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我々が知っていること
今年、A.ランゲ&ゾーネは驚くべき勢いを見せている。昨年はブランド創業30周年とダトグラフ誕生25周年というダブルアニバーサリーイヤーであり、翌年にその熱気を引き継ぐのは決して容易なことではない。しかし今年、グラスヒュッテのチームはあらゆる製品カテゴリーにわたって新作を仕掛けている。ハニーゴールド製オデュッセウスから、34mmというコンパクトなサクソニア、さらにはツァイトヴェルク・デイトの新しいケース素材に至るまで、形もサイズもさまざまだ。そうしたなかで、今年特に全力を注いでいる部門がエナメル工房である。
今年4月のWatches&Wondersでランゲのブースにおける主役、そして時計技術的にも注目を集めたのは、間違いなく精悍なブラックのグラン・フー エナメルダイヤルを備えた新作ミニッツリピーター・パーペチュアルだった。そして今回、ランゲは今年2作目となるエナメルダイヤルの新作を発表した。それが新たな1815 トゥールビヨンであり、それは圧倒的な存在感を放つ。
近年では1815 トゥールビヨンが、ダトグラフやツァイトヴェルクのように大きく話題に上ることは少なくなった。しかし2014年の発表時に、世界初のゼロリセット機構とハック機能を備えたトゥールビヨンとして登場した本モデルは、今なおブランドにとって時計史的に大きな偉業であり続ける。現在では多くの時計にハック機能が標準装備され、非搭載モデルには批判が集まることすらあるが、トゥールビヨンにハック機能を組み込むのはまったく別次元の挑戦だ。たしかにハック秒針の仕組みは基本的にどれも同じで、テンプを止めるためのブレーキ力を加えるという仕組みだが、トゥールビヨンの場合は、テンプを取り囲むケージという物理的な障壁に加え、その質量全体を停止させなければならないという大きな課題がある。
2014年に登場した初代1815 トゥールビヨンで、ランゲはV字型のヒゲゼンマイを考案した。これはリューズを引くとテンプに接触して機構を停止させる仕組みで、リューズを戻すとレバーがヒゲゼンマイを支えるアームを回転させてテンプから離し、テンプは再び振動を開始する。
左側ではゼロリセット用のレバーがトゥールビヨンの秒針に連動したカムを押し下げており、右側にはテンプを停止させるためのV字型スプリングがある。
トゥールビヨンにおけるゼロリセット機構とは、リューズを引いて時刻を合わせる際、60秒トゥールビヨンに取り付けられた秒針が0秒位置にリセットされるというもの。これはクロノグラフのリセット機構と同様に、レバーがハート型カムを押し下げることで実現している。この仕組みがハック機能と組み合わさることで、トゥールビヨンでありながら秒単位で正確に時刻を合わせられる(そして合わせたくなる)ようになる。この“複雑機構”において、実際に正確な時刻表示に焦点を当てている数少ないバリエーションのひとつだ。
今回も手巻きCal.L102.1に搭載された機構は従来どおりで、ケースは39.5mmのプラチナ製。これは過去に登場したリミテッドエディションの1815 トゥールビヨンにも見られた仕様で、最初はシルバーダイヤルを備えた30本限定モデル、次は鮮やかな赤の“12”を配したホワイトエナメルダイヤルで登場した。今回の新作では完全なる自社製造で、洗練された超光沢のブラックグラン・フー エナメル ダイヤルを採用。ダイヤルのベースはホワイトゴールド製で、粉末状に砕いたエナメルを塗布し、焼成を繰り返すことで最終的な外観に仕上げている。
ダイヤルには印刷は一切なく、1815 トゥールビヨンの特徴的なアラビア数字インデックス、ミニッツトラックとセコンドトラック、そしてA.ランゲ&ゾーネのロゴはすべてベースダイヤルにレリーフとして形成され、その周囲をエナメルで埋める手法が取られている。トゥールビヨンの開口部は、このような繊細なエナメルダイヤルにおいてきわめて難易度の高い手作業による面取りで仕上げられており、その内部ではトゥールビヨンブリッジと上部ケージにブラックポリッシュが施されている。
ムーブメントを裏返せばランゲのトゥールビヨンを象徴する意匠、ゴールドシャトンに収められたダイヤモンドの穴石が確認できる。厳格なデザインで知られるブランドにあって、これは小さくも華やかな演出だ。シースルーバックを通してのぞけば、ムーブメントの大部分を覆うジャーマンシルバー製の4分の3プレートが広がり、テンプ受けにはグラスヒュッテ伝統のフリーハンドエングレービングが施されている。
テンプに押し当てられた、ハック用のV字型ヒゲゼンマイ。
A.ランゲ&ゾーネ ブラック グラン・フー エナメルダイヤルを備えたプラチナ製の1815 トゥールビヨンは50本限定で、価格はブランドへの問い合わせによって案内される。
我々の考え
わかっている、私は大のランゲファンだ。偏りがあるのは承知のうえだが、できる限り公平かつ客観的に見ても、これは近年目にしたなかで最も息を呑むリリースのひとつだと思う。お気に入りの1815 トゥールビヨンは1815 トゥールビヨン ハンドヴェルクスクンストだが、この新しいリミテッドエディションモデルは間違いなくそれに次ぐ存在だ。1815 トゥールビヨンは、そのムーブメントだけでも十分にクールな時計であり、遠目には“普通の”トゥールビヨンのようにも見える。オリジナルの登場以降、他ブランドからもゼロリセットやハック機能を備えたトゥールビヨンは発表されているが、このモデルこそが最初にそれを実現した1本なのだ。その点だけでも大きな価値があると感じる。
美観については、私はもう完全に心を奪われている。1815 トゥールビヨンが持つ懐中時計的な意匠と、モノクロームのジェットブラックによるコンテンポラリーな表現とのあいだには不思議な調和が生まれているのだ。このカラーのエナメルはブランドにとって初めての試みではないが、1815 トゥールビヨンのダイヤルが持つ完璧な対称性、途切れのないアラビア数字、そして鮮やかなアクセントとなる大きなトゥールビヨン開口部は、まるで魔法のような佇まいを見せている。
わずか50本の製造で、価格は非常に高額になるのは間違いないだろう(前回のエナメルダイヤルを備えたプラチナ製1815 トゥールビヨンは20万ドル(日本円で約3000万円)弱の設定だったため、今回のモデルはそれを大きく上回ると予想する)。それでも、このモデルはきわめて高い人気を博すと確信している。どうか心臓よ、落ち着いてくれ(そしてゼロリセットしてくれ)。
基本情報
ブランド: A.ランゲ&ゾーネ(A. Lange & Söhne)
モデル名: 1815 トゥールビヨン(1815 Tourbillon)
型番: 730.094F
直径: 39.5mm
厚さ: 11.3mm
ケース素材: プラチナ 950
文字盤色: ブラックグラン・フー エナメル
インデックス: インテグレーテッド
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: 光沢仕上げのブラックアリゲーターレザー製ストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: L102.1
機能: 時・分表示、ハック機能およびゼロリセット機構付き60秒トゥールビヨン
直径: 32.6mm
厚さ: 6.6mm
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 21、うち1石はダイヤモンドエンドストーン
クロノメーター認定: なし
追加情報: 自社製造のひげゼンマイ
価格&発売時期
価格: 問い合わせ
発売時期: 発売中
限定: あり、シリアルナンバー入りの50本限定モデル
詳しくはこちらをご覧ください。
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