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Hands-On ポーリン、新作マーラでツールウォッチデザインの世界へ

フォルムと機能を融合させた、グラスゴー発の新たなコンビネーション。

 近頃、グラスゴーでは新たなアイデアが次々と生まれているようだ。先月はアンオーダイン(AnOrdain)が手がける初の手作りポーセリンダイヤルを紹介したばかりだが、今回はその姉妹ブランドであるポーリンが、新作マーラで初めてダイバーズウォッチの分野に参入した。グラフィカルであり、カラフルなデザインで知られるポーリンにとって、本作は一見すると意外なリリースに映るかもしれない。しかしブランドによれば、数年前にこの分野ではおなじみのジェイソン・ヒートン(Jason Heaton)氏との会話が、今回のデザインへの挑戦のきっかけとなったと言う。

Both Paulins Soldier Shot

 “海の”を意味するスコットランド・ゲール語に由来するマーラという名は、この新たなデザイン主導のダイバーズウォッチにこれ以上なくふさわしい。ブラックまたはブルーのダイヤルが用意され、価格は1650ドル(日本円で約24万5000円)に設定されている。ブランドの進化を追ってきた人には、このシルエットに見覚えがあるだろう。モジュールラインのクッションケースをベースにしつつ、そこにわずかに丸みと厚みを加えているのである。ケースはブランド史上最大で、直径39.7mm、厚さ13.5mm(大きくドーム状に盛り上がったサファイアクリスタルを含む)、ラグ・トゥ・ラグは48mmとなっている。

 ケース側面の鋭いエッジや工業的なネジは姿を消し、今回はより柔らかな面取りが施され、スティールケースはダイバーズウォッチにふさわしい300m防水を確保するためにスリムに仕上げられている。さらにシルエットを和らげているのが、120クリックの逆回転防止ダイバーベゼルで、内側にスーパールミノバを印刷したカーブサファイアリングを備えている。価格帯を考えればベゼルの操作感はとても優れており、クリック感もシャープで、遊びもほとんどない。また、ベゼルのケースよりもわずかに張り出した形状と、そこに刻まれた凹みが組み合わさることで、グローブ着用時や濡れて滑りやすくなった手でもグリップしやすくなっている。これまで1度もベゼル付きウォッチをデザインしてこなかったブランドとは思えない完成度で、正直驚かされた。

Paulin Mara Dial Closeup

 ダイヤルこそが、ポーリンがそのグラフィカルなルーツを存分に発揮している部分だ。真鍮製のダイヤルはマット仕上げが施され、ブラックまたはダークブルーで展開されている。ディテールの随所に、デザインへのこだわりが光る。ダイヤルとベゼルインサートには、ポーリンとアンオーダインの社内タイポグラファーの(ポーリンのクリエイティブディレクターでもある)イモージェン・エアーズ(Imogen Ayres)氏がデザインしたオリジナルの“Wim”書体が使用されている。これに調和するのが、大胆な幾何学的フォルムのアワーマーカーである。三角形、四角形、円形といった形状を採用し、水中での視認性を高めるために手作業で施されたスーパールミノバのレリーフプリントによって、あえて皮肉めいた不完全さが演出されている。

 ブランドロゴと“Glasgow”の文字は、プリントされたミニッツトラックに自然に溶け込んでおり、太く丸みを帯びたバトン型の針には2色のスーパールミノバが施され、高い視認性を誇る。先端に鮮やかなコントラストカラーを配したロリポップ型秒針が、仕上げのアクセントとなっている。私はこのダイヤルデザインにすっかり魅了された。ツールウォッチとしての実用性とビジュアルの魅力とのあいだに実現されたこのバランスは完璧と言ってよく、優れたデザイナーが持つべき最も重要な資質、すなわち抑制を体現する好例である。

Paulin Mara on wooden desk
Paulin Mara Case Crown Side
Paulin Mara Caseback Shot

 ソリッドケースバックの内側には、高性能のムーブメント、ラ・ジュー・ペレ社製自動巻きCal.G101が収められている。これはポーリンとアンオーダインの両ブランドが愛用するムーブメントで、68時間のパワーリザーブと2万8800振動/時を誇り、この価格帯のマイクロブランドにおいて確固たる地位を築きつつある現代的なキャリバーだ。ダイバーズウォッチにソリッドケースバックが採用されることに異を唱える人はいないだろうが、本作に関してはシースルーバックのオプションがあればぜひ欲しかったと思う。たしかにG101は見た目において革新的なキャリバーであるわけではないが、たとえ追加料金が発生するとしても、ポーリンがケースバックに多少なりとも視覚的な遊び心を盛り込むという選択肢を設けなかったのは意外だった。

Rubber Strap Macro
Paulin Mara dial closeup
Paulin Mara on rubber strap blue wristshot

 ポーリン マーラには2本のストラップが付属する。オリジナルのコルク製パッケージに収められた状態では、リサイクルされた漁網から作られたファブリックストラップが取り付けられている。ただしチクチク感を心配する必要はない。というのも社内で、このストラップの裏地にイタリア製アルカンターラを施しており、スエードストラップのような心地よい質感を持ちながら、日常使用に耐えうる適度な耐水性も備えているからだ。とはいえ長時間の水中使用には向いていないため、本来の設計どおりにマーラを水中で使用するのであれば、付属のカスタムラバーストラップに交換するのが望ましいだろう。

 物理的な観点から見ると、このラバーストラップはかなり優れている。というのもこれは、本モデルのケースに合わせてカスタムしたインジェクションモールドで成形されているからだ。ただし実用面では、特に手首の細い人にとってはフレア(外側への張り出し)がやや強すぎる。数日間マーラを着用してみたが、ラバーストラップのほうが時計にはふさわしいと感じたものの、ストラップが大きく外に張り出してからようやく下向きに曲がる構造のため、ケースがバランスよく設計されているにもかかわらず、手首とのあいだに隙間ができてしまった。そのため最終的には、残りの期間はファブリックストラップのまま使用することになった。とはいえ、このラバーストラップのデザインには、どこか肩の力が抜けたような遊び心が感じられ、思わず魅力を感じてしまったのだ。ポーリンが思いきり自由に表現した部分であり、ストラップ全体にわたってインジェクションモールドで大胆にブランドロゴを刻んでいるのである。万人受けするものではないだろうが、ストラップは容易に交換できるのだから問題ない。

Paulin Mara Wristshot

 総じて言えば、ポーリン初のダイバーズウォッチとしての試みには素直に感心させられた。マーラは、いわゆるマイクロブランドのダイバーズウォッチに求められる条件をすべて満たしつつも、そのチェックリストにデザイン面が縛られることなく、美観をしっかりと保っている“ツール感あふれる時計”に仕上がっている。かつての同僚が、もう1本ダイバーズが必要だなんて、頭に穴を開けるくらい無意味だと言っていたのを思い出すが、それでもマーラには心を動かされてしまうのだ。

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