ADVERTISEMENT
5月22日から24日(現地時間)にかけて開催された2026年F1カナダGP決勝で、BWT アルピーヌ F1チームのフランコ・コラピント(Franco Colapinto)が、F1キャリアの自己最高位となる6位を記録した。一方、マイアミGP(5月2日〜4日)では接触により宙を舞うほどの衝撃的クラッシュに見舞われリタイアし、F1カナダGPでは14番グリッドから決勝を迎えたピエール・ガスリー(Pierre Gasly)は、難しいコンディションのなかでも着実に順位を回復。決勝では8位でフィニッシュし、コラピントとともにダブル入賞を達成した。同チームは今シーズンここまでの1戦最多となる12ポイントを獲得し、コンストラクターズ(チーム別の年間ランキング)5位の座を守った。
Photo by Marcel van Dorst / EYE4IMAGES / NurPhoto via Getty Images
そんなBWT アルピーヌ F1チームと2024年からパートナーシップを結んでいるのが、H.モーザー(H. Moser & Cie.)である。先日のF1カナダGPに先立つ3月下旬、同社からの招待を受け、筆者はF1日本GPが開催される鈴鹿サーキットを訪れた。そこではプレス向けのパドックツアーが行われたほか、BWT アルピーヌ F1チームのマネージングディレクター、スティーブ・ニールセン(Steve Nielsen)氏へインタビューする貴重な機会も得ることができた。そこで見えたのは、H.モーザーとBWT アルピーヌ F1チームのあいだにある単なるスポンサーシップにとどまらない関係、そして両者に共鳴し、共存する哲学、チームワークの本質だった。
H.モーザージャパンチームとともに、プレスのアテンドをしてくれたインターナショナル・セールス・ディレクターのニコラス・ホフマン氏によるダブルリスティング。時計はストリームライナー・アルピーヌ ドライバーズ ピンク エディション(写真左)とストリームライナー・アルピーヌ メカニック ピンク エディション(写真右)だ。
ストリームライナー・アルピーヌ ドライバーズ ピンク エディション(左)
Ref.6700-1201。SSケース、ピンクの一体型ラバーストラップ。ケース径42.3mm、厚さ14.2mm。12気圧防水。自動巻き(アジェノー社と共同開発した H.モーザー専用のCal.HMC 700、2万1600振動/時)。
ストリームライナー・アルピーヌ メカニック ピンク エディション(右)
SSケース、ピンクの一体型ラバーストラップ。ケース径42.6mm、厚さ14.4mm。12気圧防水。コネクテッドムーブメント。2本セット販売で、世界限定50セット。1219万9000円。
ブルーを基調とした初代モデル(2025年発表)に対し、今作はBWT アルピーヌ F1チームの2026年シーズンの新型マシンが持つ大胆なカラーリングへのオマージュとしてピンクをまとう。時計の機能は初代モデルと同様。詳細については、初代モデルを取り上げたこちらの記事も合わせて確認して欲しい。
ドライバーだけではない、F1を動かす時間のチームワーク
スティーブ・ニールセン(Steve Nielsen)
BWT アルピーヌ F1チームのマネージングディレクター。2025年に同職へ就任し、エグゼクティブアドバイザーを務めるフラビオ・ブリアトーレ氏の下でチームの日常運営を統括する。現チームの前身でもあるベネトン、ルノー、そしてロータスで要職を歴任し、30年以上にわたり競技運営とチームマネジメントを担ってきた実務派。その豊富な経験値を武器に、再建を図るBWT アルピーヌ F1チームの現場を束ねる。photo courtesy: H.モーザー
H.モーザーは、BWT アルピーヌ F1チームとのパートナーシップ締結に伴って、現代のレーシングチームが渇望する精度とパフォーマンスに貢献できるタイムピースとは何かを突き詰め、2本1組の時計を開発した。それがストリームライナー・アルピーヌ ドライバーズエディションとメカニックエディションである。前者はH.モーザーらしい高級機械式腕時計の文脈にあるモデルで、ストリームライナーの流線的なクッションケースに、ブランド初のスケルトン自動巻きフライバッククロノグラフ Cal.HMC 700を収める。その性能もさることながら、注目すべきはダイヤル側だ。F1マシンのサスペンションをイメージさせるV字型ブリッジ、アルピーヌ A110のホイールリムに着想を得たローターなど、モータースポーツの要素を取り入れたディテールを備えている。一般的なレーシングクロノグラフのようにタキメーターやカラーリングで雰囲気を出すのではなく、ムーブメント構造そのものを“レーシングマシン的”に見せる点が大きな特徴だ。
もうひとつのメカニックエディションは、かなり異色の存在である。H.モーザーとしては異例のデジタルコネクテッドウォッチで、GMT機能、スプリットセコンドクロノグラフ、パーペチュアルカレンダー、F1モードなどを備える。レース開始までのカウントダウンや重要なレースタイミングの通知にも対応し、ピットレーンやガレージで働くメカニック、エンジニアが、レースウィーク中の作業時間やアラートを手元で把握できるように設計されており、騒音の大きな現場で無線だけに頼らず、チームメンバーに重要なタイミングを伝えるためのツールとして開発された、いわば“ピットクルー用計時端末”に近い存在だ。
こうしたH.モーザーとのパートナーシップから生まれた時計は、チームにとってどのような意味を持つのか? ニールセン氏は答える。
「大きな意味がありますよ。F1は、サーキットでもファクトリーでも、物流を含めてそのすべてが時間によって成り立っています。しかも、その時間は動かせない締切に直結しているのです。 設計、製造、レース現場、すべてが時間と目標に基づいて進みます。だからこそ、時間に対して厳しい規律が求められる。手首の時計に表示されている時間は、その象徴。私たちの締切は決して動かないので、時間はとても重要なのです」
F1モードを起動したストリームライナー・アルピーヌ メカニック ピンク エディション。
F1モードはレース開始までのカウントダウンや重要局面の通知を表示する、メカニック向けのレースウィーク機能だ。H.モーザーがBWT アルピーヌ F1チームと共同開発した“現場用ツール”としての性格を象徴しており、単なるスマートウォッチ的な付加機能ではなく、ガレージやピットレーンの作業効率を高めるためのインターフェイスである。画像は、2本目のフリー走行がもうすぐ開始されることを告げている。
photo courtesy: H.モーザー
そして彼は、こうした製品を提供するH.モーザーのようなパートナーの存在について、そしてF1の世界と高級時計製造との共通項についても語ってくれた。
「とても素晴らしいことです。チームが実際に製品を使えるという直接的なメリットがあります。スポンサーの多くとは金銭的な関係ですが、H.モーザーとのパートナーシップについて言えば、職場で実際に使われる製品があるということですからね。それによってチームは会社から信頼され、期待されていると感じることができます。これは本当にとてもいい関係です」
「F1が最先端技術の世界であることは、誰もが知っています。パワーユニット、シャシー、性能全般において、常に限界を攻めています。 軽量化や時間短縮、レギュレーションの最大活用など、すべてがギリギリの世界です。H.モーザーの時計においても同じことが言えるでしょう。美しく設計され、機能的で、クルマと非常に似た考え方があると思います」
photo courtesy: H.モーザー
photo courtesy: H.モーザー
厳しいレースの世界では、結果が求められる。もちろん、それはとても大切なことであるが、それ以外でチームが特に重視していることはあるのか? そんな質問に答えてくれたニールセン氏の言葉はとても印象的だ。
「ガレージにいる120〜130人だけでなく、イギリスの設計・製造拠点には約800人がいます。ここ(鈴鹿サーキット)で見えているのは全体のほんの一部に過ぎません。現場では、(チームとして)クルマを確実に組み上げ、安定して運用し、ピットストップや戦略を正しく実行することが重要です。そして信頼性の高いクルマを作り、それを正しく運用することが最大のポイントとなります」
華々しいF1、レースの世界では、マシンの開発陣やチームのトップ、そしてドライバーにスポットライトが当たりがちだ。しかし、その裏にはそんな彼らを支える多くの人たちがいる。今回の取材のなかで、とても興味深いエピソードを知った。世界各地で開催されるF1GPにおいて、各サーキットでは、参加するレースチームやスポンサーが運営する、レーシングコースを一望できるサーキットビューラウンジが設けられており、そこではチーム関係者や招待客向けにドリンクのサーブや食事の提供がなされている。実はそこで働くスタッフたちは、現地で採用されるわけではない。どこにおいても安定したクオリティのサービスを提供できるように、彼らもチームで世界各地のサーキットを一緒に回るのだそうだ。実際にレースに挑む人たちだけでなく、そうしたスタッフをはじめ、多くの人たちがチームとして携わり、F1の世界を作り上げている。
F1は、決してマシンを駆るドライバーたちだけの戦いではなく、チームでの戦いの場だ。それはレースに挑むドライバーたちにとって、きわめて重要なことである。
前マイアミGP以降、マシンへの違和感を訴えていたガスリーは、カナダGPの予選で14番手に終わったあとも、「何かが正しく機能していない」と語り、「チームの助けが必要だ」と率直に明かしていた。そんな彼の思いに応えるように、チームは決勝に向けてセットアップ変更や空力パーツの調整を重ね、ガスリーがマシンに再び適応できる糸口を探った。その結果が、決勝での8位フィニッシュというわけだ。
時計の世界も同様である。ブランドのトップや一部のスター時計師たちにフォーカスが当たりがちだが、その背後には彼らを支える多くの人たちがいる。そうしたチームが機能して初めて、ひとつの時計は優れたプロダクトとして形を成す。今回の取材は、そんなチームの本質について考えさせられる機会となった。
第5戦カナダGPを終え、2026年シーズンのF1は舞台をヨーロッパに移し、6月5日(金)から6月7日(日)にかけてモンテカルロ市街地コースで開催される第6戦モナコGPを迎える。BWT アルピーヌ F1チームは、どのようなレースを展開するのか。そしてH.モーザーはそんなチームを今後、どのようにサポートしていくのか? 非常に楽しみだ。
特に表記のない画像は、Photographs by Kyosuke Sato
話題の記事
H.モーザー×BWT アルピーヌ F1 好調のチームを支えるパートナーシップの真価と進化
Introducing ミン 29.06 “ピープショー”は、偏光で表情を変える新作
Introducing ダニエル・ロート エクストラ プラットがプラチナケースで復活(編集部撮り下ろし)