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現時点でレジェップ・レジェピ(Rexhep Rexhepi)の時計に対する需要がどれほど高いかは言詮に及ばない。もっとも、54人からなる生産体制から生み出されるのは年間にしてせいぜい60本、状況によっては50本程度に過ぎない。しかし、熱心なコレクターたちの心のなかでレジェップ・レジェピ(ブランド)が占める存在感は、その100倍の生産規模を持つマニュファクチュールに匹敵する。
実際、レジェップ・レジェピはマニュファクチュールだ。時計の各部品を自社で製造しており、そのほとんどは一般の人の目にも触れる場所にあるからだ。ジュネーブ旧市街のグラン・リュを歩けば、その多くを目にすることができるだろう。
ジュネーブ旧市街の4ブロック以内に、7つの異なる工房を構える。アクリヴィアの研究開発部門、製作、組み立ての大部分は、まさにここで行われている。
私がジュネーブに行き来するようになって以来、かねてからウォッチメイキングの首都であるこの歴史的な地区で、なぜもっと多く製造の現場がないのかと不思議に思っていた。旧市街にはM.A.D.ギャラリーのような名所があり、少し外れたところに F.P.ジュルヌもあるが、レジェップ・レジェピが旧市街に、しかも短期間で築き上げたような前例は存在しない。上の画像で見られるように、ケース製造やそれ以外の金属加工を行うマイクロメカニクス工房、時計製作工房(その上階でレジェピ氏本人はデザインと顧客応対に勤しんでいる)、ストラップ製作所(これも自社内で行われ、完全なハンドメイドである)、 Emailleurs de la Cite(自社製エナメル工房)があり、ここではブランドのすべてのダイヤルが現在製作されている(他ブランド供給分も含め!)。さらに装飾のアトリエ、そしてもちろん組み立て工房がある。
アクリヴィアは合計で7つの施設を構える。画像に写っている6施設に加え、新しくオープンした実習スペースだ。私にとって、ジュネーブ中心部との縁(ゆかり)は、レジェップ・レジェピの作品の魅力をさらに高めている。この新作のダイヤルを見れば、私が的を射ていることが理解できるだろう。
ジュネーブ中心部にある7つのアクリヴィアの工房のどれかひとつでも通りかかれば、次に何が生まれるのかと期待を込め窓のなかを覗き込む通行人の姿が必ず目に入るはずだ。
ブランドの成長は著しいものの、絶対的な規模は小さく、ここ数年は新作の発表が特に活発ではなかった。最後に発表された作品は、実質的には2023年8月に開催されたOnly Watchに向けて発表されたクロノメーター アンチマグネティック(CHRONOMÈTRE ANTIMAGNÉTIQUE)だが、これは1点のみの製作だったため、厳密には市販品とは言えなかった。その2カ月後の2023年10月、ルイ・ヴィトンとアクリヴィアのコレクションが発表された。わずか10本限定で、発売当日に50万ドル(当時のレートで約7300万円)を超える価格で完売した。そのクロノグラフ ア ソヌリはある意味で、現在展開されつつある物語を予見していたのかもしれない。レジェップ・レジェピのラインナップにおいて、初の複雑時計が発表されたのだった。
(ひとっ飛びに)未来へ目を向ける前に、過去を振り返ろう
筆を進める前に、アクリヴィアとレジェップ・レジェピの違いを明確にしておく必要がある。前者は、初期の超複雑時計を製造していた親会社だ。遡ること2013年、AK-01はBNBのエボーシュ(レジェピ氏はかつてここで働いていた)を用いて開発され、美しい仕上げのトゥールビヨン・モノプッシャー・クロノグラフが誕生した。2017年までに、AKシリーズの多くのモデルが完全自社製へと移行し、レジェピ氏が時計師としての初期から育んできたビジョンにより密に寄り添うようになった。多くのコレクターはAK-06こそが同ブランド初の自社製モデルだと考えているが、技術的観点ではAK-03が該当する。
上から順に、アクリヴィア・コレクション全体を網羅する6本の時計が並ぶ。2017年のAK-06はトゥールビヨンを搭載していない唯一のモデルであり、現在もコレクターに愛され続けている。
カリ・ヴティライネンからの呼びかけ(2015年頃)
我々がレジェップ・レジェピについて初めて記事に取り上げたのは2015年6月のことであり、この11年間で彼がこれほどのことを成し遂げたかを考えると驚嘆せざるを得ない。初のインタビュー記事はこちらから。
レジェップ・レジェピとアクリヴィアについて初めて取り上げたのは11年前で、その記事は“今カリ・ヴティライネン氏がクールだと思う若き時計師、そして誰もそれについて異論はないはずだ”という題名だった。当時レジェピ氏が発言したことの多くはすでに実現されているため、その記事を読むことを強くおすすめしたい。しかし2018年ごろ、一見シンプルに見えるタイムオンリーウォッチが時計業界を席巻するほど世界が一変するとは、彼自身も含め誰も予想できなかっただろう。その時計こそが、レジェピ氏がバーゼルワールド2018で初披露したクロノメーター コンテンポラン(CC1)だ。その作品はエナメルダイヤルを備えた38mm径モデルであり、私がこれまで見たなかで最も美しく仕上げが施され、驚くほどシンメトリーなムーブメントのひとつだった。スティーブン・プルビレント氏(Stephen Pulvirent)はこの作品を2018年のベストウォッチと評価し、その年のバーゼルワールドでは、スティーブンと私は共に、フィリップ・デュフォー氏が展示会で若きレジェップ・レジェピの作品を賞賛する姿を目撃した。
CC1のステンレススティール(SS)製プロトタイプ―当時としてもドリームウォッチに相応しい佇まいだ。
このモデルのホワイトエナメルダイヤルは自社製ではなかった。しかし数年後、その状況は一変することになる。
1年後、レジェピ氏がCC1のSS製プロトタイプを着用しているのを見た時、私たちは依然としてその魅力に心を奪われていた。ゆっくりと、しかし確実に、私が最も意見を尊重する人々の一部が、注文を通じてレジェップ・レジェピへの支持を表明し始めた。そのなかにはひっそりと支持する人もいれば、公然と表明する人もいた。だが、評判は着実に広まりつつあったのだ。
その後、コロナ禍と腕時計バブルが訪れたが、レジェップ・レジェピの台頭がそれらに大きく依拠していると言うのは彼に対して失礼だ。2023年に私が述べたように、この男はほかの誰とも違う土俵で戦っているのだ。そして私は当時も今も、彼がキャリアを通じて成し遂げることは、時計業界の未来を決定するものになると信じている。これを読めば、私の言わんとすることを理解していただけるはずだが、今回の新作について触れる前に2022年5月にリリースされた“RRCCII(レジェップ・レジェピ クロノメーター コンテンポラン II)”について少し立ち止まって考えてみる必要がある。当初はRRCCIのマイナーチェンジと見なされていたが、詳細が明らかになるにつれ(そして市場に数本出回るにつれ)、これが意味のある前進であることが明らかになった。私もその見解に大いに同意しよう。
レジェップ・レジェピのためにジャン-ピエール・ハグマン氏が製作した最初のケースは、2019年のOnly Watchに向けたユニークピースであり、画像に写っている個体は筆者所有のものだ。
2023年11月、初期生産モデルを拝見するためにレジェピ氏を訪ねたが、私が彼の壮大なビジョンと野心だけでなく、それを具現化する能力をも完全に実感し始めたのは、まさにこのRRCCIIを通じてだった。野心的な挑戦をする者なら誰でも言うだろうが、語ることと行動することは全く別次元なのだ。
その一例が、現代最高のケース職人を70代半ばの隠居生活から呼び戻し、彼と協業関係を築いたことだ。ハグマン氏が考案したケースは、2019年のOnly Watch出品で初めて披露され、その後RRCCIIにも採用された。これによりデザインの完成度が格段に向上し、私の個人的な意見ではあるが、RRCCIIを史上最も完成度と満足感が高く、あえて言えば、史上最も完璧な腕時計の1本として話題の中心に押し上げる一助となった。ローズゴールド(RG)とプラチナケースのRRCCIIに加え、ルビーをセットした12本、ダイヤモンドをセットした12本、計124本が市場に出回っており、さらに1、2本のユニークピースも存在する。これらは私が時計業界に関わって18年間で、最も話題に上った時計のひとつだ。
クロノメーター コンテンポラン II。古典的なダイヤルと、12本限定のルビーをあしらったダイヤルが並ぶ。
RRCCIIへの熱狂のなか、レジェップ・レジェピはそれまでとは全く異なる時計、クロノメーター アンチマグネティック(RRCA)を披露した。これもまたOnly Watchのために製作されたSS製のツールウォッチであり、外観、フィット感、仕上げ、そしてムーブメントのすべてが一新された。この時計こそが新作フライバック・クロノグラフと最も密接に関連していると私は考えているため、これについてはあとでまた触れることにする。とはいえ、今日に至るまでアンチマグネティックは1本しか製作されておらず、それはチャリティーオークションで売却された。将来的には量産されるはずだと断言しても差し支えないだろう。
私の手首に巻かれたレジェップ・レジェピ クロノメーター アンチマグネティック。
クロノメーター アンチマグネティックのムーブメントは、CCのどのモデルよりもはるかにインダストリアルな雰囲気を醸し出している。
アンチマグネティックが披露されてから2カ月後、レジェップ・レジェピは矢継ぎ早に次の作品を披露した。そう、彼は当時多忙を極めていた。だからこそ、今回紹介するこの新作がこれほどまでに刺激的なのだ。彼はルイ・ヴィトンとのコラボレーションを発表し、全く新しいムーブメントを搭載した10本限定モデルを世に送り出した。これは世界初となる、経過時間をチャイムで知らせるクロノグラフで、45万スイスフラン(当時のレートで約7390万円)で販売された。これは両面ダイヤル、トゥールビヨン、そしてハグマン製ケースも特徴としていた。
前回私がアトリエを訪れた際、10本限定モデルの最後の1本は仕上げの真っ最中だった。率直に言って、時計コレクターたちの多くでさえ、LVRR-01 クロノグラフ ア ソヌリの実像を完全には理解していないと確信している。レジェップ・レジェピがこれまでに製作したなかで最も興味深い技術的成果のひとつについてさらに深く知りたい方は、発売時に彼と共同開発者のジャン・アルノー氏へのインタビューを参照して欲しい。
スモークサファイア! 2026年のイースターに発売される新しいクロノグラフで、再びこれを見ることになるとは当時は思いもよらなかった。
それ以来、アクリヴィアやレジェップ・レジェピの新作は発表されていないが、これまで話したように、彼らが暇だったわけではない。冒頭で触れたとおり、同ブランドは現在、ジュネーブ中心部にある素晴らしい施設を拠点としており、受注分の大半を納品済みだ。彼らはケース製造だけでなく、エナメル加工やダイヤル製造も自社内で完結している。これについては後述する。
現行および将来の同ブランドのダイヤルはすべて自社製となるだろう。
そして私の予想では、そのほとんどがエナメル製になるだろう。
レジェップ・レジェピとアクリヴィアが新作を発表していないあいだにも、市場は彼らに追いつこうと好調に推移し続けた。上昇に次ぐ上昇だ。ここではあまり長くは触れないが、全体像を完全に理解するためには、物事の起点と、現在地に触れておくことが重要だ。
2014年にAK-01が初めて公開された際、価格は10万ドル(当時のレートで約1000万円)台半ばだった。2023年までに、120万ドル(当時のレートで約1億9000万円)で売却された事例が報道された。2015年にAK-02を取り上げた際、その価格は9万9000スイスフラン(日本円で約1300万円)だった。現在では、A Collected Manのサイラス・ウォルトン(Silas Walton)氏によると、こちらも約120万ドル(当時のレートで約1億9000万円)で取引されているという。最近の2次流通市場でAK-06の相場感は定かではないが、ティモシー・シャラメが映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のプレミア上映で本作を着用していたことは確かだ。
The Second Hand Watch Clubは2026年1月、RRCCIIを170万ドル(当時のレートで約2億6000万円)で販売するとする一斉メールを送信した。
2018年にRRCC1が発売された際、RGモデルは5万5000スイスフラン(当時のレートで約620万円)、プラチナモデルは5万8000スイスフラン(当時のレートで約650万円)だった。5年後、初期のRRCC1がオークションに出品された際、約92万4000ドル(当時のレートで約1億2700万円)で落札された。現在では100万ドル(日本円で約1億5800万円)超で取引されており、マーク・ザッカーバーグ氏も同モデルを着用している。Only WatchのRRCCIIに至っては、2021年に最終スペックが発表される前に80万スイスフラン(当時のレートで約9000万円)で落札された。またOnly Watchのアンチマグネティックは、210万スイスフラン(当時のレートで約3億6000万円)で落札。“まあ、チャリティだしユニークピースだから当然だ”と思うかもしれないが、今年初め、ある中古販売業者が自社サイトでRG製の標準仕様のRRCCIIを170万ドル(当時のレートで約2億6000万円)で販売していた。小売価格は約12万5000スイスフラン(日本円で約2500万円)だったのに、である。🤯
レジェップ・レジェピの作品が生み出す驚異的な価値は、間違いなく一部の人々にとって魅力的かもしれない。しかし以前も述べたように、2023年、当時39歳の神童を巡っては過大評価だと謗る人もいただろう。だが私は、彼に関しては決して過大評価ではないと主張したい。彼は大小を問わず、今日のどの時計メーカーにも真似できない方法で、自らの信条を実践し続けているからだ。彼は全時計メーカーの基準を引き上げるような影響力を持ち、業界に貢献している。そして今回発表される自社製の完全統合型で、美しくデザインされたクロノグラフにも当てはまる。
レジェップ・レジェピ フライバック・クロノグラフ “RRCHF”のご紹介
スリムで自社製、ハンドメイド、そして圧倒的な美しさ。それがRRCHFの真骨頂だ。
レジェップ・レジェピ フライバック・クロノグラフ(RRCHF)は、フライバック機構を備えた手巻きクロノグラフだ。直径38.8mm×厚さ9.7mmのプロポーションは素晴らしい。ムーブメントは完全新設計であり、当然ながら自社製である。レジェピ氏本人が4年間かけて設計したもので、これまで発表されたブランドのほかの3つのムーブメントと同様、完璧なシンメトリーで、現代のウォッチメイキングにおいて考えられる最高水準の装飾が施されている。
そしてこちらが、プラチナ製でストームブルーのエナメルダイヤルを備えたモデルだ。
バリエーションとして2モデルが展開される。ひとつはブラックダイヤルを備えたRG製モデル、もうひとつは“ストームブルー”ダイヤルを備えたプラチナ製モデルだ。実際、最近タマラ・ラルフ、アレックス、レジェップ・レジェピ、アナベルを訪ねたことがあるなら、彼らが自社製のエナメルにどれほど力を注いでいるかご存知だろう。つまりこれらふたつのダイヤルはどちらもエナメル製なのだ。厳密にはグラン・フー エナメルで、カウンターにはグレーがかった半透明のディスクが用いられている。大きな秒針はクロノグラフ秒針であり、時・分表示は12時位置のカウンターに、スモールセコンドは左下、30分積算計は右下に配されている。
こちらは史上初のクロノグラフであり、RRCHFの明らかなインスピレーション源となっている。
この時計を初めて見た時、私は1816年のルイ・モネのクロノグラフを思い浮かべた。多くの人が、クロノグラフの起源そのものだと信じているあの時計だ。巨大なクロノグラフ秒針があり、時刻表示用のダイヤルがひとつ、カウンター表示と秒表示用のダイヤルがふたつある。レジェピ氏は、先人が創り出したすべてのクロノグラフがインスピレーションの源だと言うが、最初のモデルへのオマージュが見られるのは素晴らしい。
ラグは長く、RRCCIIやRRCAに見られる形状だ。ケースには美しい段付きベゼルが施されている。もちろん裏蓋はシースルーで、ムーブメントはアンチマグネティックとよく似ているが、共通点はほとんどない。価格は15万スイスフラン(日本円で約3000万円)で、最初の1本は2026年6月に納品される予定だ。
これを見て欲しい。これほど*シンメトリーを強調したクロノグラフムーブメントを、ほかに見たことがあるだろうか?
よし、ここでひと息ついて、詳細を語ろう。これまで述べたのはプロダクトの中核部分についてだが、レジェップ・レジェピの時計には、単なる“モノ”という枠をはるかに超越したディテールが数多くあり、単純な事実の羅列だけではその真価を伝えきれないからだ。まずはムーブメントから始めよう。
320点の部品からなるこのムーブメントは、例えばパテックやランゲより厚みがあるが、実は時計本体は薄くなっている。
RRCHFのムーブメントは設計から製造、組み立て、仕上げに至るまで完全に自社製だ。もちろん、これは一体型クロノグラフムーブメントである。とはいえ、初めて時計を裏返した際、私が真っ先に口にしたのは、その大きな水平なブリッジがアンチマグネティックを強く連想させるということだった。ブランドは即座に意図的なものだと述べたが、実際には、このムーブメントにアンチマグネティックの要素はほとんど残されていない。
アンディが以下に紹介するインタビューで述べているように、これは既存のムーブメントに単純なモジュールを追加したものではなく、全く新しい構造だそうだ。それにもかかわらず、これまでブランドのラインナップで見られた特徴的なシンメトリー性は保たれている。前述したとおり、アンチマグネティックのムーブメントとの類似性は強い。これは意図的な意匠のように感じられるが、今後ずっとこの姿が続くという保証はない。しかしそのシンメトリーについては、称賛されて然るべきだ。クロノグラフらしさの基礎的な部分はきわめて独特であり、そのためムーブメントの外観上のバランスを保つのは困難だからだ。レジェップ・レジェピはその壁を超える方法を見出したのだ。
このムーブメントはダイヤルと針を除いた厚みが6.3mmで、30石、320点の部品から構成されている。このムーブメントは数多くの内角を備え、全面が手作業で装飾されている。仕上げにはコート・ド・ジュネーブ、ブラックポリッシュ、サーキュラーグレイン、そしてポリ・ベルセ(poli-bercé)が採用されている。ポリ・ベルセとは、おおむね丸みをつけた、あるいはドーム状の表面に仕上げる研磨技法だ。脱進機は伝統的なスイスレバー式で、レジェップ・レジェピではかつて使用されたことのない、自社製の新開発品である。このムーブメントは実に美しい。そして、忘れてはならないのがこれがフライバック式だということだ。スタートとストップは2時位置の美しいプッシャー、リセットとフライバックは4時位置のプッシャーが担う。
RRCHFのムーブメントは、パテック フィリップやA.ランゲ&ゾーネよりも厚いが、ケース本体は1mm以上も薄い。これこそがレジェップ・レジェピの真骨頂だ。
ムーブメント自体は驚くほど美しく、厚さは6.3mmであり、パテック フィリップのCal.CH 29-535 PS(Ref.5172に搭載、フライバック機能なし)の5.35mmや、A.ランゲ&ゾーネの1815クロノグラフ・フライバックのCal.L951.5(6.1mm)よりも厚みがある。にもかかわらず、より厚いムーブメントを搭載しながらも、時計本体の厚さは9.7mmであり、パテック フィリップのRef.5172G(11.45mm)やA.ランゲ&ゾーネ(11mm)よりも薄く抑えられている。ここにレジェップ・レジェピの卓越した手腕がある。彼は、A.ランゲ&ゾーネのクロノグラフムーブメントの深みとパテック フィリップの洗練(そしてスイスらしさ)を融合させ、かつどちらよりも多くの部品(ランゲは306点、パテックは270点、 RRCHFは320点)を備え、より長いパワーリザーブ(ランゲは60時間、パテックは65時間、RRCHFは72時間)、そしてランゲの旧来の1万8000振動/時と、精度重視のパテックの2万8800振動/時のちょうどあいだをとった振動数、2万1600振動/時で作動する。彼がこれらすべてを、数千人ではなくわずか54人のチームで、わずか数年という短期間で成し遂げたことを忘れてはならない。
時計に詳しくない人のために補足すると、モジュール型ではない一体型で、機能的(そして美しいことは言うまでもない)なクロノグラフムーブメントを新設計するのは、きわめて困難だ。パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ブレゲ、オーデマ ピゲなどが、これほど長いあいだエボーシュに供給を頼ってきたのはそのためだ。またスピードマスターやデイトナのおかげで市場にはクロノグラフが溢れているとはいえ、フィリップ・デュフォー、ジョージ・ダニエルズ、ロジャー・スミスといった巨匠たちからですら、新設計かつ完全一体型の自社製クロノグラフ腕時計がまだ登場していない点にも注目すべきだ。公平を期すために言えば、彼らがただ単に試みていないだけかもしれないが、それでも事実は事実である。
今最も称賛されているハイエンドなインディペンデントブランドのクロノグラフでさえ、完全に新規開発されたものや完全一体型とは言い難い。例えばペテルマン・ベダ(Peterman-Bedat)の美しいスプリットセコンド クロノグラフは、改良された旧ヴァルジューのエボーシュをベースにしている。ほかの著名なインディペンデントメーカーのなかには確かに自社製のものもあるが、その構造は歴史的なエボーシュとの類似点が見られる。アトリエ・ド・クロノメトリー(Atelier de Chronometre)やアンデルセン・ジュネーブは、改良されたヴィーナス社製ムーブメントを採用している。F.P.ジュルヌの最初のクロノグラフであるオクタ・クロノグラフは、確かにフライバック式で自社製だったが、モジュール式だった。彼の最初の統合型クロノグラフが登場したのは2008年のセンティグラフになってようやくであり、またその後のラトラパンテ・モノプッシャー・クロノグラフも同様だ。言わんとすることはわかるだろう。このように過去の作品の焼き直しとは感じさせない形で、ゼロから何かを構築することはきわめて珍しい。そしてそれを行い、しかもパテック フィリップやA.ランゲ&ゾーネに肩を並べる仕上がりを実現するのは並外れたことだ。ムーブメントの厚みが増しているにもかかわらず、ケース本体がどちらよりも薄いという点はすでに触れただろうか? この事実こそが、知っておくべきことの多くを物語っていると言えよう。
このムーブメントにはジャンピングミニッツ針が搭載されている。これはあるとうれしい機能で、A.ランゲ&ゾーネやパテック フィリップも同様のものを提供している。一方で、ゼロリセット付きのストップセコンド機構は備わっていない。レジェップ・レジェピのほかの2モデルでは私のお気に入りの機能だっただけに、これは少し意外だった。
コッパー調の分積算計とSS製の先端が実にクールだ。
ケースのシルエットを見て欲しい。そして大きなリューズ、さらにはプッシャーも!
ダイヤル正面を見ると、大きな中央のクロノグラフ秒針と、クロノグラフの分積算計の針は、美しいコッパー調に焼き入れされており、ほかの針やダイヤル全体の調和のなかで際立っているのがわかるだろう。分針と中央秒針の両方の先端には段差が設けられており、これにより時刻の読み取り精度が向上するだけでなく、ケースから風防までの厚みを抑えることが可能になった。中央秒針は実際、下向きに湾曲しており、これもまた薄型化に寄与している。
針の段付きデザインはクロノメーター アンチマグネティックで初めて採用されたもので、私のお気に入りの特徴のひとつだ。RRCHFの実際の時刻表示ダイヤルを見ると、RRCCIやRRCCIIを彷彿とさせるデザインだが、半透明のサファイアガラスが採用されており、この時計のきわめて精巧な内部機構が見える。それはおそらくランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー “ルーメン”やパテック フィリップのRef.6159を思わせるかもしれないが、RRCHFが放つ視覚的要素と、前述のふたつの素晴らしい時計のいずれかを比較すれば、レジェップ・レジェピによるムーブメントの“チラ見せ”はより意図的であり、それゆえに満足感をもたらすものだと私は声を大にして言いたい。
RRCHFに見られるサファイアウィンドウは、ルイ・ヴィトン LVRR-01 クロノグラフ ア ソヌリのダイヤルを連想させるが、これは決して偶然ではないだろう。あの時計はきわめてニッチな存在だが、おそらく多くの人は見逃していただろう。ムーブメントは全く異なるものの、フライバックへの序章のような印象を受ける。かなり保守的な時計愛好家として、もしRRCHFがサファイアではなく4ピースのエナメルダイヤルを採用していたらどうだっただろうか、あるいは12時位置の中央の時刻表示ギアのみを覗かせ、4時と7時位置のインダイヤルは全面エナメルにするといった案もつい考えてしまう。おそらく永遠に知ることはないだろうが、それもまたクールだったに違いない(そしておそらく、私好みだったかもしれない)。だが、そんなことはどうでもいい。
ルイ・モネを彷彿とさせる大きな中央秒針と分針は、先端に段差が設けられており、これにより厚みを抑えている。
ケースについてはどうだろうか? RRCCIIの15点、RRCC1の3点に対し、52点の部品で構成されている。それにより、大きなリューズ、見事なプッシャー、長いラグ、そして表裏両面に施された多段式のベゼルといった驚くべきディテールが実現している。そのベゼルはこの時計で私が最も気に入っている特徴のひとつであり、希少だが信じられないほど素晴らしいパテック フィリップのRef.3449を彷彿とさせる。それがレジェップ・レジェピのインスピレーション源だったかどうかは全くわからないが、私が本作を見た瞬間に真っ先に思い浮かべたのがそれだった。言うまでもなく、それはとてもいい意味だ。
以前、彼によれば、ケースの開口部はほぼ楕円形でありながら、見た目には円形に映るよう設計されている。それによって時計を薄くできたという。正直なところ、その理屈をよく理解できていないが、もしそれがあの長いラグを備えつつ、直径39mm未満、厚さ10mm未満というサイズを実現させたのなら、私は大賛成だ。以上の理由から、この時計は手首に信じられないほどよくなじむ。
このケース、ヴィンテージパテック フィリップのようではないか?
このベゼルを見た時、クリスティーズのパテック フィリップ175周年記念オークションで落札されたRef.3449を思い浮かべた。
手首にぴったりと収まっているのがおわかりだろうか?
このケースのもうひとつの素晴らしい点、そして“レジェップ・レジェピならでは”のディテールとして、裏蓋に切り欠きが設けられている。これにより、着脱の際にも毎回完璧に位置が合い、完全なシンメトリーが保証されるのだ。いや、これって最高じゃないか?
レジェピファンの読者諸君への3つの要点
1. RRCHFは、RRCCIIやRRCC1のようなシリアルナンバー入りの限定モデルにはならない。生産数に制限はかかるが、これは今後の展開の予兆であり、同ブランドが複数のモデルを同時生産する体制に入る可能性を示唆している。F.P.ジュルヌのようなブランドを含め、主要なブランドをすべて思い浮かべて欲しい。本作には公表された限定数は存在しないが、このブランドの性質上、きわめて限定的な生産になることは間違いない。しかし、私はこの方針を大いに気に入っている。なぜなら、これにより人々が少しリラックスしてリクエストできるようになるからだ。もはや締め切りのようなプレッシャーを感じさせない。過去には、割り当てを求めるかなり激しい嘆願があったと聞くが、そうした状況は解消されるだろう。
RRCHFにはハグマンの刻印は存在しない。
2. このケースには“JPH”は刻印されない。彼らのすべての作品は、直接的にしろ間接的にしろハグマン氏に触発されたものだ。しかしJPHの刻印が入る最後のモデルはRRCCIIになるのか、あるいはクロノメーター アンチマグネティックが正式な量産モデルになった場合、そちらが最後になるのだろうか、私は疑問に思っている。ハグマン氏は2025年3月に逝去。JPHの刻印がないことは決してマイナス要素ではないが、全モデルにハグマンの署名が入るRRCCIIにとっては、むしろ大きなプラスとなるかもしれない。
3. これはレジェピ氏が“Hgers À Geneve(ジュネーブの時計師)”と署名した初の作品であり、私はこのフレーズが本当に気に入っている。そうしたクラフツマンシップを、ジュネーブの旧市街でレジェップ・レジェピが実践しているという事実ほどジュネーブらしいものはないし、ジュネーブ ツアーリズムにとっても素晴らしい成果だろう。このアイデアは、レジェップがダイヤルに“A Paris”と刻まれた古いルロワの懐中時計を見たことに由来する。
RRCHFと、世界最高のクロノグラフとの比較
前述したとおりだが、RRCHFと真に比較できるのは、パテック フィリップやA.ランゲ&ゾーネのハイエンドな手巻きクロノグラフだけだと考える。グローネフェルトのグローノグラーフ、MB&FのLMシーケンシャル、ドゥ・ベトゥーンやグルーベル・フォルセイのモデルなど、素晴らしいインディペンデントウォッチもいくつか存在するが、現在のブランド価値や製品コンセプトにおいて、これらはいずれも1対1の競合相手とは感じられない。RRCHFは伝統的な意味でのクラシックなクロノグラフを、ただ新しい手法で再構築した時計だ。だからこそ、私や多くのコレクターがこのカテゴリーでまず思い浮かべる、あのふたつのブランドと比較されることもごく自然なことだろう。
つまり実際には、数十年前に作られていてもおかしくないような、薄型の手巻きクロノグラフがここにあるということだ。そしてRRCHFをA.ランゲ&ゾーネの1815クロノグラフ・フライバックやパテック フィリップ Ref.5172と比較すると、スペック面ではおおむねレジェップ・レジェピの新作が優位に立っている。部品点数が多く(つまり研磨・仕上げが必要な箇所が多い)、それらの仕上げの質も高く(ここが価格の大部分を占めている)、どちらよりも長いパワーリザーブを備え、しかもケースはより薄い。美観については、人それぞれだが、下の画像を見ればわかるように、ダイヤルはパテックとランゲのほうがレジェップよりもはるかに古典的だ。手首に巻いた感じはどうか? 私はかつて1815を所有し、現在はRef.5170を所有しており、レジェップも試着したことがあるが、レジェップが勝者であることに疑いの余地はない。
パテックとランゲはゴールド、RRはプラチナだ(RGも選択可能)。
この対決に敗者はいない。だが、お気に入りを選ぶことはできる。
ムーブメントに関して興味深いのは、パテック フィリップが最もクラシカルで、最も伝統的なスイス流クロノグラフの文脈に位置していることだ。少なくとも私にとって、クロノグラフというジャンルでは、その点にはやはり特別な重みがある。しかしフライバック機能はなく、ムーブメントとケースのバランスは3本のなかで最も悪い。このムーブメントは以前39mm径のパテック フィリップ Ref.5170Pに搭載されており、41mm径のRef.5172よりもフィット感が優れていた。A.ランゲ&ゾーネについては、そのデザインがきわめて豪華で洗練されていることは周知のとおりだ。その構造(現時点でほぼ30年の歴史を持つ)は、驚くべき視覚的魅力を生み出し、レジェップの時計よりもクロノグラフの内部機構をより詳細に見せている。しかし3本をルーペで観察すれば、文字どおりにも比喩的にもレジェップの時計が輝いている。パテック フィリップにはかなりの手作業が、A.ランゲ&ゾーネには膨大な手作業が注ぎ込まれているが、 RRCHFは全く別の次元にある。ましてや、それが企業レベルではなくひとりの人間によって構想されたものであるという事実は言うまでもない。
価格についてはどうだろうか。さて、以下のレジェップ・レジェピによる詳細な動画を見ればわかるが、彼は最後に、最高の価格で最高の時計を製作したいと述べている。そしてその価格は15万スイスフラン(日本円で約3000万円)だ。私がこのプロジェクトを知って以来、 レジェピ氏は常に、価格を適正なものに保ちたいと語ってきた。そして15万スイスフラン(日本円で約3000万円)という価格を耳にすると(ランゲの8万2000スイスフラン/日本円で約1600万円、パテックの9万8000スイスフラン/日本円で約1900万円と比較して)、真のクラフツマンシップによるウォッチメイキングを考慮すれば、それは妥当に感じられる。より適切な比較対象として挙げれば、MB&FのLM シーケンシャル クロノグラフは20万スイスフラン(日本円で約4000万円)台半ば(とはいえはるかに複雑だが)であり、グローネフェルトのクロノグラフも同価格帯だった。
もうひとつ考慮すべき点は、RRCCIIの小売価格が12万5000スイスフラン(日本円で約2500万円)だったことだ。しかもそれはタイムオンリーウォッチである。しかし、この時計にはデッドビート機構やゼロリセット機能付きストップセコンドなど、人々が理解している以上に多くの仕掛けが詰まっている。それらすべてを考慮すれば、レジェップ・レジェピのクロノグラフに15万スイスフラン(日本円で約3000万円)という価格はきわめて理にかなっており、この記事に最初のコメントが寄せられるころには、何千人ものコレクターが喜んでその額を支払うだろう。
レジェップ・レジェピ フライバック・クロノグラフに関する最終結論
私がレジェピ氏を“世代を代表する天才”と考えていること、そして彼がこれまでに手掛けた作品のなかでRRCCIIこそが“世代を代表する時計”であることは周知の事実だ。では、RRCHFについてはどうか? 少なくとも私にとっては、RRCCIIほどのインパクトはない。2023年に、アンチマグネティックの構造はRRCCほど感情的に強く響かなかったと述べたが、ここでも同様のことが言える。そして以前指摘したとおり、このムーブメントはRRCAによく似ている。しかも、その類似は表面的なものにとどまらない。
それでも彼が持つ限られたリソースのなかで、これほどの仕上げを施し、完全一体型クロノグラフムーブメントを実現したその野心と完成度は、やはり驚くべきものだ。おそらく“世代を代表する”という称号に値するかもしれない(私はこの言葉をほとんど使わないが、ここではほぼ毎文使っている)。おそらく、私の記憶にあるなかで最もエキサイティングな新作だろう。しかし、完璧ではない。
彼は実に奥行きのあるフライバック機構を実現し、例えばA.ランゲ&ゾーネよりも薄型に仕上げている。しかし、もしRRCHFをランゲのフライバックと並べて見せたなら、街中の平均的な時計マニアなら、ランゲのほうが単純に見た目が良いと言うだろう。そうだと断言するわけではないが、あのランゲのクロノグラフムーブメントには、他社ではなかなか真似できない奥行きがあるのだ。しかしレジェップ・レジェピには多くの魅力がある。それはジュネーブの大通りのショーウィンドウ越しに目にし、さらにはルーペで手に取って覗き込んだ時に改めて実感するようなあのハイレベルなクラフツマンシップだ。今の私は、まさにそういうものを求めている。だが、ランゲが依然としてとてつもなく美しい時計であることは否定できないし、フライバックではないが、言うまでもなくパテックも同様だ。そしてどちらもより安価に入手可能だ。とはいえ、レジェップはどちらよりも着け心地が良く、私にとってはそれが大きな決め手となる。
美的観点では、自分なら違う選択をする点がいくつかある。サファイア製のオープンカウンターは実にクールだが、自分なら選ばないだろう。とはいえ、まだプロトタイプしか見ていないことに加え、1週間ほどあとに完成品を見れば印象が変わるかもしれない。そして最後に、ストラップがあまり好みではない。中央のステッチが気になるのだ。些細なことかもしれないが、これは時計の話だ。人々が些細なことにこだわるからこそ、時計趣味というものは成り立つのだろう?
もうひとつ考慮すべきは価格だ。数字上は100%妥当であり、市場に出回っているほかのモデルと比較すれば、むしろ高いコストパフォーマンスと言えるかもしれない。しかし先日、別のハイエンドクロノグラフについて執筆した際にも触れたように、現在の米ドル対スイスフランの為替レートに加え、スイス製品にかかる約15%の輸入税が、我々アメリカ人にとっては状況を一変させる。スイスフランから米ドル(約18万8000ドル/日本円で約2900万円)に換算し、関税を上乗せすると、米国でのRRCHFの実質価格は21万6000ドル(日本円で約3400万円)近くになる。
そして、15万ドル(日本円で約2300万円)ではなく21万6000ドル(日本円で約3400万円)と考えると、話の内容は一変する。もちろん、これはレジェップ・レジェピの責任ではない。単に、今コレクターたちが向き合わざるを得ない現実的な計算の話なのだ。パテックのような時計が10万ドルか15万ドル(日本円で約1500万円か、約2300万円)なら、比較はかなり単純だ。しかし21万6000ドル対10万ドル(日本円で約3400万円対約1500万円)となると、話はややこしくなる。もちろん、これはあくまで仮定の話だ。こうした時計を購入できる立場にある人なら、ウェイティングリストや割り当ての話に入る前から、何とかして手に入れようとするだろうから。それでも、実際の米ドルでの価格は、表向きの数字よりもかなり高いという事実を認識しておく必要がある。
とはいえ、上記の細かい指摘はあれど、ここ数年でこれほど長く考え込んだ時計、あるいはHODINKEEでこれほど取り上げたかった時計はほかにない。私が取り上げる記事にはある程度の発言権があるが、そうなることは滅多にない。だが今回は違った。それだけでも、レジェップ・レジェピの取り組みに対する私の敬意の深さが伝わるだろう。
また私自身もそうしているとはいえ、今後レジェップ・レジェピが作るすべてのものをRRCCIIと比較するのは、おそらく公平ではないだろう。それはパテック フィリップのRef.2499のプロポーションや魅力に及ばないという理由で、リリースされたばかりのRef.5970を批判するようなものだ。付け加えるなら、私はプロトタイプを見たに過ぎない。特にクロノグラフの場合、その良さは操作感に大きく左右される。完成品を実際に目にし、手に取れば、私の評価はさらに高まるだろうと確信している。
もしかすると―ほんの一縷の望みだが―“良い”とか“素晴らしい”以上の評価を下すことさえあるかもしれない。RRCHFは最終的に、世代を代表する時計になるかもしれないのだ。
総括
RRCHFの好みでない5つの点
- ムーブメント、特に上半分にもう少し“余白”があればよかった。そうすれば、ひと目で感動する要素がさらに増えただろう。
- サファイアディスク。その出来栄えは素晴らしいが、もし選択肢があるなら、これがないバージョンを想像する。
- ストラップ。些細なことかもしれないが、中央の縫い目はなくして欲しい。幸い、ストラップは交換可能だと聞いている。
- 秒針停止機能がない。レジェップ・レジェピのほかの時計ではおなじみの機能だけに、少し意外だった。
- 価格(米ドル換算かつ15%の輸入関税を加算後の)
RRCHFの本当に気に入っている5つの点
- デザインの質と、このムーブメントに見られる信じられないほど素晴らしい手仕上げ。
- 多段式ベゼルとプッシャー、そして細長いラグのスタイル、そしてケースバックの完璧なシンメトリー!
- 中央の分針が最大の注目点。コッパー調に先端が湾曲したデザインが特徴だ。
- 全体のプロポーション。特に手首に装着した際のケースの薄さと、ムーブメントの厚みのバランスが絶妙だ。
- 価格の妥当性(15万スイスフラン/日本円で約3000万円という価格設定の本作を、同価格帯の他製品と比較した場合)。もっと高く設定されても、誰も驚かなかっただろう。
おまけ:この時計は文字どおり、ほかのすべてのメーカーへの挑戦状だ。レジェップ・レジェピは、フライバック機構を備えた完全自社製の手巻きクロノグラフを、構想、設計、試作を経て、今まさに生産している。これはジュネーブ中心部で、わずか数年という期間、そしてたった54人のチームを率いて、彼ひとりで成し遂げたのだ。基準はまたしても引き上げられた。これは、我々がまさにインディペンデントウォッチメイキングの黄金時代を生きているというさらなる証拠であり、レジェップ・レジェピはその旗手といえよう。
動画:レジェップ・レジェピがRRCHFを詳しく解説
スペック早見表:レジェップ・レジェピ フライバック・クロノグラフ
ブランド/モデル名:レジェップ・レジェピ クロノグラフ・フライバック (RRCHF)
直径:38.8mm
厚さ:9.7mm
ケース素材:プラチナ/ローズゴールド
文字盤色:グラン・フー エナメル(プラチナ製モデルはストーミーブルー/RG製モデルはブラック)
インデックス:アプライド、手仕上げ
防水性能:30m
ストラップ:プラチナ製モデルはグレーのヌバックカーフスキンストラップ、ノルウェー式センターステッチ付き/RG製モデルはブラウンのヌバックカーフスキンストラップ、ノルウェー式センターステッチ付き
ムーブメント情報
キャリバー:自社製のクロノグラフムーブメント
機能:時・分表示、スモールセコンド、フライバッククロノグラフ
パワーリザーブ:72時間
巻き上げ:手巻き式
振動数:2万1600振動/時
クロノメーター認定:なし
追加情報:フライバック機構を備えた完全統合型コラムホイールクロノグラフには、伝統的な水平クラッチ構造を採用し、高度なクラフツマンシップによる手仕上げが施されている
価格&発売時期
価格:15万スイスフラン(日本円で約3000万円)
限定:あり、予約制による限定生産
詳しくはこちらをご覧ください。
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