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Hands-On A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー “ルーメン”を実機レビュー

ドイツ時計界の雄が、複雑機構を極限まで追求した“ルーメン”シリーズの新たな到達点を示した。


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Photos by TanTan Wang

A.ランゲ&ゾーネの時計は、1994年のブランド再始動以来築き上げてきた、厳格で伝統的なデザイン言語から逸脱することはほとんどない。しかし、そのなかで唯一といっていいほど異彩を放つコレクションが存在する。それがルーメンシリーズだ。2010年に登場したツァイトヴェルク “ルミナス”から数えて、A.ランゲ&ゾーネのルーメンシリーズは今年で16年目を迎える。このモデルではスモークサファイア、ブラックアウトされたディテール、そしてもちろん時・分ディスクに施された夜光表示を初めて採用したモデルだった。もっとも、このモデルはそのコンセプトを最初に実現した時計ではあったものの、正式に“ルーメン”の名を冠した最初のモデルは、2012年に登場したグランド・ランゲ1 ルーメンだった。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Wristshot

 先月開催されたWatches & Wondersにおいて、A.ランゲ&ゾーネは、ルーメンシリーズ第7作となる新作ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー “ルーメン”を発表した。2025年、ダトグラフ誕生25周年を記念して発表された、まさに破天荒なダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールドに続き、今回の暗闇で光るきわめて複雑なランゲ1は、ルーメンシリーズがますます複雑化している(それに伴って価格帯も上昇している)ことを示す。細部をよく見れば、この時計には実に多くの要素が詰め込まれており、時計愛好家にとっては間違いなく目を楽しませてくれる逸品だ。

 実機を前にして、41.9mmという存在感のあるプラチナケースが放つ、冷たく厳格なオーラにすぐに心を奪われた。というのも、これは過去2作のルーメンシリーズ(ハニーゴールド製のダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨンと、その前身であるツァイトヴェルク)に見られた、スモーキーなブラックとホワイトメタルの組み合わせへの待望の回帰だったからだ。情報表示がダイヤルの端まで広がるこのデザインにおいて、明るい色味のプラチナケースは、パーペチュアルカレンダーの月表示リングを美しく縁取っている。厚さ13mmのケースは、もちろんコンパクトとは言い難い。しかし同ブランドの複雑機構モデルを知っている人にとって、それは全く驚くことではない。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Slanted
L1 Perpetual Tourbillon Lumen Case Side Crown
L1 Perpetual Tourbillon Lumen Date Window Macro

 一見すると、カタログのなかで最も複雑なランゲ1のダイヤルが持つ情報量は、圧倒的に感じられるかもしれないし、半透明のスモークサファイアダイヤルが、その印象をさらに強めていることは確かだ。とはいえ、これはパーペチュアルカレンダーだから当然でもある。通常のランゲ1らしいオフセット配置の時刻表示に加え、本作は日付、曜日(9時位置のレトログラード表示)、月(ダイヤル外周を囲むリング上に表示され、6時位置の三角ポインターが現在の月を示す)、そしてうるう年サイクルまで表示する。うるう年を(そのすぐ隣にある月表示ポインターの三角形デザインを延長するよう巧みに形作られた切り欠き内に)示す。

 しかしそれだけではない。スモールセコンドのインダイアルの下にある切り欠きには、ムーンフェイズと昼夜表示が配置されており、今回はそれらがひとつの美しい表示として統合されている。以前は、その昼夜表示は6時位置の時間表示用のインダイアル内にあった。これはきわめて優れたアップデートだと思う。トゥールビヨン非搭載のランゲ1・パーペチュアルカレンダーから引き継がれた、実に遊び心あふれるディテールがここに盛り込まれているからだ。月の背後に広がる空そのものが別レイヤーになっており、昼間は澄んだ空、夜になると星空へと移り変わっていく。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Leap Year Macro
L1 Perpetual Tourbillon Lumen Recessed Pushers Side

カレンダー表示を調整するための、一部埋め込み式のプッシュボタン。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Dial Closeup

 予想どおり、本作には夜光塗料がたっぷりと施されている。特に、同ブランドのよりクラシックな作品と比べればなおさらだ。時刻やカレンダーに関するあらゆる情報は、スモークサファイアに施された特殊コーティングのおかげで、夜間でも視認可能となっている。このコーティングは実際に紫外線をダイヤル内部へ通し、日中のあいだに夜光を蓄光させる仕組みになっている(サングラスの逆だと考えればわかりやすい。つまり紫外線だけを通すような働きをしているため、ダイヤルにUVライトを直接当てられない場合にきわめて役立つ)。この時計の昼夜表示は特に秀逸で、夜には輝く星空が、昼間には明るく光る真っ白な空が浮かび上がる。身に着けている人は、数分おきにダイヤルに手を添えてその輝きを眺めてしまうだろう。私も全く同じことをすると思うので、彼らを責めるつもりはない。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Lume Shot
Moonphase Macro

月が昼夜を示すディスク上に浮かんでいる。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Pocket Shot

 私が最も気に入っている新しいデザイン要素は、時刻表示用インダイヤルの数字だ。以前のグランド・ランゲ1 ルーメンでは、数字に夜光塗料がプリントされていたが、本作ではローマ数字とダイヤモンド型インデックスが実際にアプライドされている。これにより、ダイヤルに奥行きが生まれ、光を反射する金属の質感が加わる。またダイヤルの裏側には夜光塗料が塗布され、上のアプライドの形状と調和している。光がない状態では、これら数字の背後にある夜光塗料が発光し、手前の暗い形状に幻想的な輪郭を与える。私はこの見え方が本当に好きだ。そして“ルーメン”らしさを損なうことなく、アプライドインデックスを成立させるきわめて巧みな方法だと思う。これは、夜光塗料のリングで囲まれたムーンフェイズのメタリックな月にも当てはまる。

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 ほとんどのA.ランゲ&ゾーネの時計と同様に、本作のケースバックも見どころのひとつだ。同ブランドの手巻きクロノグラフムーブメントとは異なり、この自動巻きのL225.1は、多くのムーブメントに見られる4分の3プレートのような形状で覆われているが、各セクションは面取りによって美しく区切られている。またランゲの伝統に則り、グラスヒュッテ・ストライプをあしらったジャーマンシルバー製ムーブメントには、ゴールドシャトンにセットされたルビーと、焼き入れによる青焼きネジがふんだんに使われている。さらに、巻き上げローターという魅力的な機構も備えているが、これは18Kホワイトゴールド製で、プラチナ製の巻き上げ錘がねじ込まれている。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Caseback
First Prototype Engraving

左と右のふたつの異なる試作品は、彫刻の仕上がりがどのように異なるかを示している。

Second ptotoype engraving

 ここまで読んできて、もしかすると、この時計にもトゥールビヨンが搭載されていることを忘れてしまったかもしれない。トゥールビヨンは、トゥールビヨンコックと中間車コックという、美しく装飾されたふたつのパーツによって囲まれている。そしてこのキャリバーを初めて見たとき、まず目を引いたのは、このふたつのパーツが放つ色味のコントラストだった。これらはブラックポリッシュ仕上げが施され、星(と流れ星)の幻想的な情景が手彫りされているため、50本限定の各個体はすべて異なる表情になる。別の伝統に従い、トゥールビヨンにはダイヤモンドのエンドストーンが取り付けられている。なぜか? もちろん、できるからだ。時計のなかにトゥールビヨンが隠されているのは、高級時計の世界でもっとも贅沢な自己満足かつ贅沢のひとつであり、ここではダイヤル側のルーメンらしい仕上げを損なわないようにうまく機能している。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Cock Macro

 Cal.L225.1の機械的な性能も、装飾面と同様に(もしかしたらそれ以上に)素晴らしい。この時計を所有するなら、おそらく毎晩、真夜中を過ぎるまで起きていたくなるだろう。というのも、その瞬間にカレンダー表示が瞬時に切り替わるからだ。月末には、月表示リングからレトログラード式の曜日表示、そして大型の日付表示に至るまで、あらゆる要素を動かすために相当なトルクが必要となる。なかでも私がもっとも感心したのは、この大型の日付表示が、2月ですら28日から1日へ瞬時に切り替わることだ。2万1600振動/時(3Hz)のトゥールビヨンはハック機能も備えており、このモデルの特徴のひとつと言えるだろう。現在、ハック機能付きトゥールビヨンを製造しているのはA.ランゲ&ゾーネだけではないが、先駆者であるため、このモデルに搭載されているのはうれしい。

 L225.1の基本設計は、通常のランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーに搭載されるCal.L082.1をベースとしているが、新しい昼夜表示の統合型ムーンフェイズ、ホワイトゴールド製ローター、そして独自デザインのトゥールビヨンコックと中間車コックによって、内部構造にはかなり大きな変更が加えられている。さらに細かく見ていくと、輪列配置そのものも再構成されていることがわかる。そこへ“ルーメン”モデルに必要な追加の夜光塗料やサファイア製ダイヤルなどを加えた結果、部品点数は通常モデルの624個から685個へと増加している。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Ben Wristshot

 この複雑な機構に加え、ルーメン仕様のために特別に開発された改良型キャリバーこそが、この時計に53万ドル(日本円で約8400万円)という驚異的な価格が付けられている大きな理由だろう。もっとも、それでも数年前のダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン “ルーメン”の62万ドル(日本円で約9800万円)という価格よりは低い。しかし今回の価格設定は、33万3000ドル(日本円で約5200万円)のホワイトゴールド製の通常モデルと比べると、かなり大きな差額だ。では、20万ドル(日本円で約3100万円)もの価格上昇は、プラチナケース、昼夜表示が統合された新型キャリバー、そしてたっぷりの夜光塗料に見合うものなのだろうか?

 もし2024年のダトグラフの記事で既視感を覚えるなら、私はマークによるその実機レビューをすすめたい。価格についての議論に関して、彼はきわめて説得力のある主張をしていた。だが、こうした時計に大金を投じられる立場の人間になったつもりで考えてみて欲しい。そうなると、市場にランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー “ルーメン”と本当に比較できる時計など、ほかには存在しないのではないか。ブランド関係者たちと話した限りでは、彼らはこの50本限定モデルを誰に割り当てるかをすでにかなり明確に思い描いているようだった。我々のような一般人には、最初から縁のない世界だ。そしてブランド自身も、この時計をお買い得な提案として売ろうとは、全く考えていない。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Glare Difference

光の当たり方によってサファイアダイヤルが独特な表情を見せる。

 着用してみれば、その理由がすぐにわかるだろう。私はルーメンシリーズの大ファンであることを隠したことは一度もない。なぜなら、ルーメンシリーズは現代のウォッチメイキングにおいて、ランゲの真髄を最もよく体現しているからだ。確かに、ランゲはきわめて伝統的なウォッチメイキングにこだわり続けており、シリコン製のヒゲゼンマイがランゲに採用されることはまずないだろう。しかしルーメンシリーズの洗練された、ほとんど未来的なデザインは、ブランドがひとたび既成概念の外へ踏み出したとき、とんでもないものを生み出せることを改めて感じさせる。個人的には、この時計にローマ数字が組み合わされているのがたまらなく好きだ。時計自体は、約42mmのプラチナ製ケースということもあり、手首ではかなりの存在感を放つ。加えて、ランゲ1特有のデザインがダイヤルの広がりをさらに強調している。しかし厚みのあるストラップのおかげで、そのプロポーションはいくらか落ち着いて感じられる。ありがたいことに、プラチナ製のデプロワイヤントバックルも付属しており、重量のバランスを取るうえで、これはきわめて重要なパーツだ。

 視認性という点では、コントラストは高いものの、ひと目で読み取れるルーメンシリーズのなかで最も読み取りやすいモデルとは言えない。だが、それはある意味避けがたい結果でもある。ランゲ1特有の非対称なダイヤルレイアウトに、この半透明オーバーレイが組み合わさることで、露出した各パーツのあいだに視覚要素が多く存在し、どこを最初に見れば必要な情報を読み取れるのか、目が瞬時には判断しづらいのだ。もちろん、使っていけば読み取りには慣れてくる。しかしツァイトヴェルクのタイムブリッジが持つようなシンプルさや、ダトグラフの中央に配置された針が生む直感性とは異なる。過去2世代のグランド・ランゲ1 ルーメンと比べても、今回は時刻表示用のインダイヤルがより開放的になっており、各要素がキャリバーそのものとより一体化して見える。しかしこのルーメンにはサファイアダイヤルならではの独特な現象がある。角度をつけて見ると反射効果が生まれ、正面から見るよりも針がはるかに際立って見えるのだ。つまりこのランゲ1で時間を確認するなら、真正面からよりも、少し角度をつけたほうがむしろ見やすいということになる。

L1 Perpetual Tourbillon Lumen Wristshot Front Facing

 2024年のダトグラフと、今年のランゲ1 ルーメンをトレンドの始まりと捉えるならば、A.ランゲ&ゾーネはコレクターや2次流通市場でも、これらの特別限定モデルが放つ魅力の重みを十分に理解していると言えるだろう。この点は、同ブランドの標準コレクションの時計にとって常に弱点だった。これは、これまでコレクションのなかでより“標準的”で複雑でないモデルに刺激を与えてきたルーメンシリーズ期の終わりを告げるものであり、ルーメンをさらに複雑で限定的なものにする新世代の始まりを告げるものかもしれない(このモデルとダトグラフはどちらも50本限定だった)。これはA.ランゲ&ゾーネの象徴的な製品であり、ランゲは間違いなくそれを活用している。しかし同ブランドの複雑機構を余すところなく詰め込んだ時計づくりをマキシマリスト的かつきわめてユニークな形で実現した本作は確かに素晴らしい出来栄えだ。

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