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Photos by Mark Kauzlarich
2月初旬、オーデマ ピゲはスイスのアンデルマットに世界各国のジャーナリストを招き、没入型の年次イベントであるAPソーシャルクラブを開催した。私のような時計ジャーナリストは、今年前半に発表された新作について説明を受け、オーデマ ピゲのチーフ インダストリアル オフィサーのルーカス・ラッジ(Lucas Raggi)氏や、ウォッチコンセプト部門のディレクターのジュリオ・パピ(Giulio Papi)氏といったブランド幹部と、カジュアルでインフォーマルな会話を交わす。また、我々は新作のネオ フレーム ジャンピングアワーや38mmのロイヤル オーク クロノグラフを、いち早く実機レビューする機会にも恵まれた。
アンディ・ホフマンは、すでにオーデマ ピゲ CEOのイラリア・レスタ(Ilaria Resta)氏と対談しており、その内容は昨年12月に公開されたばかりだ。しかし今回発表された真新しいコレクションは、ブランドから声がかかったこともあり、あらためてインタビューを行うに十分な理由となった。
あのポッドキャストがドバイウォッチウィークで収録されて以来、多くのニュースがあった。オーデマ ピゲは昨年末、サザビーズで、歴史的に複雑な懐中時計の“グロス ピエス”を記録的な773万6000ドル(当時のレートで約12億1200万円)で落札し、アンデルマットで開催されたAPソーシャルクラブで誇らしげに展示された。そして今年、彼らは驚くほど複雑な懐中時計で再び我々を驚かせた(レスタ氏によれば、発表時点で1本約230万スイスフラン/日本円で約4億6000万円以上の本作は、8本という受注数をゆうに超えるほどの関心が集まっていたという)。
また、2020年以来初めてとなる新コレクション、ネオ フレーム ジャンピングアワーも発表された。ブランドの最も印象的な時計のいくつかを世に送り出してきたRDプロジェクトは、ファブ ラボ(Fab Labs)と呼ばれるものに再編成された。これらの小規模なワークショップは、素材の研究開発やウォッチメイキングなどを中心に据え、より迅速かつ柔軟に対応できるようにすることを目的としている。その一環として、ブランドはカーボンファイバー製の38mmロイヤル オーク コンセプトのプロトタイプ(ブリッジからケース、さらにブレスレットまでフルカーボン製で、私が知る限りコンセプトコレクションではこれまでになかった試みだ)や、2年前に初めて披露したカモフラージュゴールドのロイヤル オーク(居合わせたほとんどの人が製品化を熱望していると私に語ってくれた)、そしてロボットによるテスト能力などを披露した。
しかし、すべてが順風満帆だったわけではない。ネオ フレーム ジャンピングアワーは、控えめに言っても賛否が分かれた。だがレスタ氏は多くのCEOよりも、建設的な意見をはるかに歓迎しているように見える。実際、イベント前夜のウェルカムディナーでレスタ氏は私に近づき、ネオ フレームについてどう思うか尋ねてきた。私はまだ実機を見ていないが、サイズ感に少し不安があると伝えたところ、彼女はそれを動じることなく受け止めた。翌日、彼女は約10分間の挨拶で我々を歓迎し、その後、私との1対1のインタビューの前に、アメリカのプレス向けに15分間のインタビューに応じた。
“パフォーマンスは目的から切り離すことはできません。そしてオーデマ ピゲの目的は、家族経営の企業であり続けることです”
– オーデマ ピゲ CEO イラリア・レスタレスタ氏は、アンディ・ホフマンとのインタビューで言及されたいくつかのトピックについて繰り返し触れ、さらに詳しく述べた。そのなかには、2025年に前年比10%の成長を見込んでいること、購入者の11%がZ世代であること、そして女性が2025年にブランドで最も急成長したセグメントであったことなどが含まれる。彼女はこの事実を、女性を型にはめないブランドの姿勢に起因するものだと考えた。ブランドは顧客を問わず、コンプリケーションや素材、イノベーションを重視しており、その一環として、コンプリケーションの操作性を高めることで実現されるエルゴノミクスにも取り組んでいる。最後に彼女は、ブランドが前進するための3つの柱として、卓越したウォッチメイキング技術、顧客層への世代を超えたアプローチ、そして徹底した透明性を挙げた。
後者についてレスタ氏は、新しい方法で顧客と関わること、顧客が頻繁に悩みの種として挙げる入手の障壁を取り除く手助けをすること、そして新しい世代を(顧客または将来の専門家として)ウォッチメイキングの世界に引き込むことを指摘した。その徹底した透明性に則り、私はレスタ氏に米国独占の1対1インタビューを行い、その全容をここでお届けする。なおこのインタビューは、わかりやすさを期すために編集されている。
オーデマ ピゲ CEO イラリア・レスタ氏へのインタビュー
マーク・カウズラリッチ(以降M.K.): 朝のご挨拶で最初に「パフォーマンスは目的と切り離すことはできません。そしてオーデマ ピゲの目的は、家族経営の企業であり続けることです」とおっしゃったのがとても興味深かったです。その独立性を再確認することが、なぜそれほど重要だったのでしょうか? オーデマ ピゲに買収のオファーがあったのでしょうか、それとも市場全体の何かがそのような発言を促したのでしょうか?
Photo courtesy Audemars Piguet
イラリア・レスタ氏(以降I.R.): いいえ、その意図は、企業のパフォーマンスを評価する際に、価値創造は企業のガバナンスと意図、そして使命に左右されるということです。私たちは非上場企業であり、今後も長期的に非上場企業であり続けたいと考えているため、私たちにとって、将来にわたり独立性を維持するための強固な基盤を築くことが重要です。つまり急激な変動ではなく、有機的で安定した成長を目指すということです。しかしパフォーマンスには浮き沈みがあるため、単に目先の企業経営をうまく行うだけでなく、超長期的な視点での投資も必要であるということです。
ひとつ例を挙げましょう。私と経営陣は、2040年に向けたビジョンと計画の策定をちょうど終えたところです。ほかの企業では、このようなことは簡単にはできません。2040年のビジョンを実現するには、一定の投資と選択が求められます。特に製造面では、製造能力を構築したり、どの地域に進出するかを決定したりするのに何年もかかるからです。そしてそれが、弊社が存在する理由なのです。そしてもし弊社の目的が独立性にあるならば、短期的に、あるいは中期的に見ても財務的に理にかなわない選択をしているように見えても、きわめて長い目で見れば、それは大いに意味のあることなのです。
M.K. : 同時に、適応力の重要性についても議論してきました。私が少し耳にした“ファブ ラボ(Fab Lab)”は、適応力を高める機会を提供することを目的としています。トレンドに素早く対応しようとすると、そのトレンドを逃すリスクが多くあるこの分野で、適応力と長期的な視点を維持することのバランスをどのようにお考えですか?
オーデマ ピゲのケース用にテストされた、プリントやパターンが施されたセラミック。これは、ブランドのファブ ラボを通じて、今後の製品開発に採用され得る新たな製造能力を示している。
I.R. : 方向転換できるだけの俊敏で幅広い能力を鍛える必要があると思います。具体的な例をひとつ挙げましょう。戦略とはガードレールのようなものです。道路のどちらの方向に進むべきかを大まかに示し、ビジョンがその方向性を示します。私たちは独立していたいと思っています。そのガードレールのなかで、方向転換したり変化したりするために、特定の能力を自ら獲得し、開発する必要があります。
例えば、戦略のひとつがコンプリケーションの強化であれば、その数を増やし、新たなものを発表します。ウォッチメイキングのレベルを高めることだとすれば、それに適応するために、より多くの時計師、そしてあらゆるタイプのコンプリケーションに対応できる時計師を養成すべきです。そうすれば、何らかの理由で懐中時計を増やし、グランドコンプリケーションを減らす必要が生じた場合でも柔軟に対応できます。そのための人材を育成しなければ、行き詰まってしまい、対応できなくなります。時計師を数週間や数カ月で育成することは不可能なのです。
M.K. :その話から、私が話をしたかったふたつの方向性が浮かび上がってきました。ひとつは、ウォッチメイキングとその才能について言及されたことです。多くのCEOから懸念の声を耳にするのは、時計学校の現状です。多くの時計学校の目的は、製造工程における工業部品のような役割を担う人材を育成することにあるようです。先ほど、オーデマ ピゲが運営しているエコール・ド・サヴォアールフェール(École de Savoir-faire)という学校についてお話されました。エルメスには皮革工芸レザークラフトの学校があることは知っていましたが、オーデマ ピゲの学校については初めて聞きました。これは新しいプログラムなのでしょうか?
ル・ブラッシュにあるオテル デ オルロジェ(Hôtel des Horlogers)と、ミュゼ アトリエ オーデマ ピゲ(Musée Atelier Audemars Pigue)を含むオーデマ ピゲのキャンパスの一部。Photo by Mark Kauzlarich for Hodinkee
I.R. : 私たちはこれまでも人材育成や指導を行ってきましたが、エコール・ド・サヴォアールフェールでは、彫刻やセルティサージュ(sertissage/宝石セッティング)、装飾といった、より高度な専門技術を要するサヴォアフェールにさらに力を入れています。現在ではセラミックも自社で製造しています。このように、これまで手がけていなかった、より広範な専門分野を網羅しようと努めています。
また私たちが行っているのは、顧客サービス部門と製造部門に所属する時計職人の交流を、これまで以上に活発に行うことです。なぜか? それは顧客サービス部門の時計職人は、私たちが決して目にすることのない時計を見るからです(レスタ氏は微笑む)。なかには1本しか作られなかった時計もあり、その存在は知っていても、作られてから一度も分解したことのない時計もあります。そこから新たな発見や学びを得ることができるのです。
アンデルマット開催のAPソーシャルクラブで展示された“グロス ピエス”。
私たちは“グロス ピエス”を購入したばかりです。それを見るだけでも私たちにとっては大きな意味を持ち、また、ほとんどの人が見たことのないものです。こうした時計の修理を行い、製造部門を渡り歩いてきた時計師は、貴重な知識や専門技術をもたらし、さらには新たな発想の源泉となります。そのため専門化に依らないという私たちの方針は(職人を特定の分野に固定しない分)、人材の育成と指導により多くの時間がかかることを意味します。しかしその過程で創造性や新しい発想、スキルが育つため、結果として人材が柔軟かつ迅速に部署間で横断できるようになるのです。
M.K. : つまりこれは現在進行形なのですね。長年にわたり、より複雑な時計への需要が高まるなかで、若い時計師の育成により多くの時間を投資するようになったという変化はありましたか?
I.R. : どちらもあるでしょう。私たちが時計を提供すると、それを求める人々がいますが、いわば“鶏が先か卵が先か”という関係だと思います。実際にはほとんどの場合、人々が求めてさえいなかったものを私たちが発表し、そしてその発表に彼らが惹きつけられるのです。私が懐中時計に期待していることも、まさにそれです。誰も“複雑な懐中時計が欲しい”とは頼んだわけではありません。しかし、関心を抱いていた人はいたかもしれません。私たちがそれを形にし、発表し、プレゼンテーションした今、“信じられない、ぜひ1本欲しい”といった声が数多く寄せられました。私自身も思わず“まだ発表したばかりなのに”と思ったほどです。
ユニバーサルカレンダーのケースバックを備えたオーデマ ピゲ “150周年ヘリテージ” 懐中時計。
M.K. : 私は記事中で、このような複雑な懐中時計の製作依頼を受けることはあるのかと数年前からオーデマ ピゲに尋ねてきたと書きました。答えはノーではなく、「わかりません。様子を見ましょう」というものでした。ところが突然、それを発表しました。それは今では、“私たちはこうしたいからやっており、需要はあとで証明します”という別の言い方のように感じられます。
I.R. : ええ、そのとおりです。私たちは素晴らしい時計だと信じているからこそ、時計を作るのです。実際、私たちはオーデマ ピゲのミュージアムのために1本製作しました。それは私たちがその時計にとても大きな価値があることを信じているからです。そしてそれは複雑な懐中時計の系譜に連なるものであり、“グロス ピエス”に続く流れのなかに自然に収まる存在です。
M.K. : 今朝、あなたが言及されたもうひとつのことはサプライヤーについてです。あなたは独立性について話しましたが、サプライヤーは依然として重要であり、大きなプレッシャーにさらされています。特に景気の変動が大きい時期には、ブランドはもう少し簡単に適応できるかもしれませんが、サプライヤーはそうはいきません。あなたはスイスのマイクロメカニクス企業であるInhotechの筆頭株主になりましたが、私の理解では、彼らがブランドに提供していたものは、必ずしも不可欠なものではなかったように思います。では、なぜその会社を買収したのでしょうか? そして、なぜ競合他社も利用できるようにしたのでしょうか?
ますます近代的なサプライヤー施設で埋め尽くされていくジュウ渓谷の風景。 Photo by Mark Kauzlarich for Hodinkee.
I.R. : 私が知る限り、市場にはサプライヤーなしで生き残れるブランドはありません。たとえ“我々は完全に独立している”と語るような珍しいブランドでさえ、そうではありません。ですから、私たちはきわめて長期的な視点を持ち、もしサプライヤーに最悪の事態が起こった場合、この業界は計り知れないほど深刻な窮地に陥ることを認識する必要があります。また独立系ブランドや小規模ブランドが、この業界に活気と熱気をもたらしていることも忘れてはなりません。つまり私たちは皆、互いを必要としているのです。私は他のブランドを“競争相手”とは見ていませんが、すべては私たちの手にかかっています。
なぜか? それは率直に言って、サプライヤーがこのような状況に陥っている理由は、私たちが需要と供給の管理において少し無責任だったからです。私たちは(需要の)増加を見ました。そしてサプライヤーに人材や機械への投資を求め、過剰な発注をしてきました。なかには、ブランドと正式な契約を結んでいないサプライヤーもおり、それは握手で済ませるような取引で、とても小規模な業界なのです。しかし突然、発注がキャンセルされる事態に陥った。これはサプライヤーが私たちに語った話です。
クロノグラフモジュールで知られるデュボア・デプラにおけるプレゼンテーション。同社は、オーデマ ピゲ製のムーブメント Cal.4401が登場する以前、オーデマ ピゲのCal.3126/3840に採用されていたモジュールも手がけていた。
注文がキャンセルされ、その後数カ月間、注文の見通しが立たなくなった。真っ暗闇です。注文が来るかどうかもわからない。そのあいだに何をすればいいのか? 彼らは従業員を抱え続け、これらの注文が来ないことに気づくまで持ちこたえました。なぜかと言うと、在庫が至るところにあるからです。ちなみに、多くのブランドはそのことに気づいてさえいませんでした。なぜなら、私たちはサプライチェーン全体を管理していないからです。時には何年分もの在庫を抱え、まったく見通しが立たない状況に陥ることもあります。これらのサプライヤーはいつ、あるいはそもそも注文が再開されるのかさえわからなかったため、労働時間を短縮するプログラムを開始しました。場合によっては、従業員を解雇する必要もありました。そしてそうこうしているうちに、資金が底をついてしまうこともあるのです。
オーデマ ピゲの製造施設で働く従業員たち。Photo courtesy Audemars Piguet
これは悲劇的ではありますが、とても単純な話です。もし私たちがサプライヤーに見通しを与えず、約束を守らなければ、彼らは事業を継続できません。この事例から私は、今の状況がすべて落ち着いたとき、私たちはいくつかの教訓を学ばなければならないと強く感じています。私たちは皆、サプライヤーにプレッシャーをかけました。私たちが要求したものを時間どおりに納品するように強要し、そして完全に納品しなかったサプライヤーは罰しました。そして彼らは結局、巨大な機械と多くの従業員を抱えることになったのです。私たちは、すべてのサプライヤーを支援できるほど大きなプレーヤーではありませんし、それが私たちの戦略でもありません。それは不可能です。しかし業界には、Inhotechやほかの企業のような、市場に代替品が存在しないほど専門性の高い重要なサプライヤーを支援し、失わないようにする責任があると思います。
M.K. : これを実行したのはオーデマ ピゲだけではありませんが、あなたたちがサプライヤーを支援したり買収したりするために行動を起こしたのは今回が初めてではありません。ルノー エ パピのことを思い出します。設立当時は大きな影響力がありましたが、6年後にはオーデマ ピゲからの過半数投資を受け入れました。オーデマ ピゲにはこうしたことを厭わず、さらにそのサプライヤーがオープンマーケットで活動し続けることを許容する、特別な“何か”があるのでしょうか?
オーデマ ピゲの時計師だったジュリオ・パピ氏とドミニク・ルノー(Dominique Renaud)氏は、コンピュータ化されたデザインとCNCマシンに特化した専門の研究開発部門を設立することを決意した。ルノー エ パピは1986年に設立され、1992年にオーデマ ピゲはハイコンプリケーションムーブメントの専門知識を確保するために同社の株式の52%を買収した。同社はオーデマ ピゲ ルノー エ パピとなり、最近ではオーデマ ピゲ ル・ロックルとなった。Photo courtesy Dominique Renaud
I.R. : 私(の決断や方針)について話しているわけではありませんが、オーデマ ピゲに長年、本当に長いあいだ、信じられないほど強く根付いてきた精神があると言えます。私が知り、見てきたこと、そして私自身が(オーデマ ピゲの)さまざまな人々と交わしてきた会話からも一貫して感じられるのは、私たちは業界全体のよりよい未来のためにここにいる、という考え方です。私たちはサプライヤーなしではここにいられません。だからこそ、私たちは彼らを支援していくのです。そしてこのような真摯な関心を持つ精神は、オーデマ ピゲに何十年も存在しており、私はそのような会社で働けることをとても誇りに思っています。なぜなら、そのようなことはめったにないからです。しかし真摯な関心は持っていても、問題は、私たちは世界を救えるほど大きくないということです。ですから、30~40年前の大惨事を繰り返さないようにしなければなりません。いや、もう50年前ですね。時間が経つのは早いものです。私はクォーツ危機の最中に生まれました。ですから、それを避ける必要があるのです。
それは企業理念の一部です。だからこそ、目的とパフォーマンスは密接に関連していると言うのです。私たちは今年も10%、15%と成長することもできたでしょう。需要はありますから簡単です。しかし、それは正しいことでしょうか? 答えはノーです。なぜならまず第一に、イノベーションに投資しなくなるからです。特定の能力において、私たちには限られたリソースしかないので、すべての人を製造に全力で投入することはできません。「新しい開発や新しいコンプリケーションに投資したい」と言いながら、サプライヤーに対して今のように、彼らを常軌を逸して酷使し(そして製造を押し付け)、そして突然彼らを必要としなくなる、というようなことを続けるわけにはいきません。
チタンとバルク金属ガラスを採用した、新しいロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー オープンワーク。
M.K. : 供給と需要は、今朝あなたが言及されたもうひとつの点、つまり徹底した透明性とエクスクルーシブであることの関係につながります。これは、ブランドとして入手可能性をどのように伝えるかについて議論するよい機会だと思います。最近、私たちのコメント欄で、パーペチュアルカレンダーをふらっと店に入って手に入れることができないなんて信じられないと言う人がいました。これらの製造数はとても限られているので、その意見は少し的外れだと思いますが、時計へのアクセスに関するコミュニケーションは改善の余地があると思います。しかし一部の人々は総生産量、需要、そしてあなたが先ほどおっしゃったように、最も需要の高いモデルや複雑なモデルをすべて生産することができない、あるいはしたくない理由を理解したいと思っている人もいるでしょう。
I.R. : 生産量について少し単純化して考えてみましょう。大体5万個の時計を生産しています。10%増減しても、(その範囲内に)収まります。モデルごとの平均を取ると(特定のモデルではなく)、需要は4倍から10倍になります。ですから、10倍の需要には対応できないことは想像に難くないでしょう。生産量を増やして需要に応えることはできるでしょうか? いいえ、たとえそうしたくても、時計職人も設備も不足しています。現在手作業で行っていることを機械で行う必要が出てきますが、たとえ機械でやろうとしてもできません。つまり、そもそも不可能なのです。これは産業的な選択であると同時に、そうせざるを得ない状況でもあります。生産を増やすことはできません。それが事実なのです。
最近発売され、ブランドで最も人気の高いモデルのひとつであるロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク “ナイトブルー、クラウド50”。
もし1本を販売し、4本の需要があれば、3人の顧客ががっかりするでしょうか? 確かにそうでしょうが、私たちは説明し、そのプロセスをていねいにサポートする必要があります。私たちが今目指しているのは新たにブランドに触れる方々や、初めて購入する方々に新たな機会を提供することです。これは不満を軽減し、若い世代や新しい顧客を取り込むために意図的に行っていることです。そうでなければ、いつも同じような層の人ばかりになってしまいます。しかし、これが私たちが下した製造上の選択の現実です。ブティックに訪問した顧客に説明を聞いてもらえれば、それは人為的に課せられた制限ではなく、選択の結果であり、品質に基づいた制限だとおわかりいただけるでしょう。
各モデルの平均を取ると、需要は4倍から10倍になります。ですから、10倍の需要には対応できないことは想像に難くないでしょう。…私たちが今取り組んでいるのは、新たにブランドに触れる方々や、初めて購入する方々に新たな機会を提供することです。
– オーデマ ピゲ CEO イラリア・レスタM.K. : それはコミュニティとのエンゲージメントという話につながりますね。オーデマ ピゲの皆さんはWatches & Wondersへの出展をとても楽しみにしているようですが、私の理解では、多くの新作を今回のアニバーサリーで発表したので、見本市には参加するものの、そこではあまり新製品を発表しないということでしょうか。多くのブランドはそうはしないでしょう。では、なぜそんなに出展を楽しみにしているのですか?
I.R. : 私はとてもわくわくしています。150周年記念のために開催した展覧会で、その力強さを実感しました。これらの展覧会は、オーデマ ピゲの物語とウォッチメイキングの歴史の発見に関するもので、ここでご覧いただいたプレゼンテーションの一部も含まれています。展覧会や(美術館から持ち出した)すべての展示品を見てわくわくし、何か購入する予定のものはあったでしょうか? ないでしょう。しかしルーブル美術館へ行き、そこで絵画展を見たとき、興奮しますよね? 私にとってウォッチメイキングはまさにそれです。ウォッチメイキングはとても楽しいものであり、文化的、歴史的、芸術的なものに深く関わることができるのです。そのブースで1時間半過ごすだけで、エネルギーの流れや、さまざまな技術によって素材がどのように変化し、鍛造されるかを理解できるのですからとても刺激的だと思います。
ドバイウォッチウィークで開催されたオーデマ ピゲ150周年記念展の内部。
そこには、ふたつの世界があります。ひとつは、観客として実際に触れ、必ずしも購入を目的としていなくても、その体験自体を楽しむ人々の世界です。私たちがウォッチメイキングをアートのように、あるいは場合によっては自動車(のデザイン)のように扱えば扱うほど、それはよりおもしろくなります。フェラーリを夢見る人が何人いて、実際にフェラーリを買う人が何人いるか、例を挙げるだけです。それが私の夢であり、私たちの夢です。Watches & Wondersでは、素晴らしい作品をフィーチャーした展示会をご覧いただけます。値札に“担当者にお声がけください(Come and talk to the representative)”と書かれている製品はありません。それは、私たちがそこにいる理由ではありませんから。
M.K. : 懐中時計についてのプレゼンテーションをしたとき、私はこう言いました。「わかっています。あの価格で、あの本数では、ごく一部の人々にとってのみ現実的な話です。それ以外の人にとっては空想上の話に過ぎません」と。しかしそれでもそれを見たり、研究したり、ガラス越しや写真で見たりすることはできます。そして私たちはそれを実物として見ることができますが、所有者が体験するのと同じ方法で体験することはできません。しかし、それによって興奮が薄れることはあるでしょうか?
I.R. : そのとおりです。そして、どれだけ多くの人が懐中時計の写真を開いてスクロールし、拡大して、そのメカニズムがどのように機能するかを理解しようと夢見ているかご存じですか? それこそが私たちが追い求めているものです。つまり、私たちが生み出したいのは情熱であり、それこそがこうした展示会を行う理由なのです。私たちはあの懐中時計をより多くの人に見て欲しいのです。
M.K. : 最後の質問として、少し立ち返えりましょう。この度、ネオ フレーム ジャンピングアワーが発表されたことで、オーデマ ピゲの未来、そしてあなたたちがどのような企業であり、どのような存在になり得るのかについて多くの質問を受けています。人々がオーデマ ピゲが今後どうなるのか、その製品で何を伝えようとしているのか、そして今後数年間で誰にアプローチしようとしているのかを想像できるように、彼らの心のなかにどのようなフレームワークを築いて欲しいでしょうか?
I.R. : オーデマ ピゲには多面的であって欲しいですし、私たちの物語に根ざしたウォッチメイキングのあらゆる側面を表現したいと思っています。より多くのコンプリケーション、より多くの芸術性、私たちのサヴォアフェール、より多くの装飾、そしてより多くのシェイプ。普遍的なオーデマ ピゲが多面的で、ポジティブな意味でより複雑であることを望んでいます。
詳しくはブランドの公式サイトをご覧ください。
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