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Hands-On オーデマ ピゲ ネオ フレーム ジャンピングアワーについて知っておくべきことのすべて(とそのほか)

驚きの新作、競合モデル、そして過去を礎に築かれる未来を考察する。


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高級時計製造における最大手ブランドのひとつが新コレクションを立ち上げることはそう頻繁にあることではないが、ネオ フレーム ジャンピングアワーほど、オーデマ ピゲにとって絶好のタイミングで登場したものはなかった。ブランド創業150周年を目前に控え、ロイヤル オークの50周年から間もなく、そしてRDシリーズの最後を飾る印象的なRD#5が発表された直後の今こそ、新たなスタートを切るべき時だったのだ。しかし、その“スタート”とはどのようなものだろうか? 蓋を開けてみれば、それは現代の市場向けに刷新された、過去の姿に酷似したものだった。

Neo Frame Jumping Hour

 まずは概要を説明しよう。ネオ フレーム ジャンピングアワーは、オーデマ ピゲ初となる完全自社製のジャンピングアワームーブメントを搭載し、今後数年をかけて進化していく新コレクションの幕開けを飾る新作だ。18Kピンクゴールド(PG)製のケースは縦34.6mm×横34mm(ガドルーン装飾からガドルーン装飾まで)、ラグ・トゥ・ラグは47.1mmとなっている。

 厚さは8.8mmで、ムーブメントは自動巻きだ。伝統的なダイヤルの代わりに、ふたつの窓によって時刻が表示される。ひとつは正時に数字が飛び進むジャンピングアワー表示、もうひとつは流れるように回転するミニッツ表示だ。着け心地についてはのちほど詳しく述べるが、まずはオーデマ ピゲにおけるジャンピングアワーの歴史を紐解き、その文脈を整理しておきたい。


歴史が重要な理由、そしてコレクションとは何か

 ひとつの時計だけでコレクションを立ち上げるブランドは少ない。それは背負うべきものが大きすぎるからだ。ネオ フレーム ジャンピングアワーはその重責を分かち合うべく、1929年から1930年にかけて製造された14本のプレリファレンス(リファレンス番号が付与される前のモデル)をインスピレーションの源としている。そのなかのひとつ、希少なホワイトメタルの個体は、オーデマ ピゲがミュージアムの充実を図るために購入したマーカス・マルグリース(Marcus Margulies)氏のコレクションに含まれていたものだ。ブランドは現在、このモデルの14本の個体のうち3本を所有している。もしオリジナルを探しているなら、幸運を祈る。ヴィンテージコレクターのあいだでは知られた存在であり、所有者は決して手放そうとしない、そんな時計のひとつなのだ。

pre-reference 1271

1929年製の、リファレンス番号が付与される以前のオーデマ ピゲ Ref.1271。これらの時計は(ラグを含めた)横幅が25mm、フレームの上下方向が25mmというサイズだった。

 ジャンピングアワーは確かに、最近の流行だと言えるだろう。あるいは同じ週にふたつのジャンピングアワーが発表されたことで、人々はこの機構を少し過大評価しているのかもしれない。人気が高まれば認知度も上がるが、時にその背景が置き去りにされることがある。

 オーデマ ピゲが単に他ブランドを模倣しているという批評は、背景や歴史を大きく見落としている。また、いくら適応力の高い同社であっても、他ブランドのここ数年の成功を見て“急いで作ろう”などと簡単に決められるはずもない。ケースは言うまでもなく、このようなムーブメントの開発にはそれよりもはるかに長い時間と労力が必要なのだ。

IWC Pallweber from the 1880s

ジャンピングアワーの懐中時計だが、いったい誰が製作したものだろうか。パテック、オーデマ ピゲ、それともカルティエか? これは1880年代にヨゼフ・パルヴェーバーによって製作されたIWCの作品だ。

 歴史を辿れば、1830年頃にアントワーヌ・ブロンドー(Antoine Blondeau)がルイ・フィリップ1世のためにジャンピングアワーを発明した。1883年にはオーストリア人エンジニアのヨゼフ・パルウェーバー(Josef Pallweber)が特許を取得し、IWCと共にジャンピングアワーの懐中時計を量産している(2017年にIWCは、彼にオマージュを捧げる腕時計を発表した)。1928年にはニトンが初のジャンピングアワー表示を発売。同年、カルティエはタンク ア ギシェを発表したが、これには1929年のオーデマ ピゲ プレリファレンス 1271と同じ、ルクルト製のGHSMムーブメントが使用されていた。両者がこれほど似ているのはそのためだ。

 カルティエのケースはエドモンド・ジャガー(Edmond Jaeger)が製作したものだ。ルクルトのムーブメントとジャガーのケースを備えているからといって、そのタンクがカルティエらしさを欠いているとか、誰かのアイデアの模倣だと言えるだろうか? 当時はこうした手法が一般的であり、異なる国から似たような時計が登場しても驚くにはあたらない。では誰が功績を認められるべきだろうか? ルクルトか、パルウェーバーか、それともブロンドーか。私なら、トレンドがすべての人を巻き込んだのだと答えるだろう。

AP Jump Hour

10リーニュ(約22.6mm)のGHSM 17/12ムーブメントを搭載した、1926年製のオーデマ ピゲのジャンピングアワー。

Jump Hour

1990年代半ばのオーデマ ピゲ Ref.25723。

Jumping Hour

オープンワーク仕様のジュール オーデマ・ミニッツリピーター・ジャンピングアワー。

 少し出し惜しみをしてしまったが、オーデマ ピゲには窓表示を備えている時計を製作してきた長い歴史があるだけでなく、実際にはカルティエのタンク ア ギシェや自社のプレリファレンス 1271よりも古い個体が存在する。これらの腕時計(上記の1926年製を含む)はセンターミニッツ針、スモールセコンド、ジャンピングアワーを備えた10GHSM17/12ムーブメントを搭載しており、先日開催されたオーデマ ピゲのイベントで展示された。

 プレスリリースを読みながら、私はジョン・シェーファーのミニッツリピーターやその前身となった長方形のリファレンス、ジュール オーデマ・ミニッツリピーター・ジャンピングアワー、そしていくつかの懐中時計(これらも腕時計と同様に、ヴァン クリーフ&アーペルなど他ブランドの時計とムーブメントを共有していたようだ)に思いを馳せた。これまでこれらを知らなかった人も今はもうご存じのはずだ。

ジャンピングアワーは美しい複雑機構です。また、時計における究極のシンプルさを求める欲求に応えるものでもあると考えています。

– —イラリア・レスタ氏、オーデマ ピゲ CEO

 誰が最初かという議論よりも、私が最初に抱いた疑問は“何をもってネオ フレームとするのか、そして将来的に何を期待できるのか”ということだった。次に“着け心地、そして視認性はどうか”という点だ。後者については追って説明する。前者については、イラリア・レスタ(Ilaria Resta)氏やブランド担当者によると、ネオ フレーム コレクションは造形的な時計を特徴とするが、常にこの形状であるとは限らず、窓表示のデザインをよりクリエイティブに活用していく予定だという。

 市場における選択肢を拡充するために、ブランドはより垂直方向のデザインを必要としており、ネオ フレーム ジャンピングアワーがその役割を果たす。しかしより深い背景を知るには前述の時計に加えて、同社が“窓表示”のカテゴリーに分類しているCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スター ホイールを見れば、このモデルがどこへ向かおうとしているのか、その予兆を感じ取れるだろう。今なぜこれほど多くのジャンピングアワーが市場に出回っているのかについて、レスタ氏は次のように語った。

AP Starwheel

CODE 11.59のケースをまとって復活した、オーデマ ピゲのスター ホイール。これがネオ フレームとして登場することはあるだろうか? ぜひそうなって欲しいと心から願う。

 「ジャンピングアワーは美しい複雑機構です。また、時計における究極のシンプルさを求める欲求に応えるものでもあると考えています。この形状はジャンピングアワーを実現する際にきわめてうまくなじむのです。その形状は幸福な偶然であり、それが起きたとき、ひとつのムーブメントが生まれるのです。それによってその複雑機構や形状に興味を持つ人々がさらに増えていくのです」

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 新コレクションの立ち上げはブランドにとって重要な瞬間だが、オーデマ ピゲを批判する人々を黙らせるチャンスでもある。ブランド内部の人間によれば、オーデマ ピゲはロイヤル オークを中心に構築された、単一コレクションのブランドであるという言説は、彼らにとって痛いところだったようだ。しかし、私でさえ、ロイヤル オーク、オフショア、コンセプトをジェンタ由来の広義の傘下にひとまとめにして、市場と対話するための第2の柱がCODE 11.59だと認識している。多くの人が同意するように、CODE 11.59の立ち上げは多少不安定だったが、製品自体は着実に強化されてきた。もちろんリマスター([RE]Master)シリーズもあるが、これは現時点では、ラインナップの各所に限定モデルを散りばめながら継続していく計画だ。

ReMaster

現時点では、リマスターはオーデマ ピゲにとって限定モデルでありながら、より開かれたデザインプラットフォームとなるだろう。

 私はまた、第3のコレクション(リマスターを含めれば第4)がロイヤル オークやCODE 11.59と同じような意味での“コレクション”である必要があるのかどうか、疑問に感じている。この問いは木を見て森を見ずというものかもしれない(あるいは、時計そのものの話に辿り着く前に理屈をこねすぎているかもしれないが、もうすぐ本題に入るので安心して欲しい)。パテック フィリップを見てみると、ノーチラス、アクアノート、カラトラバ、キュビタス、そして忘れられがちなTwenty~4などいくつかのコレクションがあるが、彼らの最も興味深く魅力的な複雑機構の多くは幅広い範囲において一貫したコレクションやデザインを持たない時計として登場している。

 ダイヤルに刻まれた名前が何であれ、優れたデザインは優れたデザインであり、キャッチーな名前の有無にかかわらず、硬直性は創造性を削いでしまう。それこそがオーデマ ピゲの今後の進むべき道かもしれない。とはいえ、ネオフレームが加わった3本柱という体制は以前よりも間違いなく強固だ。このコレクションがどのように肉付けされていくかを見届けるには時間がかかるだろう。だが今は、目の前の時計に注目しよう。


ネオ フレーム ジャンピングアワー

 哲学的な思索はこれくらいにして、実機について語ろう。発表後に最も多く寄せられた質問は(初日だけで数十件ものDMをもらったが)実物を見た私に対し、ネオ フレーム ジャンピングアワーは実際にどのくらいの大きさなのかというものだった。オーデマ ピゲによる最初のプレスリリースでは、寸法は“24.8mm×34mm”と記されていた。正直、これには驚かされた。それだとカルティエ タンク マストのラージモデル(縦33.7mm×横25.5mm)とほぼ同サイズで、タンク ア ギシェよりもそれほど大きくないことになるからだ。また、それは不可能でもあった。ケース幅がムーブメントの直径よりも小さかったのだ。今でもその数値を使っている媒体もあれば、我々と同様の更新された数値を使っているところ、あるいは全く別の第3の数値を使っているところもある。ここでひとつの疑問が生じる。長方形をどう計測するか、ということだ。

Neo Frame

 カルティエは、ブランカード(仏語で担架の意/ケースの3時側と9時側を貫き、ラグの役割を果たすライン)からブランカードまで、そしてラグ・トゥ・ラグのケース全体を計測する。ジャガー・ルクルトのレベルソも同様だ。それが長方形の時計のサイズ感を理解する一般的な方法となっており、その体験はラウンドウォッチとは確かに異なる。しかしどういうわけか、オーデマ ピゲは数十年にわたる歴史を持つ、同社初の長方形ウォッチに対して、その計測法を採用しなかった。

Neo Frame Jumping Hour

 私はブランドに、より詳細な寸法の提供を求めた。すると30分以内に回答が得られた。これについてはブランドとそのチームに敬意を表したい。以下に、私が理解したとおりの寸法を(図解とともに)掲載する。数値には数分の1mm程度の誤差がある可能性がある。

  • リューズ込みの幅: 35.7mm
  • リューズなしの幅: 34mm
  • 内側の幅(フレームダイヤル部): 25mm
  • サファイアダイヤルの長さ: 34mm
  • 全長(ラグ・トゥ・ラグ): 47.1mm
AP Neo Frame Illustration

オーデマ ピゲが提示した新たな寸法を示すイラスト。Photo courtesy Audemars Piguet. Illustration by Mark Kauzlarich/Hodinkee

 参考までに、いくつかの有用な比較対象を挙げておく。

  • ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・デュオフェイス: 47mm×28.3mm、厚さ10.3mm
  • ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・モノフェイス: 45.6mm×27.4mm、厚さ8.53mm
  • カルティエ タンク マスト XL: 41mm×31mm、厚さ8.4mm
  • チューダー ブラックベイ 58: 幅39mm、ラグ・トゥ・ラグ47.75mm、厚さ11.9mm
Neo frame vs Reverso

オーデマ ピゲのネオ フレーム ジャンピングアワーと、ジャガー・ルクルトのレベルソ・トリビュート・デュオフェイスを実寸比で比較したもの。Photo courtesy Audemars Piguet. Illustration by Mark Kauzlarich/Hodinkee

 これらの時計のいずれか、あるいはすべてを試着したことがあれば、これらの数値がよい指標になるはずだ(ジャンピングアワーと比較できる似たような時計が手元になかったため)。また、以下にHODINKEE Japanの同僚である和田将治が15.5cmの手首に装着した写真と、私の7.5インチ(約19cm)の太い手首に載せた(正直あまり出来のよくない)スマートフォンで撮影した写真を掲載した。ご覧のとおり、ネオ フレーム ジャンピングアワーはフラットなケースバックと短く下向きに角度のついたラグのおかげで、レベルソ・トリビュート・デュオフェイスをわずかに広く薄くしたような着け心地だ。そしてまさにそうした理由から、和田の手首にも実によくなじんでいるように見える。

Neo Frame Masa

和田将治の手首の少し高い位置で装着されたネオ フレーム ジャンピングアワーの写真。

Neo Frame Mark

私の約19cmの手首に着けたiPhoneで撮影した写真。

 オーデマ ピゲの新作発表において、我々は実物を見る前に“Introducing記事”を書くため、サイズ感を判断するのは困難だった。実際に手に取ってみると、ヴィンテージ愛好家としては期待していたよりも確かに大きく感じられた。もし縦34mm×横24mmというサイズで発表されていたなら、それは驚くほど大胆な一手となり、多くのヴィンテージコレクターを狂喜させただろう。しかしブランドにとってそれが現実的でないことも理解できる。SNSのコメントや時計ブログの読者だけでなく、オーデマ ピゲはより幅広い層にリーチしなければならず、小さな時計ではそれが叶わないかもしれない(手巻きムーブメントが愛好家ではない一般顧客、そしてかなりの数の愛好家にとっても99%の確率でマイナス要素になるのと同様に)。とはいえ、最初のリリースが将来的な小型化を妨げるものではない。この時計を使いこなせる女性も確かにいるだろうが、手首の細い人々はより小さなバリエーションの登場を待ち望むに違いない。

 もちろん利点もある。多くの愛好家が望んだであろうサイズよりもかなり大きいが、カルティエ タンク ア ギシェよりもひと目で時間がわかる視認性は圧倒的に(あえて強調する)優れている。私はデザインの観点からカルティエの大ファンであり、予算外であることを承知の上で、昨年ひそかに(夢を見つつ)ウェイティングリストに名前を連ねたほどだ。しかしそれは純粋に感情的でデザイン主導の憧れに過ぎない。私は時計について学び始めた初期にエリック・クー(Eric Ku)氏(と記憶している)から聞いて以来、タンク ア ギシェに恋してきたのだが、その時計を愛する知人のほぼ全員、たとえ所有者であっても視認性はよくないと言うだろう。ネオ フレーム ジャンピングアワーの大胆なアール・デコ風のフォントと大きな窓は、より実用的なユーザー体験を提供してくれる。

Neo Frame Jumping Hour

再び、和田将治の15.5cmの手首に装着した画像。

Neo Frame Jumping Hour

 レスタ氏によれば、ネオ フレーム ジャンピングアワー、そしてこのコレクション全体はブランドにとって“形態は機能に従う(Form follows function)”を体現した瞬間だったという。

 「すべてはムーブメントから始まると考えています」と、彼女はスイスで開催されたAPソーシャルクラブのイベントでのインタビューで語った。「複雑機構のラインナップを充実させるために、多くの取り組みを行っています。ご存じのとおり、今日私たちが手がけていない複雑機構、かつては作っていたもの、あるいは自社では作ったことのないものが数多くあります。

 私たちはこうした複雑機構の開発に関心があります。ジャンピングアワーはきわめて興味深い機構ですが、正直なところ、私たちが持つオクタゴン(ロイヤル オーク)やCODE 11.59のケースというふたつの形状のどちらにもなじみませんでした。一方で、私たちが過去に持っていた古いモデルには実によくフィットしたのです。それがアイデアの出発点でした。これが成功するという期待や自信は持っていますが、何かに賭けて“これがファミリーの大部分を代表することになる”などと言うことはできません。進みながら学んでいく必要があります。ただ、この形状が過去に成功を収め、今日においても重要であることは私は心から信じているのです」

Ilaria Resta's watch

オーデマ ピゲCEOのイラリア・レスタ氏が、1929〜1930年頃に製作されたリファレンス番号付与以前の1271ジャンピングアワー、同ブランドが所蔵する3本のうちの1本を着用している。

 サイズの好みはさておき、オーデマ ピゲは彼らがアール・デコにインスパイアされた“ストリームライン”と呼ぶプレリファレンス 1271の美学を現代に見事に再構築したと思う。リマスターのリリースにおいてもそうだが、彼らは単なる忠実な復刻ではなく、クラシックの現代的な解釈を旨としている。ラグの形状は視覚的に複雑な印象を与え(製作と仕上げにはかなりの苦労があったに違いない)、(オリジナルと同じような)サテン仕上げを前面に施して他モデルとの類似性を強めるのではなく、ケースのフレームに融合させたPVDアンダーコーティングを施したサファイアダイヤルを採用することで強いインパクトを生み出している。新たに採用された質感豊かなテクスチャード加工を施したカーフスキンストラップにより、ネオ フレーム ジャンピングアワーはフォーマルになりすぎない印象を与えているが、よりドレッシーなオプションも用意されている。

AP Jump Hour

これは、サファイアダイヤルが温かみのある色調の木製天井を反射したときに起こる現象だ。実際のところ、オールローズのダイヤルというのもかなりクールだろう。

Neo Frame Jumping Hour
Neo Frame Jumping Hour
Neo Frame Jumping Hour

 また、周囲の光を反射して表情を変えたとしても視認性は損なわれない。時刻を表示するディスクにはサファイアの前面とは対照的な、繊細な質感が施されている。あえて美的な部分に注文をつけるなら、PG製のロゴフォントはほかのクリーンな外観に対してやや主張が強いように感じられる。上図のようなオールメタルのツートーン仕様を見てみたかったって? 答えはイエスだ。だがこのモデルのフレームワークであれば、いずれそうしたものや、エナメルダイヤル、あるいは最近ブランドが注力しているメティエ・ダールへと展開していくことは容易に想像できる。

Code 11.59

コレクターである@chronopeaceの1本(中央)を含むCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ グランドソヌリ カリヨン スーパーソヌリの、3つのユニークなメティエ・ダール仕様。これらのダイヤルは、著名なエナメル作家アニタ・ポルシェ(Anita Porchet)氏によって制作された。Photos courtesy Audemars Piguet

 ムーブメントを見せるために、スモークサファイアクリスタルを採用してはどうかという意見をオンラインで見かけた。コンセプトとしてはおもしろいし、時計をよりモダンにするだろう。しかしそこにはふたつの問題がある。まずクリスタルがケースフレームの一部であるため、あの魔法のようなインフィニティエッジを持つケースデザインの魅力が少し損なわれてしまうこと。もうひとつはプレゼンテーションで見せられた図解からもわかるように、2枚のディスクがムーブメントの大部分を覆ってしまっていることだ。ムーブメントのごく一部は見えても、大部分はディスクに覆われ、また円形のムーブメントが長方形のケースを満たしきれない余白が目立つことになってしまうだろう。スモーク効果自体はディスクを程よく隠しながら視認性を維持できるため素晴らしいかもしれないが、今回のオーデマ ピゲが目指した方向とは少し異なっていた。

Neo Frame Jumping Hour

 時計の機能に関して次に気になるのは、ジャンピングアワーの“スナップ(飛び)”が実際にどれほど鋭いかということだろう。ブランドによっては次の時間へとゆっくりと忍び寄る、半瞬間式を採用することもある。ここでは“ジャンボ”に搭載されているベースムーブメント Cal.7121が、ほかの複雑機構への高い適応力を持つプラットフォームとしてその役割を果たしている。新たに開発された、オーデマ ピゲ初の自社製自動巻きジャンピングアワームーブメント Cal.7122は不快な衝撃を感じさせない素早く快活なスナップを見せる。正時に切り替わる際の針の跳ね返りも(私が確認した限りでは)見られなかった。この時計は52時間のパワーリザーブを備え、毎時2万8800振動で駆動する。

Neo Frame Jumping Hour

ネオ フレーム ジャンピングアワーは手巻きのジャンピングアワーほどの薄さではないが、プロポーションは整っている。

 薄さを求めて手巻きムーブメントを望む声もあるかもしれない。しかしオーデマ ピゲにとって予見可能な将来において“人間工学”はキーワードであり、製品プレゼンテーションでも頻繁に言及された。容易に設定できるパーペチュアルカレンダー搭載ムーブメントや、より小型の自社製クロノグラフなど、今回のネオ フレームの自動巻きムーブメントも含めた近年のリリースはより幅広い層にとっての着け心地のよさを追求したものだ。愛好家は異を唱えるかもしれないが、この時計を購入する大半の顧客は自動巻きを好むだろうと私は推測する。手巻きムーブメントを惜しむよりも、ネオ フレーム専用の角型ムーブメントや、マイクロローターを搭載したものを期待したかったというのが本音だ。既存のベースから開発する方が容易であり、コストも抑えられるのは確かだが、そうしたディテールこそがネオ フレーム ジャンピングアワーを真に際立たせる要素になったはずだ。

 ネオ フレーム ジャンピングアワーは限定モデルではなく、オーデマ ピゲの正規販売店およびブティックで販売される。価格は979万円(税込)だ。金の価格高騰に伴い、今日において我々はこうした価格設定に適応していかなければならず、それは販売店と顧客の双方に同様のプレッシャーを与えることになるだろう。


市場比較
カルティエ タンク ア ギシェ

 アイコニックなステータスと価格において、真っ先に、最も明白な比較対象となるのが昨年Watches & Wondersで再登場したカルティエのタンク ア ギシェだ。こうした時計を表現する際に、ギシェという言葉を耳にしても驚かないで欲しい。これはフランス語で“窓”を意味し、表示形式を表す言葉として定着している。タンク ア ギシェはラグ・トゥ・ラグ37.6mm、幅24.8mmとよりコンパクトで、ドロップラグもなく圧倒的にフラットだ。手巻きムーブメントにより、厚さはわずか6mmに抑えられている。この種の分野で大きな影響力を持つブランドによる、まさに“知る人ぞ知る”サイズ感のリリースだ。しかし多くの人にとって信じられないほど視認性は低い。見た目と着け心地は最高だが、窓とフォントが小さすぎるのだ。

Tank à Guichets

昨年のカルティエ タンク ア ギシェのレビューより。

 発売時、タンク ア ギシェに搭載された自社製Cal.9755 MCについて、それほど多くの情報は共有されていなかった。シースルーバックではないため、実物を見ても多くを察することは難しかった。手巻きでパワーリザーブも40時間しかなく、スペック上ではオーデマ ピゲに一歩譲るが、そうした妥協こそがコンパクトさを実現している。私の経験上、人々はカルティエの時計を高級時計製造というよりはデザインピースとして捉えており、ケースの仕上げがよりシンプルで視認性が劣る(私の経験では)としても、カルティエには100年以上にわたってこのモデルをアイコンへと育て上げてきた歴史がある。発売時の価格はイエローゴールド(YG)またはローズゴールドで759万円であり、ネオ フレーム ジャンピングアワーよりもかなり手頃だった。しかし現在の中古市場では14万5000ドル(日本円で約2200万円)以上の値がついていることもあり、比較すればオーデマ ピゲの新作はむしろお買い得にさえ思えてくる。

ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・ノナンティエム
JLC Reverso

Photo courtesy Jaeger-LeCoultre

 レベルソとの比較も容易である。実際、市場にはジャンピングアワー表示を備えたレベルソが、ある意味では存在する。レベルソ・トリビュート・ノナンティエムは正時の約5分前から動き出し、デイトディスクのようにじわじわと切り替わる半瞬間式のジャンピングアワーを採用している。しかしそれはレベルソの物語の半分に過ぎない。デジタル表示側には、デイ/ナイト表示のための月と太陽が描かれた回転ディスクも備わっている。そしてレベルソとして、このノナンティエムは伝統的な針、ビッグデイト、スモールセコンド、ムーンフェイズを備えた“表側”のダイヤルも備わっている。

 そのマキシマリストな姿勢は縦49.4mm×横29.9mm、厚さ11.72mmという最大級のケースサイズに表れており、私の個人的な経験から言えば、多くの人にとって大きすぎる(あるいは長すぎる)。また、自動巻きではなく手巻きだ。最新のPG製モデルは、背面のダイヤルにエナメルとラッカーを施したメティエ・ダールへとアップグレードされた。その価格は7万4000ドル(日本円で約1130万円)で、オーデマ ピゲの新作と同価格帯に位置している。

ニトン “プリマ”
Niton Prima

 現代の市場における最新の参入者は、最近復活を発表したばかりの古豪ブランドだ。この時計について、より包括的な情報を知りたい場合は最近公開した記事を読んで欲しい。プリマは38本(プラチナとローズゴールド各19本)限定で展開される。サイズは縦35.5mm×横27mm、ラグ・トゥ・ラグ42mm、厚さはわずか7.9mmだ。ムーブメントはニトンが開発したもの(毎正時にチャイムの音で時間を告げ、クロノメーター認定も受けているソヌリ・オー・パサージュを搭載)で、より複雑なものだが、手巻き式だ。ある人々は新興ブランドに賭けるようにニトンのスタイルを好み、4万4750スイスフラン(日本円で約910万円)を投じるだろう。一方で、さらに約70万円を上乗せしてオーデマ ピゲを選ぶ人もいるだろう。同社の1315倍もの生産量を誇る巨大ブランドと競合するのは、不運なタイミングでの立ち上げだったかもしれない。あるいは、より多くの人がジャンピングアワーを意識し、選択肢を探している今こそ完璧なタイミングだったのかもしれない。

ネオヴィンテージ ジュール オーデマ・ミニッツリピーター・ジャンピングアワー Ref.25723、25765、25793、25814、25823
ref. 25723OR

オーデマ ピゲ Ref.25723ORは、本作および同様のリファレンスにおいて、最も一般的な仕様のもの。Photo courtesy Phillips

 私はネオヴィンテージのオーデマ ピゲを心から愛している。ジョン・シェーファーのミニッツリピーター搭載ジャンピングアワーモデル(これについてはここで取り上げた)の登場以前、同じムーブメントであるCal.2865(ジュリオ・パピ氏がルノー・エ・パピ時代にオーデマ ピゲのために設計したものであり、自社製ではない)は、最も近い選択肢と言える長方形のネオヴィンテージモデルに使用されていた。ネオ フレームのような単なるジャンピングアワーにとどまらず、Ref.25723はセンターミニッツとミニッツリピーターを備えていた。その後Ref.25823や、ルビーやエメラルドにマザー・オブ・パールのダイヤルを組み合わせたRef.25765PT、ケースとラグにダイヤモンド、エメラルド、サファイアをさらに精巧にセットしたRef.25793、4種類の異なる石のダイヤルを用いたYG製のRef.25814といったバリエーションが続いた。これらすべての例は、書籍『Audemars Piguet 20th Century Complicated Wristwatches』で見ることができる。

Caliber

 これらのリファレンスは1992年に発表され、1996年まで製造、2003年まで販売された。そしてプラチナ、YG、PG製を合わせて計208個が生産された。ネオ フレーム ジャンピングアワーと同様に、長方形のケースに円形のムーブメントを収めていたが、ケースは縦38mm×横29mmとより小振りで、やや繊細な響きのミニッツリピーターを搭載しながらも手巻き式だった。これらが売りに出されることはまれだが、価格はこの数年で着実に上昇しており、YG製の個体は2023年の約7万ドル(約1000万円)から、現在は10万ドル(約1530万円)近くまで跳ね上がっている。宝石をあしらったモデルなら、今日では25万ドル(約3800万円)を超えることもある。今回の新作よりも約3万ドル(約460万円)多く支払えば、ミニッツリピーターを手に入れられるというのは一部の買い手には魅力的かもしれないが、入手は困難だろう。


最後に

 これほどまでに世に知られていない歴史を掘り起こしてインスピレーションを得るという選択には驚かされたが、その論理は理解できる。おそらくブランド側は、ジュール オーデマ(我々の読者のなかにはその復活を望む声もあるが)を復活させるには新しすぎると考えたか、あるいはラウンドケースではあまりにありふれていて、どこか型にハマりすぎていると感じたのだろう。私自身は、シェーファーコレクションの復活こそがよい選択肢だったのではないかとややひいき目に考えてしまうが、それもまた比較的最近のモデルだ。さらに言えば、どちらを復活させたとしても自らの中古市場と競合することになる。新作を買うよりも、より手頃な旧型を買えば済む話になってしまうからだ。

Neo Frame

 今回の決断はきわめて現実的なものであり、私にこの先ブランドがどこへ向かうのかを完全に想像する創造力は欠けているにせよ、選択肢は確かにある。ミニッツリピーター搭載のジャンピングアワーなどは当然の帰結のように思える。カレンダーウォッチもそれほど突飛な話ではない。オーデマ ピゲはかつて窓表示のカレンダーを備えた懐中時計を製作していたからだ(おそらく、20世紀初頭にヴァン クリーフ&アーペルなどが使用していたものと同じパーツ供給元を利用していたのだろう)。“フレーム”という制約のなかで、針を持つ時計をイメージするのは難しい。しかしある意味では、まだ見ぬ、想像もつかないポテンシャルこそがこの挑戦をよりエキサイティングなものにしている。ほとんどの人が予想だにしなかったアイデアを中心に、可能性に満ちた新たな世界をブランドが提示してくれるのは実に久しぶりのことだ。

 オーデマ ピゲ ネオ フレーム ジャンピングアワーの詳細については、こちらから。