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Photo by Reuters/Aflo
今年で第56回を数える、世界経済フォーラム(WEF=World Economic Forum)年次総会がスイス・ダボスで開催された。通称ダボス会議として知られるこの年次総会では、世界中から集った政府、企業、学術界、そして市民のリーダーたちが地球規模の課題を解決するために議論を重ねた。2025年の時計業界は米国によるスイス製品への関税政策、スイスフラン高、金価格の急騰といったさまざまな影響を受け、困難な1年を経験した。私たちイチ時計愛好家でさえ時計という製品を通じて、政治・経済状況の激動の変化を体感することとなった。
さて、そういった政治・経済面における関心と同時に、この年次総会に出席する各国・各分野のリーダーが手元に何を選び取り着用しているか、時計を愛する私たちは注目せずにはいられない。さっそく見ていこう。
仏大統領エマニュエル・マクロン氏/ベル&ロス BR V1-92
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目の炎症をカバーするためティアドロップ型のサングラスを着用しスイスに降り立ったフランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は、普段から愛用する自国の時計ブランドでこの日も愛国者っぷりを見せてくれた。彼のベル&ロスはBR V1-92 ブルースティールをベースに、6時位置にフランス大統領府の紋章にも見える何らかのシンボルをあしらったモデルだ。上の写真は、今回スピーチで国外や数々の問題に対し分別のある姿勢を見せ、注目されたカナダ首相のマーク・カーニー(Mark Carney)氏との対談前、なぜサングラスを着用しているのかという問いに答えているひとこま。ティアドロップ型のサングラスはパイロットのために考案されたという由来を持つため、パイロットウォッチへオマージュを捧げた時計にこれを合わせたのはよい選択だと思う。
ブラックロック会長兼CEO ラリー・フィンク氏/A.ランゲ&ゾーネ ミニッツリピーター・パーペチュアル
眼鏡をかけ、頭に手をやるフィンク氏の左手に注目したい。Photo by Reuters/Aflo
ブラックロックは1988年にニューヨークで設立された、2024年時点で運用資産残高が10兆ドル(当時のレートで約1500兆円)を超える世界最大規模の資産運用会社だ。8人の設立メンバーのうちのひとり、ラリー・フィンク(Larry Fink)氏は、A.ランゲ&ゾーネ ミニッツリピーター・パーペチュアルを着用する圧巻の出で立ちで登場した。同社で会長とCEOを務めるフィンク氏は現在、世界経済フォーラムの理事会共同暫定議長でもある。そのような社会的地位のある人物が、世界限定50本の時計を腕にしているのは見ていて楽しい。また、彼は普段からロレックス サブマリーナーやIWC ビッグ・パイロット・ウォッチ43・トップガンだけでなく、A.ランゲ&ゾーネのオデュッセウスやツァイトヴェルク・ストライキングタイム、ランゲ1・トゥールビヨン(恐らく世界限定250本のRef.704.032)を愛用しており、生粋のA.ランゲ&ゾーネ愛好家のひとりに挙げられると思う。
ベルギー フィリップ国王/ロレックス GMTマスター Ⅱ
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立憲君主制国家のベルギーからは、2013年に父アルベール2世から譲位を受けて以来、国王を務めるフィリップ国王も参加した。彼の手首には、ロレックス GMTマスター Ⅱ“バットマン”が確認できる。
UBS CEO セルジオ・エルモッティ氏/オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル
Photo by Reuters/Aflo
2023年3月にクレディ・スイスが実質破綻した際、UBSが救済買収したのは記憶に新しいが、セルジオ・エルモッティ(Sergio Ermotti)氏はその大規模な金融合併のためにCEOに再登板した人物だ。高校卒業後に銀行で見習いを始め、その後数々の有名金融機関でキャリアを積んだたたき上げの彼だから、社会的地位を獲得した今でも多くの人に愛されてきた比較的手頃な価格のアイコニックウォッチのひとつ、スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルを選ぶのも自然と納得できる。また、2012年頃にはロレックスのホワイトダイヤルを備えたデイトナを、2018年にはブラックダイヤルを備えたデイトナを着用していたのが確認できる。回り道をせず支持の厚い時計を選ぶ姿にも、彼の合理的で堅実なスタンスが見て取れる気がする。
元プロサッカー選手 デビッド・ベッカム氏/2本のチューダー
20日のベッカム氏。Photo by Anadolu/Getty Images
21日の同氏。Photo by AP/Aflo
2004年からユニセフ親善大使を、2017年からチューダーのブランドアンバサダーを務めるデビッド・ベッカム(David Beckham)氏はダボス会議に参加した2日間で、異なる2本のチューダーウォッチを披露してくれた。1本目は2025年のドバイウォッチウィークで初登場したデューンホワイトダイヤルが印象的なレンジャーだ。そして翌日には2本目となる、アイコニックなフラミンゴブルーダイヤルを備えたブラックベイ クロノを着用していた。
AB インベブ アフリカ地区社長リカルド・タデウ氏/シチズン プロマスター アクアランド
右に映るタデウ氏の手にはビールとシチズンが。Photo by Stuart C. Wilson/Getty Images
バドワイザーやコロナビールを扱う、800年の歴史を持つ世界最大の醸造会社アンハイザー・ブッシュ(AB)・インベブ。同社のアフリカ地区社長リカルド・タデウ(Ricardo Tadeu)氏は、国際的な非営利団体Water.orgの共同創設者であるゲイリー・ホワイト(Gary White)氏(写真左)、俳優のマット・デイモン(Matt Damon)氏(写真中央)と共にパネルディスカッションを主催した。ベルギー産のステラ アルトワを持つ手元には、シチズン プロマスター アクアランド エコドライブの海外モデル BJ2040-55Eが見られる。このような場で自国ブランドを目撃でき日本人としてうれしい。
シスコシステムズ会長兼CEO チャック・ロビンズ氏/パテック フィリップ Ref.5370P-011
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米国のネットワーク大手企業であるシスコシステムズの会長兼CEOを務めるチャック・ロビンズ(Chuck Robbins)氏は、パテック フィリップ Ref. 5370P-011を着用。ほかにも普段はカラトラバを着用している姿が目撃されている。
アリアンツCEO オリバー・ベイト氏/ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6263
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ドイツ・ミュンヘンに本社を構える保険会社アリアンツのCEOを2015年から務めるオリバー・ベイト(Oliver Bate)氏は、ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6263を着用。ゲッティイメージズの検索結果で確認すると、少なくとも2014年にはすでに所有していたと思われる。彼が10年以上愛用するデイトナは、ダイヤルにあしらわれたブランド名やモデル名が3列であることが確認でき、“Daytona”表記無しのモデルだろう。
スティーブ・ウィトコフ米特使/ジャガー・ルクルト マスター・ハイブリス・メカニカ
不動産王であり、現在ではトランプ政権で中東担当特使を務めるスティーブ・ウィトコフ(Steven Witkoff)氏は普段からローズゴールド製のノーチラスやターコイズブルーダイヤルを備えたコスモグラフ デイトナ、プラチナ製のオーデマ ピゲ リミテッドエディション Ref.25923PT/O/0022CR/01を愛用するなど、熱心な時計愛好家であるようだ。今回彼が選んだのは、ジャガー・ルクルト マスター・ハイブリス・メカニカ キャリバー362。世界限定5本のマスターピースで、わずか7.8mmのケースにミニッツリピーターと特許取得のフライング・トゥールビヨンを搭載したモデルだ。
ジャレッド・クシュナー氏/カルティエ YG製のタンク
英国の政治家トニー・ブレアとハグをするクシュナー氏(右奥)。Photo by Reuters/Aflo
ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の娘イヴァンカ・トランプ(Ivanka Trump)氏の夫で娘婿であるジャレット・クシュナー(Jared Kushner)氏は実業家でもあり、昨年9月の『Forbes』誌に資産が1470億円に到達したと報じられていた。そんな彼が選んだのは、カルティエのアイコンウォッチのひとつであるタンク。華やかなトランプ家のイメージからすると、彼がクラシカルでエレガントな正統派ウォッチを着用していたことは印象的なサプライズだった。
サウジアラビア観光大臣 アフメド・アル・ハティーブ閣下/H.モーザー パイオニア・シリンドリカル トゥールビヨン スケルトン
Photo by AMIT LAVEE/World Economic Forum/Photoshot/Aflo
アフメド・アル・ハティーブ(Ahmed Al Khateeb)閣下は、H.モーザー パイオニア・シリンドリカル トゥールビヨン スケルトンRef.3811-1200を着用していた。2022年に登場した美的にも技術的にも優れた本モデルは、7万9000スイスフラン(当時のレートで1127万5000円)で販売されていた。アフメド・アル・ハティーブ閣下が身に着けると、石油大国の華やかさや豊かさを反映したかのように見える。
エジプト・アラブ共和国大統領 アブドゥルファッターハ・エルシーシ氏/ロンジン ラ グラン クラシック ドゥ ロンジン
トランプ米大統領との会談時のエルシーシ大統領。Photo by Chip Somodevilla/Getty Images
大統領就任前のアブドゥルファッターハ・エルシーシ(Abdel-Fattah El-Sisi)氏は、エジプト国軍士官学校を卒業したのち、国防武官、指揮官、そして国防相に就任するなど生粋の職業軍人エリートだった。そんな彼はロンジンが作るエレガントなドレスウォッチ、ラ グラン クラシック ドゥ ロンジンを着用している。恐らく着用モデルは38mmの自動巻き Ref.L49184112だろう。
コチ・ホールディングCEO レヴェント・チャキロール氏/ ロレックス デイトジャストII
Photo by Anadolu/Getty Images
レヴェント・チャキロール(Levent Cakiroglu)氏はトルコの名門アンカラ大学政治学部を卒業後、財務省で勤務し、2015年からトルコの民間財閥コチ・ホールディングのCEOを務めている。彼が着用するのは、ロレックス デイトジャストIIのホワイトゴールドのコンビだ。彼は以前、コンビのサブマリーナーを着用していたが、ロレックスのコンビモデルが好みなのだろうか。
ポーランド大統領 カロル・ナブロツキ氏/ブウォニェのポーラン 2
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自国第一と述べるカロル・ナブロツキ(Karol Nawrocki)大統領は自国ブランドであるブウォニェ(Błonie)のポーラン 2(Polan 2)を着用していた。この200本の限定モデルは自動巻きムーブメント ミヨタ製8315を搭載し、ブウォニェの時計を製造してきた工場や、ポーランドの工業デザインからインスピレーションを得たとブランドは説明する。価格は約1990ズウォティ(日本円で約8万6000円)で、社会的地位がありながらも手頃なモデルを愛用している点に強い愛国心を感じる。
アルメニア大統領 ヴァハン・ハチャトゥリャン氏/シチズン AW1780
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ヴァハン・ハチャトゥリャン(Vahagn Khachaturyan)大統領は、2022年3月にアルメニア共和国大統領に就任。ハイテク産業相など政治の要職を歴任するとともに、金融・産業分野や学術、シンクタンクにおいても幅広い経験を持ち、現在はアルメニア国立経済大学の理事長も務めている。そんな彼の手首には、シチズンのエコ・ドライブを搭載した海外向けモデルAW1780-09が見られる。偶然だろうが、ロシアへの電力依存から脱却するべく太陽光発電に力を入れようとしている同国だが、光で発電するエコ・ドライブウォッチを選んだ背景には、何か意図があるのだろうか? また、アゼルバイジャンとの紛争が続くなか、国家のトップが手頃な価格でありながら実用性の高いモデルを選んだというところには納得感がある。
アゼルバイジャン大統領 イルハム・アリエフ氏/TOY WATCH Velvety
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前述のアルメニア大統領と会談中のイルハム・アリエフ(Ilham Aliyev)大統領の手首にはイタリアの時計ブランド TOY WATCHより、ケースとダイヤルのブラックとコントラストを成すイエローのアクセントカラーが印象的なVelvety VV03BKが確認できる。このセレクトは、特に国際的な場において少し疑問が残るが、何か特別な思い入れがあるのだろうか? 彼はこれを少なくとも2014年から所有しており、最近だとトランプ米大統領との対談など、あらゆる場面でこの1本を着用している姿が目撃されている。
バーティ・グループ会長スニル・バーティ・ミタル氏/アップルウォッチ
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最後に、スマートウォッチ派から2名紹介する。1人目はインドを本拠地に置き、主に通信サービス事業を展開するバーティ・グループの会長スニル・バーティ・ミタル(Sunil Bharti Mittal)氏。同社の会長であり資産家の彼は、無数に与えられた選択肢のなかから、自身の事業分野とハイテクなスマートウォッチが共鳴したからなのか、アップルウォッチを着用していた。
マイクロソフトCEO サティア・ナデラ氏/ガーミン
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2人目はサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏で、高精度のGPSを搭載するガーミンを着用している。
今回の年次総会はアップルウォッチを筆頭に、スマートウォッチの人気が高かった。彼らのようにIT・通信分野で活躍する人物だけでなく、実業家やコンサルタント、バンカーといったかつては仕立てのよいスーツにドレスウォッチを身に着け働いていたエスタブリッシュメント層の人々もきわめて利便性が高く、そしてすべての人に開かれているがゆえに人となりや経済状況が判断されにくいスマートウォッチという製品を選び取っているようだ。その先駆けとも言えるデジタルウォッチを生み出したカシオ、そしてそれを自己に関する属性が“判断されにくい”というアイデンティティへと発展させたアップルは、時計の認識を変えるという革命を起こしたのかもしれない(スマートウォッチの簡潔な歴史についてはこちらから)。
中央にいるのは左からアップルCEOのティム・クック(Tim Cook)氏、顔が隠れているがエヌビディアCEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏、欧州中央銀行総裁のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)氏。Photo by Chip Somodevilla/Getty Images
階段を上るトランプ米大統領と、取材班たち。Photo by Chip Somodevilla/Getty Images
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