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パテック フィリップ愛好家にとって“聖杯中の聖杯”であり、ほぼすべてのコレクターにとって究極の到達点ともいえるタイムピース。それが、世界で初めて量産された永久カレンダー搭載のクロノグラフであり、ステンレススティール(SS)製ケースを備えるパテック フィリップ Ref.1518だ。この時計が、再び歴史を塗り替えることを期待されつつオークションに登場する。フィリップスはバックス&ルッソとの協力のもと、2016年に1100万スイスフラン(当時のレートで約12億1000万円)の記録で落札された同じ個体を、この11月に再び出品する。あの日からほぼ10年、第2次世界大戦のさなかである1943年にジュネーブの伝説的な時計メーカーによって製造され、1944年にハンガリー・ブダペストの小売店で販売されたこのタイムピースの推定落札価格は800万〜1600万スイスフラン(日本円で約14億6500万~29億3000万円)。もしこの範囲で落札されれば、近年のヴィンテージウォッチオークションにおける最高額となる可能性があり、現代における超希少かつ人気の高いコレクターズピースの市場における指標ともなり得るだろう。
パテック フィリップ Ref.1518のSSケース仕様は、現存が確認されているのは4本のみ。Ref.1518は、1941年に量産を開始した世界初の永久カレンダー搭載クロノグラフであり、その大半は貴金属ケースに収められていた。281本とされる製造数のほとんどはイエローゴールド製であり、ローズゴールド製ケース、なかでもピンクダイヤルと組み合わされた個体はきわめて希少で高価だ。したがってSS製ケースを備えた4本は、コレクターにとってまさにユニコーンとも言える存在なのだ。
「これほど時代錯誤な存在は、ほかにあり得ないでしょう」。そう語るのは、フィリップスのオークショニアであり、Bacs & Russoのシニアコンサルタントでもあるオーレル・バックス(Aurel Bacs)氏だ。「これはまるで、女王や王がカジュアルなストリートウェアを身にまとっているようなものです。理屈ではまったく説明できないことなのです」
実際のところ、直径35mmのSS製ケースを備えたRef.1518がこれほど特別視される理由は、パテック フィリップが耐久性こそ高いが卑金属合金とされるSSを用いて永久カレンダークロノグラフを製造した、唯一にして初めての例だからである。その後継機であるRef.2499の人気の高いプラチナ仕様から、その後のRef.3970に至るまで、パテックは一貫して貴金属でしか製造を行わなかった。
2014年、HODINKEE創設者のベン・クライマーは今や伝説的で数多くの模倣を生んだReference Pointsシリーズの第1回でパテックの永久カレンダークロノグラフを取り上げ、このSS製Ref.1518を端的に“ホーリーグレイル(聖杯級の品)と呼んだのである。
そしてこの特別なSS製ケースのRef.1518が最後にオークションに登場したのは、ほぼ10年前のこと。その際ベンは、既知の4本すべての個体について、それぞれの物語、所有の歴史、そしてこれら非凡な時計を手にした伝説的人物たちを徹底的に記録し、このモデルに関する決定版ともいえる分析を世に示した。オーレル・バックス氏もこの見解に同意しており、SS製Ref.1518の時計史における位置づけは誇張のしようがないと語る。「これはきわめて希少であり、そして重要な存在です。ではなぜそこまで重要なのか? 現存するあらゆるトリプルカレンダーや永久カレンダークロノグラフを見てください。そのすべての起点、アダムとイブの瞬間がこの時計にあるのです」
SS製Ref.1518はジョルジュ・クロワジエ(Georges Croisier)社によって製作されたケースと、スターン・フレール(Stern Frères)社製のダイヤルを備えている。今回フィリップスのオークションに登場する個体には、ケースナンバー508473とムーブメントナンバー863193が刻まれている。さらにケースナンバーの下、裏蓋内側には1の数字が記されており、これが最初に製造されたSS製Ref.1518であることを強く示唆している。
さらに驚くべきことに、今年11月、フィリップス時計部門の創設10周年を記念してジュネーブで特別セールが開催されるとき、同時に現存するSS製Ref.1518のうち半数が同時に市場に出る可能性があるのだ。リッチ・フォードンが今年2月に報じたように、モナコ・レジェンド・グループがもう1本の傑出したSS製Ref.1518をプライベートセールに出品している。この個体は、ブレスレット仕様で販売された唯一のSS製Ref.1518であり、その希望価格は2000万ドル(日本円で約29億4500万円)超とされている。
今回のセールにおける潜在的な課題をさらに複雑にしているのは、世界経済を覆う地政学的な不確実性だ。中東やウクライナでの戦争に加え、アメリカがスイスを含む貿易相手国からの輸入品に課している関税により、国際貿易は混乱に直面している。バックス氏はこう語る。「フィリップスとしては、時計の価格と価値を決めるのは市場であり、売り手ではないと考えています」
SS製のパテック フィリップ Ref.1518のフィリップスによるオークションは、2025年11月8日・9日にジュネーブで開催される。詳しくはこちらをご覧ください。
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