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ロレックス、スイスの関税紛争をめぐる外交的勝利を狙い、全米オープン決勝にトランプ大統領を招待

テニス決勝でロレックスのスイートに姿を見せたトランプ氏、その光景が冷え込んだ米国とスイスの貿易関係改善への期待を生む。

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ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は日曜日、全米オープン男子決勝に同大会の公式タイムキーピングスポンサーでであるロレックスのゲストとして出席し、ロレックスCEOのジャン・フレデリック・デュフール(Jean-Frederic Dufour)氏、米国司法長官のパム・ボンディ(Pam Bondi)氏、中東担当特使のスティーブ・ウィトコフ(Steve Witkoff)氏らと共に観戦した。スイス時計業界が、トランプ政権によって米国への輸入品に課された過剰な関税を緩和するようを求めるなか、スイスを代表する時計ブランドであるロレックスが米国大統領を迎えたことは外交的な勝利といえるだろう。

U.S. Attorney General Pam Bondi

米国司法長官のパム・ボンディ氏、中東担当特使のスティーブ・ウィトコフ氏、そしてドナルド・トランプ大統領。Photo via Getty Images

 トランプ氏がロレックスのスイートから、アーサー・アッシュ・スタジアムでのヤニック・シナー(Jannik Sinner)対カルロス・アルカラス(Carlos Alcaraz)の男子決勝戦を観戦する可能性があるという情報は、決勝前日の早い段階で報じられた。それと同時に、公式発表前だったため匿名を条件に、HODINKEEは複数の関係筋からその情報を確認した。ロレックスはこのスイートを著名人やリテーラー、顧客、パートナー、そしてもちろんテスティモニーなど、幅広いゲストの接待に常時使用している。

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Photo via Getty Images

 トランプ氏の来場は、現職の米国大統領が全米オープンに姿を見せるという珍しい出来事であることや、関税問題への影響に加え、テニスメディア『Bounces』が最初に報じたように、全米オープン運営側がトランプ氏の来場に対する否定的な反応や抗議行動を制限するよう要請していたことから、すぐにネット上で物議を醸した。また警備の強化により決勝の開始はおよそ45分遅れ、何百席もが空席となった。チケットを持つ観客の多くが外で足止めされ、シークレットサービスによって実施された進行の遅いセキュリティチェックに不意を突かれるかたちとなったのだ。

President Donald Trump and Jean-Frederic Dufour, CEO of Rolex, at the U.S. Open

全米オープンにて、ドナルド・トランプ大統領とロレックスCEOのジャン・フレデリック・デュフール氏。Photo via Getty Images

 ロレックスは、男子・女子両ツアー、そして全米オープンを含む4大大会すべてにおいて最大のタイムキーピングスポンサーだ。また、多くのトップ選手とも契約を結んでいる。今回の男子決勝のファイナリストであるヤニック・シナーとカルロス・アルカラスもロレックスのテスティモニーであり、伝説的存在であるスイスのロジャー・フェデラー(Roger Federer)氏もそのひとりだ。

 ロレックスが米国大統領を接待したことは、スイスと米国の冷え込んだ通商関係を緩和させる一助となり得るものであり、ロレックス自身のみならず、スイス時計産業全体に恩恵をもたらす可能性がある。多くのブランドや業界関係者はスイスがほかの貿易相手国と同水準の関税率で合意に至るものと期待していたが、7月にカリン・ケラー=ズッター(Karin Keller-Sutter)大統領とトランプ氏の電話会談が決裂したことでその期待は潰えた。

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カルロス・アルカラス。Photo via Getty Images

 トランプ政権は8月7日より、スイスから米国に輸入される製品に対して39%という関税を課す措置を発効した。この驚くべき高率の関税は、欧州連合や日本といったほかの時計製造国・地域からの製品に課される15%の関税と比べてもきわめて高く、スイス時計ブランドに不利な状況をもたらしており、大手ブランドにとっては販売需要および利益水準を脅かす存在となっている。

 4月に発表されたスイス製品への初期関税に対応するかたちで、ロレックス、オメガ、ブランパン、パテック フィリップ、オーデマ ピゲといった大手ブランドはすでに米国での価格を3〜10%引き上げている。なお、当初は31%とされた関税率は一旦10%に引き下げられたが、先月になって突如39%に引き上げられた。関税が現在の水準で維持され続けた場合、ブランドのさらなる値上げが見込まれている。

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Photo via Getty Images

 貿易相手国や特定産業のなかにはトランプ氏およびその政権を称賛し、米国製造業への投資を約束することで好意や譲歩を獲得してきた例がある。しかしスイス時計は、生産の大部分をスイス国内で行う必要がある。それは同国固有のブランディングと製造が主要なセールスポイントであるからで、また、この産業はアルプスの国スイスで6万5000人以上の雇用を支えているのだ。

 年間100万本以上の時計を生産するロレックスは、収益ベースでスイス最大の時計ブランドであり、スイス時計産業全体の販売額の約3分の1を占めるとアナリストは推定している。米国はスイス時計、そしてロレックスにとって最大の単一輸出市場である。創業者ハンス・ウィルスドルフ(Hans Wilsdorf)の名を冠したジュネーブの財団が所有する同ブランドは、スイス時計産業を支え、推進し、維持するうえできわめて大きな役割を果たしている。

 今年のスイスから米国への時計輸出は、関税発効を前に各ブランドが小売店への在庫供給を急いだ結果、2024年比で24%の急増となった。

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今年7月、ウィンブルドンの会場外に設置されたロレックスのクロック。Photo via Getty Images

 ニューヨーク出身のトランプ氏はこれまでにも数回全米オープンを訪れており、最後の来場は2015年、ビーナス・ウィリアムズ(Venus Williams)対セリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)の準々決勝であった。大統領在任中にはスーパーボウルをはじめとするほかの著名なスポーツイベントにも出席している。しかし現職の米国大統領が全米オープンを訪れるのはきわめて異例であり、AP通信によれば2000年のビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領以来であるという。

本記事および見出しは、トランプ大統領が全米オープン決勝に出席したことを受けて更新された。