非常に好ましく思っている。

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基本情報

ブランド: ザ・シチズン(The CITIZEN)
モデル名: 30 周年記念限定モデル 高精度年差±5 秒 エコ・ドライブ Iconic Nature Collection
型番:AQ4103-16W/AQ4100-22A

直径: 38.3mm
厚さ: 12.2mm
ケース素材: スーパーチタニウムTM(デュラテクトアンバーイエロー)/スーパーチタニウムTM(デュラテクトプラチナ)
文字盤色: 黒色の和紙文字盤に金箔の装飾、ブラウンのグラデーション/白色の和紙文字盤にプラチナ箔の装飾、グレーのグラデーション
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 10気圧防水
ストラップ/ブレスレット:ワニ革(LWG 認証)


ムーブメント情報

キャリバー: A060
機能: 時・分・秒表示、デイト表示、パーペチュアルカレンダー
パワーリザーブ: フル充電時約1.5年可動(パワーセーブ作動時)/
巻き上げ方式: エコ・ドライブ
追加情報:1 種耐磁、年差±5秒


価格 & 発売時期

価格: AQ4103-16W 47万3000円/AQ4100-22A 45万1000円(ともに税込)
発売時期: 2025年10月9日
限定:世界限定各400本

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Photographs by Kosei Otoyoshi